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COBOLとは?特徴・歴史・現状から年収・将来性まで解説

スキル

最終更新日:2025/05/07

COBOLとは?特徴・歴史・現状から年収・将来性まで解説

この記事では、「COBOLとは何か?」という根源的な問いに対し、プログラミングの歴史に関心のある方から、IT業界の現状を知りたい学生、金融・基幹システムの開発や運用に携わるエンジニア、そしてCOBOL技術者の後継者問題やシステムのモダナイゼーションに関心を寄せるマネージャーまで、幅広い読者の皆様に向けて、その驚異的な長寿命の背景、事務処理言語としてのユニークな特性、そして現代社会における役割と直面する課題、さらには将来展望までを、包括的かつ深く掘り下げて解説していきます。

目次

  • はじめに

  • COBOLとは?

  • COBOLの特徴

  • COBOLを学ぶ/扱うメリット

  • COBOLの学習・利用における留意点:デメリットと課題

  • COBOLはどこで使われているか?

  • COBOLと他の主要言語との比較

  • COBOLエンジニアのキャリア:年収と将来性

  • まとめ

はじめに

コンピュータがまだ部屋全体を埋め尽くすほど巨大で、プログラミングが一部の専門家の特権だった時代。

ビジネスの世界では、増大する事務処理の効率化が喫緊の課題となっていました。

そのような時代背景の中で、特定のコンピュータメーカーに依存せず、事務処理に特化した共通の言語を求める声が高まり、一つのプログラミング言語が産声を上げました。

それが「COBOL(コボル)」です。1959年の誕生以来、半世紀以上もの長きにわたり、世界の金融機関、保険会社、官公庁、そして多くの企業の基幹システムを静かに、しかし確実に支え続けてきました。

「COBOL」と聞くと、多くの方は「古い言語」「レガシーシステム」「メインフレーム」といったキーワードを思い浮かべるかもしれません。

確かに、その歴史の長さは他の多くの言語を圧倒し、現代の華やかな技術トレンドとは一線を画す存在に見えるかもしれません。

しかし、その一方で、COBOLで書かれたプログラムは今なお世界の経済活動の根幹を担い、数十億行とも言われる膨大なコード資産が日々稼働し続けているという厳然たる事実があります。

この「古さ」と「現役性」という二面性こそが、COBOLを理解する上で非常に興味深い点です。

本記事を読むことで、あなたはCOBOLという言語の全体像とその歴史的文脈を理解し、なぜそれが「古くて新しい」問題として時に注目を集めるのか、その理由を知ることができるでしょう。

プログラミング初心者の方にとっては、コンピュータがビジネスにどのように貢献してきたかの歴史の一端に触れる良い機会となるかもしれません。

経験豊富なエンジニアにとっては、COBOLが持つ特定の強みや、レガシーシステムが抱える課題とモダナイゼーションの必要性について、新たな視点を得られるはずです。

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COBOLとは?

まず、COBOLというプログラミング言語がどのような経緯で生まれ、どのような基本的な特性を持っているのか、そのプロフィールから見ていきましょう。

COBOLを理解する上で、その名称の由来や設計の背景を知ることは非常に重要です。

COBOLの定義と位置づけ

COBOLを簡潔に定義するならば、「1959年に、主に事務処理を目的として開発された、手続き型のコンパイル型プログラミング言語であり、英語に近い構文による高い可読性と、特定のコンピュータメーカーに依存しない共通言語となることを目指した」と言えるでしょう。

それぞれの要素を少し詳しく見てみます。

1959年に開発された言語

1959年に開発された」という点は、COBOLの驚異的な長寿命を物語っています。

コンピュータの歴史そのものとほぼ同じくらいの期間、COBOLは使われ続けてきました。

これは、他の多くのプログラミング言語と比較しても際立っています。

事務処理を目的とする

主に事務処理を目的とする」ことは、COBOLの設計思想の根幹です。

科学技術計算を主目的としたFORTRANなどとは対照的に、COBOLは企業の経理、給与計算、在庫管理、顧客管理といった、大量のデータを扱い、定型的な処理を行い、帳票を出力するといった、ビジネスの世界の要求に応えるために特化して設計されました。

手続き型

手続き型」とは、プログラムを一連の手続きの集まりとして記述するプログラミングスタイルです。

COBOLプログラムは、大きく分けて4つの「部(DIVISION)」から構成され、その中の「手続き部(PROCEDURE DIVISION)」に具体的な処理ロジックが記述されます。

コンパイル型

コンパイル型」であることは、COBOLのソースコードが実行前に機械語に翻訳されることを意味します。

英語に近い構文

英語に近い構文による高い可読性」は、COBOLの大きな特徴の一つです。

プログラマだけでなく、システムを利用するビジネス部門の人々にもプログラムの内容がある程度理解できるように、命令文が英語の文章に似た形で記述されます。

特定のコンピュータメーカーに依存しない

そして、「特定のコンピュータメーカーに依存しない共通言語となること」は、COBOLが開発された当初の非常に重要な目標でした。

COBOLという名称は、COmmon Business-Oriented Language(共通事務処理用言語)の頭字語です。

1950年代後半、コンピュータはまだ非常に高価で、メーカーごとに異なるプログラミング言語が使われている状況でした。

企業があるメーカーのコンピュータを導入すると、そのメーカーの言語で書かれたプログラムはそのコンピュータでしか動かず、他のメーカーのコンピュータに乗り換える際にはプログラムを全て書き直さなければならないという、大きな非効率が生じていました。

この「ベンダーロックイン」の問題を解決し、プログラムの移植性を高めるために、アメリカ国防総省の主導のもと、複数のコンピュータメーカーや学術機関が協力して、共通の事務処理用言語を開発するための委員会「CODASYL(Conference on Data Systems Languages)」が組織されました。

COBOLは、このCODASYLの活動から生まれたのです。

この開発において、初期のコンパイラのアイデアを提唱し、「COBOLの母」とも称されるグレース・ホッパー氏の貢献は特筆すべきものです。

彼女は、プログラミング言語がより人間にとって理解しやすいものであるべきだと強く主張し、COBOLの自然言語に近い構文の実現に大きな影響を与えました。


このように、COBOLは、ビジネスの現場のニーズと、プログラムの標準化・移植性への強い要求から生まれた、極めて実用的な目的を持った言語なのです。

COBOLの設計思想と目標

COBOLが半世紀以上にわたって使われ続けてきた背景には、その設計当初に掲げられた明確な思想と目標がありました。

それらは、当時のコンピュータ利用の状況と、ビジネスアプリケーション開発の課題を色濃く反映しています。

可読性

COBOLの設計者たちが最も重視した目標の一つが、プログラムの可読性です。

プログラムは書く時間よりも読まれる時間の方が長い、という考えに基づき、コードが自己文書化、つまりコード自体がその処理内容を説明するようなものであるべきだと考えられました。

そのため、COBOLの構文は意図的に英語の自然言語に似せて作られ、変数名も長く説明的なものが推奨されました。

これにより、プログラマでない事務担当者や経営者でも、ある程度プログラムのロジックを理解できることを目指しました。

この可読性への配慮は、プログラムの保守性にも繋がると考えられました。

移植性

前述の通り、特定のコンピュータメーカーに依存せず、異なる機種間でも同じCOBOLプログラムが動作するようにすることが、COBOL開発の大きな動機でした。

これを実現するために、言語仕様の標準化が重要視され、ANSIなどによって標準規格が策定・維持されてきました。

保守性

ビジネスアプリケーションは、一度開発されると長期間にわたって利用され、その間に何度も修正や機能追加が行われるのが常です。

COBOLは、プログラムの構造を明確にするための仕組みや、可読性の高い記述スタイルを通じて、この長期的な保守性を高めることを目指しました。

事務処理への特化

COBOLは汎用言語ではなく、明確に事務処理(ビジネスデータ処理)に特化した言語です。

そのため、以下のような事務処理特有の要件に対応するための機能が言語仕様に組み込まれました。

  • 大量データ処理: 企業が扱う顧客データや取引データのような大量のレコードを効率的に処理できること。

  • ファイル操作: 順編成ファイル、索引編成ファイル、相対編成ファイルといった、ビジネスでよく使われる様々なファイル形式を容易に扱えること。

  • 帳票印刷: 複雑なレイアウトを持つ帳票を正確かつ効率的に作成・印刷できること。

  • 十進数計算: 金額計算など、小数点以下の数値を正確に扱い、丸め誤差を避ける必要があるビジネス計算に対応するため、二進数ではなく十進数ベースでの数値表現と演算をサポートすること。

標準化

COBOLが広く普及し、共通言語としての地位を確立するためには、言語仕様が明確に定義され、標準化されることが不可欠でした。

CODASYL委員会やANSI、ISOといった組織によって、COBOLの標準規格が策定・改訂され続けてきました。


これらの設計思想と目標は、COBOLが主にメインフレームコンピュータ上で動作する、金融機関や大企業の基幹システムといった、高い信頼性と安定性、そして長期的な運用が求められる分野で採用され、生き残ってきた大きな理由となっています。

COBOLは、華やかさや最新の技術トレンドを追うのではなく、地道にビジネスの現場を支えるという、実直な役割を担ってきた言語なのです。

COBOLのバージョンと標準化の歴史

COBOLの歴史は、その標準化の歴史と深く結びついています。

特定のベンダーに依存しない共通言語を目指したCOBOLは、その誕生初期から標準規格の策定が重要視されてきました。

初期のCOBOL

1959年にCODASYLによって最初のCOBOL仕様(COBOL-60)が策定され、その後すぐにCOBOL-61COBOL-65といった改訂版が登場しました。

これらの初期バージョンは、基本的な事務処理機能の骨格を形成しました。

ANSI COBOL標準の時代

COBOLの普及と安定化に大きく貢献したのが、ANSIによる標準化です。

  • COBOL-68 (ANSI X3.23-1968): 最初のANSI COBOL標準。これにより、異なるメーカーのCOBOLコンパイラ間での互換性が大幅に向上しました。

  • COBOL-74 (ANSI X3.23-1974): COBOL-68を拡張・改良したバージョン。多くの機能追加が行われ、このCOBOL-74が長らくCOBOLのデファクトスタンダードとして広く使われました。現在でも、多くの既存COBOLシステムがCOBOL-74またはその互換モードで稼働していると言われています。

  • COBOL-85 (ANSI X3.23-1985): 構造化プログラミングをさらに推進するための機能が導入され、ネストしたIF文の可読性向上などが図られました。これも広く普及した重要なバージョンです。

オブジェクト指向COBOLとそれ以降

20世紀末から21世紀初頭にかけて、オブジェクト指向プログラミングが主流となる中で、COBOLもその流れに対応しようとしました。

  • COBOL 2002 (ISO/IEC 1989:2002): オブジェクト指向機能が本格的に導入されました。また、XMLの生成・解析機能や、ユーザー定義関数スクリーンセクションの強化なども行われました。しかし、オブジェクト指向COBOLは、既存の膨大な手続き型COBOL資産との兼ね合いや、COBOL技術者のスキルセットの変化の難しさなどから、広く普及するには至りませんでした。

  • COBOL 2014 (ISO/IEC 1989:2014): COBOL 2002をさらに改良し、浮動小数点数データ型のサポート強化、テーブルソート機能の改善、一部機能の廃止予定宣言などが行われました。

  • 最新のCOBOL標準 (COBOL 2023など): 現在もISO/IECのワーキンググループ(WG4)によってCOBOL標準の改訂作業は続けられています。COBOL 2023では、JSONサポートのさらなる強化、UTF-8サポートの改善、並列処理機能の検討などが進められています。


このように、COBOLは決して開発が止まった言語ではなく、時代の要求に合わせて標準規格が更新され、機能強化が図られています。

ただし、重要なのは、実際の企業のシステムで使われているCOBOLコンパイラが、これらの最新標準にどの程度追随しているかはベンダーや環境によって異なるという点です。

多くの場合、互換性を重視して古い標準(COBOL-85など)をベースとした機能拡張が行われているのが実情です。

この長い標準化の歴史と、ベンダー間の互換性への努力が、COBOLプログラムの移植性と持続可能性を支えてきたと言えるでしょう。

COBOLの特徴

COBOLが半世紀以上もの間、特にビジネスアプリケーションの領域で使われ続けてきたのには、その設計思想を反映したいくつかのユニークで強力な特徴があるからです。

ここでは、COBOLをCOBOLたらしめている核心的な特徴について、詳しく見ていきましょう。

英語に近い構文と高い可読性

COBOLの最も際立った特徴の一つは、その構文が英語に非常に近い形で設計されていることです。

これは、プログラマでないビジネス部門の担当者やマネージャーでも、プログラムの処理内容をある程度理解できるようにし、プログラム自体が仕様書の一部となるような自己文書化を目指した結果です。

COBOLのプログラムは、大きく分けて4つのDIVISIONから構成されます。

  1. IDENTIFICATION DIVISION(見出し部): プログラム名、作成者、作成日といったプログラム自身に関する情報を記述します。

  2. ENVIRONMENT DIVISION(環境部): プログラムが動作するコンピュータ環境に関する情報を記述します。

  3. DATA DIVISION(データ部): プログラムが扱うデータの構造や型、桁数などを詳細に定義します。

  4. PROCEDURE DIVISION(手続き部): 実際の処理ロジックを記述する部分です。

この厳格な構造は、プログラム全体の構成を明確にし、どこに何が書かれているかを把握しやすくします。

特にPROCEDURE DIVISIONでは、命令文が英語の文章に似た形で記述されます。

キーワードが英語の動詞や前置詞に対応しており、一見すると自然言語の指示書のように読めることを目指しています。

変数名も、CUSTOMER-NAMEやSALES-REPORT-TOTALのように、ハイフンで区切られた説明的な長い名前を付けることが推奨されます。

この構文スタイルは、確かに冗長ではありますが、その反面、コードの意図が明確になりやすいという利点があります。

特に、複雑なビジネスルールや計算ロジックを記述する際には、この冗長性がかえって処理内容の正確な理解を助ける場合もあります。

ただし、この「非プログラマにも読みやすい」という理想は、必ずしも常に達成されるわけではありません。

特にプログラムが大規模化し、ロジックが複雑に絡み合ってくると、やはり専門的な知識なしに完全に理解するのは困難です。

また、書き方によっては、自然言語風の構文が逆にコードの流れを追いづらくすることもあります。

とはいえ、規律正しく、適切な命名規則とコメントを伴って書かれたCOBOLプログラムは、他の多くのプログラミング言語と比較して、処理の概要を掴みやすいという特徴を持っていることは確かです。これが、長期的な保守性の一助となってきた側面もあります。

事務処理に特化した機能

COBOLは、その誕生の目的が「事務処理(ビジネスアプリケーション)」であったため、この分野特有の要求に応えるための機能が言語仕様に豊富に組み込まれています。

強力なファイル処理能力

企業における事務処理の多くは、大量のデータをファイルとして管理し、それを読み書き、更新することです。

COBOLは、これらのファイル操作を効率的に行うための強力な機能を備えています。

  • 順ファイル (Sequential File): レコードが先頭から順番に格納され、順番に読み書きされる最も基本的なファイル形式。

  • 索引ファイル (Indexed File): 各レコードに一意なキーがあり、そのキーを使って特定のレコードを直接読み書きできるファイル形式。大量データの中から特定の情報を高速に検索・更新するのに適しています。

  • 相対ファイル (Relative File): レコードが固定長の領域に格納され、レコード番号を使って直接アクセスできるファイル形式。


これらのファイル編成に対して、OPEN, CLOSE, READ, WRITE, REWRITE, DELETEといった専用の命令文を使って、レコード単位でのデータ操作を直感的に記述できます。

ENVIRONMENT DIVISIONでファイルと物理デバイスを関連付け、DATA DIVISIONでファイルのレコード構造を詳細に定義します。

帳票作成機能

事務処理の重要な成果物の一つが、様々な形式の帳票(レポート)です。

請求書、納品書、売上集計表、在庫一覧表など、定型的なレイアウトでデータを出力する必要があります。

COBOLには、この帳票作成を支援するためのReport Writerという機能が用意されています。

Report Writerを使うと、帳票のページヘッダー、ページフッター、明細行、合計行といった各部分のレイアウトや、改ページ処理、集計処理などを、PROCEDURE DIVISIONのロジックとはある程度分離して、DATA DIVISIONのREPORT SECTIONで宣言的に定義できます。

これにより、複雑な帳票作成ロジックの記述を簡素化し、保守性を高めることができます。

十進数計算の精度

金融機関や企業の経理部門などでは、金額計算において1セントたりとも誤差があってはなりません

多くのプログラミング言語が標準で採用している二進数浮動小数点数は、一部の十進数を正確に表現できず、計算の過程で丸め誤差が生じる可能性があります。

これは、金額計算においては致命的な問題となり得ます。


COBOLは、この問題を解決するために、十進数ベースでの数値表現と演算を強力にサポートしています。

DATA DIVISIONでデータ項目を定義する際に、PICTURE句で数字や符号、暗黙の小数点位置を指定することで、固定小数点数を正確に表現できます。

また、パック十進数(Packed Decimal)ゾーン十進数(Zoned Decimal)といった、メインフレームで効率的に十進数計算を行うための内部データ形式もサポートしています。

これにより、COBOLは金融計算のような高い精度が求められる事務処理において、非常に信頼性の高い計算結果を提供します。

データ構造定義

COBOLのDATA DIVISIONは、プログラムが扱う全てのデータを非常に詳細かつ厳格に定義する場所です。

  • PICTURE句 (またはPIC句): データ項目の型、桁数、符号の有無、小数点位置、編集形式を、PIC S9(5)V99(符号付き整数5桁、小数2桁)のような記号的な文字列で記述します。これにより、データの内部表現と外部表示を明確に区別し、制御できます。

  • レベル番号: データ項目を階層構造で定義するために使います。01レベルがレコード全体を表し、その下に02, 03...とレベル番号を下げていくことで、レコード内のフィールドやグループ項目を構造的に表現します。

  • COPY句: 外部ファイルに定義されたデータ構造を、現在のプログラムにコピーして取り込むための機能です。これにより、複数のプログラム間で共通のデータ定義を再利用でき、一貫性を保ち、保守性を向上させます。


これらの事務処理に特化した機能群が、COBOLを単なる汎用言語ではなく、ビジネスアプリケーション開発のための専門ツールとしての地位を確立させてきたのです。

手続き型プログラミング

COBOLの基本的なプログラミングスタイルは、手続き型プログラミングです。

これは、プログラムを、実行されるべき一連の手続き(処理の順序)の集まりとして捉え、それらを順次、あるいは条件分岐や繰り返しによって制御していく考え方です。

COBOLプログラムの実際の処理ロジックは、主PROCEDURE DIVISION(手続き部)に記述されます。

PROCEDURE DIVISIONは、セクション(SECTION)やパラグラフ(PARAGRAPH)といった単位に分割することができ、それぞれが特定の処理のまとまりを表します。

プログラムの実行は、PROCEDURE DIVISIONの先頭から始まり、記述された命令文が上から下へと順番に実行されていきます。

制御構造

COBOLには、手続きの流れを制御するための基本的な構文が用意されています。

サブルーチン呼び出し

CALL文を使って、外部のCOBOLプログラムを呼び出し、処理を委譲することができます。

これにより、プログラムをモジュール化し、再利用性を高めることができます。

GOTO文

かつてのCOBOLプログラムでは、処理の流れを特定のパラグラフに強制的にジャンプさせるGOTO文が多用されることがありました。

しかし、GOTO文の乱用はプログラムの制御フローを非常に複雑にし、いわゆる「スパゲッティコード」を生み出す原因となるため、現代的なプログラミングではその使用は推奨されません。

COBOL-85標準以降で構造化プログラミングを支援する構文が強化されたことにより、GOTO文の必要性は大幅に減少しました。


COBOLは、この手続き型プログラミングモデルを基本としつつ、後述するオブジェクト指向の機能も取り入れています。

しかし、その本質は、ビジネスロジックを明確な手続きの連続として記述することにあると言えるでしょう。

安定性と信頼性

COBOLが長年にわたり、特に金融機関や官公庁といったミッションクリティカルなシステムで使われ続けてきた最大の理由の一つが、その高い安定性と信頼性です。

枯れた技術としての安定感

COBOLは非常に長い歴史を持つ言語であり、その言語仕様やコンパイラ、実行環境は、長年にわたる多くの実運用と改善を経て、非常に成熟し、安定しています。

新しい言語に見られるような未知のバグや仕様変更のリスクが少なく、予測可能な動作が期待できます。

厳格なデータ定義

DATA DIVISIONにおける詳細かつ厳格なデータ項目定義は、データの型や桁数、形式に関する曖昧さを排除し、データ処理の誤りを未然に防ぐのに役立ちます。

十進数計算の精度

金融計算など、誤差が許されない処理において、COBOLの十進数計算は高い信頼性を提供します。

メインフレーム環境との親和性

COBOLプログラムの多くが稼働するメインフレームコンピュータは、元々、高い信頼性、可用性、セキュリティを要求される大規模トランザクション処理のために設計されたプラットフォームです。

COBOLは、この堅牢なメインフレーム環境と密接に連携し、その能力を最大限に引き出すように最適化されてきました。

テストと検証の文化

ミッションクリティカルなCOBOLシステムは、開発プロセスにおいて非常に厳格なテストと検証が行われるのが一般的です。

長年の運用で培われたテストノウハウや、業務への影響を最小限に抑えるための慎重な変更管理プロセスも、システムの信頼性を高める要因となっています。


もちろん、COBOLで書かれたプログラムにもバグは存在し得ますし、システムの信頼性は言語だけでなく、設計、開発プロセス、運用体制など多くの要素に依存します。

しかし、COBOLという言語自体が持つ特性と、それが主に使われてきた環境や文化が、結果として高い安定性と信頼性を実現してきたと言えるでしょう。

この「止まらないシステム」への信頼感が、COBOLが今なお基幹業務を支え続ける理由なのです。

オブジェクト指向COBOLへの進化

伝統的に手続き型言語であったCOBOLも、1990年代後半からのオブジェクト指向プログラミング(OOP)の隆盛を受けて、その流れに対応しようとしました。

COBOL 2002標準において、オブジェクト指向機能が本格的に導入されました。

オブジェクト指向COBOLでは、以下のようなOOPの基本的な概念がサポートされています。

  • クラス (CLASS-ID): オブジェクトの設計図を定義します。

  • オブジェクト (OBJECT): クラスのインスタンス。

  • メソッド (METHOD-ID): オブジェクトの振る舞いを定義します。

  • 継承 (INHERITS): 既存のクラスの特性を引き継いで新しいクラスを作成します。

  • インターフェース (INTERFACE-ID): クラスが実装すべきメソッドのシグネチャを定義します。

  • ポリモーフィズム: オブジェクトの種類によって同じメソッド呼び出しが異なる振る舞いをすることを可能にします。

これらの機能により、COBOLでも再利用性の高いモジュールを作成したり、より構造化された設計を行ったりすることが、理論上は可能になりました。

しかし、実際には、オブジェクト指向COBOLが広く普及しているとは言えません。その理由としては、以下のような点が考えられます。

既存の膨大な手続き型COBOL資産

既に手続き型で書かれた膨大なCOBOLプログラムが存在し、それらをオブジェクト指向に書き換えるコストとメリットが見合わないことが多い。

COBOL技術者のスキルセット

長年手続き型COBOLに慣れ親しんできた技術者にとって、オブジェクト指向の概念を習得し、適切に適用するのは容易ではない。

COBOLの得意分野とのミスマッチ

COBOLが主に使われるのはバッチ処理や定型的な事務処理であり、これらの分野では必ずしもオブジェクト指向の利点が最大限に活かせるわけではない。

他のOOP言語の存在

オブジェクト指向で新規開発を行うのであれば、JavaやC#といった、よりOOPに適した言語を選択する方が合理的である場合が多い。

オブジェクト指向COBOLは、主に既存のCOBOL資産を活かしつつ、部分的に新しい技術と組み合わせるためのインターフェースとして利用されたり、段階的なシステムモダナイゼーションの一環として限定的に採用されたりするケースに留まっているのが実情です。

COBOLの主流は依然として手続き型であり、オブジェクト指向機能はその補完的な位置づけと言えるでしょう。

実行環境とプラットフォーム

COBOLプログラムが主に動作する環境として伝統的に知られているのは、メインフレームコンピュータです。

IBMのz/OSや、富士通、日立などのメインフレームOS上で、各社が提供するCOBOLコンパイラと実行環境が利用されてきました。

これらの環境は、大規模なトランザクション処理、大量のバッチ処理、そして高い信頼性と可用性が求められる基幹システムを稼働させるために最適化されています。

COBOLは、このメインフレームエコシステムと密接に結びついて発展してきました。

しかし、COBOLはメインフレーム専用の言語というわけではありません。

オープン系プラットフォーム、すなわちWindows, Linux, UNIXといったOS上でも動作するCOBOL処理系が存在します。

商用COBOLコンパイラ

Micro Focus COBOLは、オープン系プラットフォームで最も広く使われている商用COBOL開発・実行環境の一つです。

メインフレームCOBOLとの高い互換性を持ち、既存のCOBOL資産をオープン環境へ移行する際によく利用されます。

Visual StudioなどのモダンなIDEとの連携機能も提供しています。

他にも、富士通や日立などが自社のメインフレームCOBOLと互換性のあるオープン系COBOL製品を提供しています。

オープンソースCOBOL

GnuCOBOLは、無料で利用できるオープンソースのCOBOLコンパイラです。

多くのCOBOL標準に準拠しており、LinuxやWindowsなど様々なプラットフォームで動作します。

教育目的や、小規模なCOBOL開発、あるいはメインフレームからの移行の選択肢として利用されることがあります。


これらのオープン系COBOL処理系の存在により、メインフレームを持たない企業でもCOBOLプログラムを開発・実行したり、メインフレーム上のCOBOLアプリケーションをよりコスト効率の高いオープン環境へ移行したりすることが可能になっています。

ただし、メインフレーム上で稼働するCOBOLシステムが持つトランザクション処理能力やI/O性能、運用ノウハウなどを、オープン環境で完全に再現するのは容易ではない場合もあります。

COBOLの実行環境は、その歴史的背景からメインフレームが中心ですが、現代においてはオープン系プラットフォームという選択肢も存在し、それぞれの環境でCOBOLはその役割を果たし続けています。

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COBOLを学ぶ/扱うメリット

COBOLは「古い言語」というイメージが先行しがちですが、それでもなお、特定の状況においてはCOBOLを学ぶこと、あるいはCOBOLのスキルを持つことには明確なメリットが存在します。

その理由は、COBOLが単なる過去の遺物ではなく、今なお世界の経済活動の根幹を支える重要な役割を担っているからです。

圧倒的な既存システムとコード資産

これが、COBOLが今なお存在し続け、COBOLスキルが求められる最大の理由です。

世界の金融機関、官公庁、大手製造業、流通業といった、社会の基盤を支える多くの組織の基幹システムは、数十年にわたってCOBOLで開発・運用されてきました。


一説には、現在稼働中のCOBOLプログラムは2000億行を超えるとも言われ、日々のトランザクション処理の多くが、これらのCOBOLシステムによって実行されています。

これらのシステムは、まさに社会インフラの一部となっており、簡単に停止したり、他の言語に置き換えたりすることはできません。

この圧倒的な量の既存コード資産が存在する限り、それを理解し、保守し、運用できる人材は不可欠です。

ミッションクリティカルな領域での高い信頼性と安定性

COBOLが長年にわたり、これらのミッションクリティカルなシステムで採用され続けてきたのは、その高い信頼性と安定性に対する実績があるからです。

COBOL言語自体が持つ堅牢なデータ定義や正確な数値計算能力に加え、COBOLシステムが主に稼働するメインフレーム環境の高い信頼性、そして長年の運用で培われた厳格な開発・テスト・運用プロセスが、システムの安定稼働を支えてきました。


新しい技術には常に未知のリスクが伴いますが、COBOLは「枯れた技術」としての安定感があり、バグが少なく、予測可能な動作をすることが期待されます。

1円の誤差も許されない金融取引や、国民生活に直結する行政サービスを扱うシステムにおいて、この信頼性は非常に重要な価値を持つのです。

保守・運用における根強い需要

前述の膨大な既存COBOLシステムが存在する限り、それらを維持・保守・改修できるCOBOLエンジニアに対する需要は、今後も根強く存在し続けます

新しい機能の追加、法改正への対応、OSやミドルウェアのバージョンアップに伴う修正など、既存システムに対する作業は絶えません。

特に問題となっているのが、COBOL技術者の高齢化と後継者不足です。

かつてCOBOLを主力としていた世代のエンジニアが次々と引退時期を迎える一方で、若い世代で新たにCOBOLを学ぶ人は限られています。

この需給ギャップにより、経験豊富で信頼できるCOBOLスキルを持つ人材の希少価値は、むしろ高まっていると言えます。

特定の業界やシステムに精通したCOBOLエンジニアは、引く手あまたとなる可能性すらあります。

事務処理・バッチ処理における効率性

COBOLは元来、事務処理、特に大量のデータを一括して処理するバッチ処理に最適化された言語です。

夜間に大量の取引データを集計したり、月末に請求書を一括発行したりといった、定型的な大量データ処理においては、COBOLが持つファイル処理能力やレコード単位の操作、帳票作成機能などが依然として効率的な場合があります。

他の汎用言語で同じ処理を実装しようとすると、かえって複雑になったり、パフォーマンスが出なかったりするケースも考えられます。

特定の種類の事務処理タスクにおいては、COBOLが持つ専門性が今なお有効なのです。

十進数計算の正確性

金融計算や会計処理など、金額を扱う業務においては、計算の正確性が絶対的に要求されます。

多くのプログラミング言語が採用する二進数浮動小数点数は、一部の十進数を正確に表現できず、計算過程で丸め誤差が生じる可能性があります。

COBOLは、十進数ベースでの数値表現と演算をネイティブにサポートしており、PICTURE句による厳密な桁数管理と合わせて、誤差のない正確な金額計算を保証します。

この特性は、金融機関などのシステムにおいてCOBOLが信頼され続ける大きな理由の一つです。

可読性と保守性

COBOLの自然言語に近い構文は、適切に書かれ、かつ業務ロジックが素直に表現されていれば、他の言語よりもプログラムの処理内容が比較的追いやすいとされることがあります。

特に、その業務に詳しい担当者がプログラムの仕様を確認したり、長期間経過した後に別の担当者が保守作業を行ったりする際に、この「読みやすさ」が助けになる場合があります。

もちろん、書き方によっては非常に難解になることもありますが、COBOLの設計思想には、長期的な保守性への配慮が含まれています。

モダナイゼーションの機会

多くの企業にとって、既存のCOBOL資産は貴重なビジネスロジックの塊ですが、同時に古い技術に縛られることによる制約も抱えています。

そのため、これらのCOBOL資産を活かしつつ、新しい技術と組み合わせる「モダナイゼーション」の取り組みが活発化しています。


このようなプロジェクトにおいては、COBOLシステムを深く理解し、かつ新しい技術にも通じたエンジニアが重要な役割を果たします。

COBOLスキルを持つエンジニアが、モダナイゼーションを通じて新しい技術を学び、キャリアの幅を広げるチャンスとも言えます。

これらのメリットは、COBOLがもはや新規開発の主流ではないという現実を踏まえた上でも、依然として特定の状況下でCOBOLスキルが価値を持つことを示しています。

それは、過去の遺産を守り、社会の基盤を支え、そして未来へと繋ぐという、重要な役割を担っているのです。

COBOLの学習・利用における留意点:デメリットと課題

COBOLが長年にわたり重要なシステムを支えてきた一方で、現代のソフトウェア開発の視点から見ると、いくつかの明確なデメリットや課題も抱えています。

COBOLの学習や利用、あるいはCOBOLで書かれたシステムとの関わりを考える際には、これらの点を冷静に評価することが不可欠です。

「古い言語」というイメージと新規開発での採用減

COBOLに対する最も一般的な認識は、それが「古い言語」であるというものです。

実際、その基本的な設計思想や構文は1960年代に確立されたものであり、現代のプログラミング言語のトレンドとは大きくかけ離れています。

言語仕様の古さ

COBOLの構文は冗長であり、現代のプログラマから見ると非効率的で記述量が多く感じられることが多いです。

データ定義の厳格さやDIVISION構造の固定性も、柔軟な開発を妨げる要因となることがあります。

現代的パラダイムとの乖離

オブジェクト指向機能は後付けで導入されましたが限定的であり、関数型プログラミングのような現代的なパラダイムを自然にサポートするようには設計されていません。

新規開発での採用は稀

これらの理由から、新しいシステムをゼロから開発する際に、COBOLが第一の選択肢となることは、現在では極めて稀です。

ほとんどの場合、Java, C#, Python, Goといった、よりモダンで生産性が高く、エコシステムが充実している言語が採用されます。

COBOLの新規開発案件は、既存システムの大規模改修や、ごく一部の特殊なケースに限られるのが実情です。


この「古い」というイメージは、若い世代の開発者がCOBOLを学ぶインセンティブを低下させ、結果として後継者不足を深刻化させる一因ともなっています。

COBOL技術者の高齢化と後継者不足

COBOLが直面している最も深刻な課題の一つが、COBOLを扱える技術者の高齢化と、その後継者不足です。

COBOLが全盛期だった時代に活躍したエンジニアの多くが、現在、定年退職の時期を迎えています。

一方で、前述の通り、若い世代のエンジニアが新たにCOBOLを学ぶ動機は薄く、専門の教育機関も減少しています。


これにより、既存の膨大なCOBOLシステムを維持・保守していくための人材が不足するという問題が、多くの企業や官公庁で顕在化しつつあります。

スキルを持つエンジニアの数は減っていくのに、COBOLで書かれたシステムは依然として稼働し続けなければならない、というジレンマが生じているのです。

これは、社会インフラの安定運用にとって大きなリスクとなり得ます。

学習リソースやコミュニティの限定性

他の人気プログラミング言語と比較すると、COBOLに関する最新の学習リソースや、活発なオンラインコミュニティは限定的です。

書籍やウェブサイトでCOBOLに関する情報を見つけることはできますが、その多くは内容が古かったり、特定のメインフレーム環境に特化していたりする場合があります。

初心者が体系的に学べるような、現代的な教材は不足しがちです。


また、Stack OverflowのようなQ&Aサイトや、GitHubのようなオープソースプラットフォームでのCOBOL関連の活動は、JavaやPython、JavaScriptなどと比較すると格段に少ないです。

疑問点を気軽に質問したり、最新の知見を共有したりする場が限られていることは、学習や問題解決のハードルを上げる要因となります。

現代的な開発ツールや手法との親和性の低さ

COBOLの開発は、伝統的にメインフレーム上の専用環境で行われることが多く、現代的な開発ツールや開発手法との親和性が低いという課題があります。

バージョン管理

Gitのような分散バージョン管理システムは、COBOL開発の現場ではまだ十分に普及していない場合があります。

ソースコードが古いライブラリ管理システムで管理されていたり、あるいはバージョン管理自体が行われていなかったりするケースも散見されます。

CI/CD

自動テスト、自動ビルド、自動デプロイといったCI/CDパイプラインの構築は、メインフレーム環境では他のプラットフォームほど容易ではない場合があります。

モダンなIDE

Micro Focus COBOLなどがVisual Studioとの連携を提供しているものの、多くのCOBOL開発は依然としてISPFのようなテキストベースのエディタで行われていることがあります。

これは、現代のIDEが提供する高度なコード補完やリファクタリング機能の恩恵を受けにくいことを意味します。

アジャイル開発

COBOLシステムの開発・保守は、ウォーターフォール型の開発プロセスが主流であることが多く、アジャイル開発のような反復的で柔軟な手法との相性は必ずしも良くありません。


これらの点は、COBOL開発の生産性や開発者体験を、他のモダンな言語と比較して見劣りさせる要因となっています。

言語仕様の冗長性と柔軟性の欠如

COBOLの自然言語に近い構文は、意図した可読性とは裏腹に、極めて冗長で記述量が多くなる傾向があります。

他の言語であれば数行で書ける処理が、COBOLでは数十行にも及ぶことがあります。これは開発効率を低下させます。


また、厳格なDIVISION構造やデータ定義、手続き的な制御フローは、言語の柔軟性を欠き、新しいプログラミングスタイルやアイデアを取り入れにくい側面があります。

例えば、JSONやXMLといった現代的なデータ形式の扱いは、標準機能だけでは煩雑になりがちで、専用のパーサーライブラリなどが必要になります。

Webやモバイルなど新しい技術分野への適応の難しさ

COBOLは元々、バッチ処理や帳票作成といった、閉じた環境での事務処理を主目的として設計された言語です。

そのため、Web APIの開発、スマートフォンアプリケーション、クラウドネイティブアーキテクチャといった、現代的なアプリケーションの主要分野に直接対応するのは非常に不得意です。


これらの新しい技術とCOBOLシステムを連携させるためには、APIゲートウェイを介したり、他の言語でラッパーを作成したりといった、追加の工夫や開発が必要になります。

これは、COBOLシステムを現代のIT環境に統合していく上での大きな障壁となります。

モダナイゼーションの難易度とコスト

多くの企業が既存のCOBOL資産のモダナイゼーションを課題として認識していますが、これは非常に難易度が高く、コストも莫大になるプロジェクトです。


対象となるCOBOLプログラムは、数十年にわたって改修が繰り返され、ドキュメントも不足し、ビジネスロジックが複雑に絡み合っている「ブラックボックス」と化していることが少なくありません。

これを他の言語に単純にリライトするのは現実的ではない場合が多く、リホスト、リプラットフォーム、リファクタリング、あるいは段階的な機能切り出しといった、様々なアプローチを慎重に検討し、長期的な計画で進める必要があります。

このモダナイゼーションの困難さが、COBOLシステムが生き残り続ける一因ともなっています。


これらのデメリットと課題は、COBOLが現代において直面している厳しい現実を示しています。

しかし、同時に、これらの課題を解決するための努力や、COBOLが持つ本質的な価値を見直す動きも存在します。

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COBOLはどこで使われているか?

COBOLは、その誕生から半世紀以上が経過した現在でも、驚くべきことに、世界の経済活動や社会インフラの根幹を支える多くのシステムで現役として稼働し続けています。

その活躍の場は、COBOLが持つ事務処理への特化性、高い信頼性、そして大量データ処理能力といった特性を最も必要とする分野に集中しています。

金融機関

COBOLが最も大規模かつクリティカルな役割を担っているのが、金融機関のシステムです。

銀行における勘定系システム、証券会社の取引システム、保険会社の契約管理システムや保険金支払いシステム、年金システムなど、まさに社会の金融インフラそのものと言えるシステムの中核部分で、今なお膨大なCOBOLプログラムが日夜稼働しています。

これらのシステムにCOBOLが使われ続ける理由は明確です。

大量トランザクション処理能力

金融機関では、日々膨大な数の取引データが発生し、それを迅速かつ正確に処理する必要があります。

COBOLは、メインフレームという高性能なプラットフォームと組み合わせることで、この要求に応えてきました。

データの整合性と信頼性

金融システムにおいて、データの不整合や処理の誤りは許されません。

COBOLの厳格なデータ定義や、メインフレームの堅牢なトランザクション管理機能が、高い信頼性を保証します。

十進数計算の精度

金利計算や残高計算など、1円単位での正確な金額計算が不可欠です。

COBOLの十進数演算機能は、二進数浮動小数点数による丸め誤差の問題を回避し、絶対的な計算精度を提供します。

長年の運用実績と安定性

数十年にわたる運用実績があり、その間に改良が重ねられてきたCOBOLシステムは、非常に安定しており、障害発生率も低いとされています。

ミッションクリティカルな業務を安心して任せられる信頼感があります。

既存資産の巨大さ

あまりにも巨大で複雑な金融システムを、他の言語で完全に再構築するのは、技術的にもコスト的にもリスクが非常に高く、現実的ではないと判断されることが多いです。


これらの理由から、金融機関の基幹システムにおいて、COBOLは今後も当面の間、重要な役割を果たし続けると考えられます。

官公庁・地方自治体

金融機関と並んで、COBOLが広く利用されているのが、国や地方自治体の行政システムです。

税務システム、社会保険システム、住民情報システム、戸籍システムといった、国民生活に不可欠な大規模システムが、COBOLで構築・運用されています。

これらのシステムに求められるのは、

データの正確性と法的整合性

税金や社会保障給付の計算は、法律に基づいて正確に行われなければなりません。

長期的な安定運用

行政サービスは継続性が求められ、システムは長期間にわたって安定して稼働する必要があります。

既存システムとの連携とデータの継続性

過去からの膨大なデータを引き継ぎ、関連する他の行政システムと連携する必要があります。

セキュリティ

国民の個人情報など機密性の高いデータを扱うため、高いセキュリティが求められます。


COBOLは、これらの要件を満たす言語として、長年にわたり採用されてきました。

特に、法改正などに伴う頻繁なシステム変更にも、比較的対応しやすいという側面も評価されてきたと言われています。

製造業・流通業

大手製造業や流通業においても、企業の基幹業務を支えるシステムでCOBOLが利用されています。

例えば、生産管理システム販売管理システム物流システムといった領域です。

これらのシステムでは、以下のようなことが非常に重要です。

大規模なバッチ処理

部品表の展開、生産計画の策定、月末の売上集計など、大量のデータを一括して処理するバッチ処理が頻繁に行われます。

COBOLのファイル処理能力やデータ処理効率は、これらのバッチ処理に適しています。

複雑な業務ロジックの実装

長年にわたる企業の業務ノウハウが凝縮された、複雑なビジネスルールや計算ロジックがCOBOLプログラムとして実装されています。

他のシステムとの連携

工場の制御システム(MES)や、サプライチェーン上の他の企業システムとのデータ連携などが必要となる場合があります。


これらの基幹システムも、一度構築されると長期間利用されることが多く、COBOLで書かれた資産が蓄積されています。

その他大規模企業の基幹システム

上記以外にも、様々な業種の大規模企業の基幹業務システムの一部、特に会計システム人事給与システムといったバックオフィス業務を支えるシステムで、COBOLが利用されているケースがあります。

これらのシステムも、データの正確性、処理の信頼性、そして長期的な安定運用が求められるという点で共通しています。

共通する特徴

COBOLが現在も利用され続けているこれらの分野に共通する特徴をまとめると、以下のようになります。

主にメインフレーム環境での運用

IBMのz/OSや、富士通、日立などのメインフレーム上で稼働しているシステムが多いです。

これらのプラットフォームは、元々COBOLとの親和性が高く、大量トランザクション処理やバッチ処理に最適化されています。

バッチ処理が中心

夜間や月末月初に大量のデータを一括処理するバッチジョブが、システムの重要な部分を占めていることが多いです。

データの正確性と一貫性が最優先

1件のデータエラーや計算ミスも許されない、極めて高い信頼性が要求されます。

数十年にわたる長期運用が前提

システムは一度導入されると、数十年単位で利用され続けることが多く、その間の保守・改修が繰り返されます。

システム変更のリスクとコストが高い

あまりにも大規模で複雑、かつ社会や企業の根幹に関わるため、システムを安易に停止したり、新しい技術に全面的に置き換えたりすることが非常に困難です。


このように、COBOLは、その堅牢性と事務処理能力を武器に、社会や企業の「縁の下の力持ち」として、目立たないながらも極めて重要な役割を担い続けているのです。

COBOLと他の主要言語との比較

COBOLが持つユニークな特性と、現代におけるその立ち位置をより深く理解するために、他の主要なプログラミング言語と比較してみましょう。

それぞれの言語がどのような設計思想を持ち、どのような分野を得意としているかを知ることで、COBOLの個性と限界がより明確になります。

COBOLとJava/C#の違い

JavaとC#は、エンタープライズシステム開発で広く使われるオブジェクト指向言語であり、COBOLが担ってきた基幹業務システムの一部を置き換える候補としてしばしば比較されます。

用途とパラダイム

JavaとC#は汎用的なオブジェクト指向言語であり、Webアプリケーション、エンタープライズシステム、モバイルアプリ、デスクトップアプリなど、非常に幅広い分野で利用されます。

COBOLは基本的に手続き型言語であり、その用途は事務処理、特にバッチ処理や帳票作成に特化しています。

構文と可読性

Java/C#はC言語ライクな構文を持ち、比較的モダンで構造化されたコードを記述しやすいです。

COBOLは英語に近い構文を目指しましたが、非常に冗長であり、書き方によっては可読性が低下することもあります。

実行環境

JavaはJVM、C#は.NET CLRという仮想マシン/ランタイム環境上で動作し、ガベージコレクションによるメモリ管理やプラットフォーム非依存性を持ちます。

COBOLは主にメインフレーム環境でネイティブコードにコンパイルされて実行されますが、オープン系COBOL処理系も存在します。

パフォーマンス

大量のシーケンシャルなデータ処理や、十進数演算が多用される特定のバッチ処理においては、最適化されたCOBOLプログラムがJava/C#よりも効率的な場合があります。

しかし、汎用的な処理能力、最新のコンパイラ最適化技術、並行処理能力など総合的に見ると、現代のJava/C#の方が有利な場面が多いでしょう。

開発効率とツール

Java/C#は、強力なIDE、豊富な標準ライブラリ、巨大なサードパーティエコシステムに支えられ、一般的にCOBOLよりも高い開発効率を実現します。

COBOLの開発環境は、メインフレームベースの古いものが中心となる場合があります。

使い分け

新規のエンタープライズシステム開発やWebアプリケーション開発では、JavaやC#が圧倒的に主流です。

COBOLは、既存の膨大なCOBOL資産の保守・運用、あるいは極めて高い信頼性と十進数計算精度が求められる特定の金融系バッチ処理などに限定的に利用されます。

COBOLシステムをJava/C#でモダナイズするプロジェクトも多く存在します。

COBOLとPythonの違い

Pythonは、その読みやすさと汎用性から、近年急速に人気を高めているスクリプト言語であり、COBOLとは対照的な特徴を持ちます。

用途とパラダイム

PythonはWeb開発、データサイエンス、AI/機械学習、システム自動化、教育など非常に多岐にわたる分野で利用されるマルチパラダイム言語です。

COBOLは事務処理特化の手続き型言語です。

型付け

Pythonは動的型付け、COBOLは静的型付けです。

構文と学習コスト

Pythonはシンプルで読みやすい構文を持ち、プログラミング初心者にとって学習しやすい言語とされています。

COBOLの構文は冗長で独特であり、学習リソースも限られています。

テキスト処理

Pythonも強力な文字列操作機能と正規表現ライブラリを持ち、テキスト処理は得意ですが、COBOLは言語レベルでの正規表現サポートはありません。

パフォーマンス

Pythonはインタプリタ言語であり、一般的にCOBOLよりも実行速度は遅いです。

ただし、PythonはNumPyなどのC言語で書かれた高速なライブラリを活用できます。

エコシステム

PythonのPyPIは非常に巨大で活発なエコシステムを持ち、あらゆる分野のライブラリが揃っています。

COBOLのCPANのような中央リポジトリは存在しませんが、ベンダー提供のライブラリや自社開発のものが中心です。

使い分け

Web開発、データ分析、AI/ML、一般的なスクリプティングや自動化ではPythonが圧倒的に有利です。

COBOLは、既存の基幹バッチ処理の保守や、メインフレーム環境での特定業務に限定されます。

COBOLとC/C++の違い

C言語およびC++は、システムプログラミングやパフォーマンスが最重要視される分野で使われる言語であり、COBOLとは異なる領域をターゲットとしています。

用途

C/C++はOS、デバイスドライバ、ゲームエンジン、組み込みシステム、高性能計算など、ハードウェアに近い低レベルな制御や最高のパフォーマンスが求められる分野で利用されます。

COBOLはビジネスロジックの実装が中心です。

メモリ管理

C/C++は手動でのメモリ管理が必要であり、メモリ安全性の確保はプログラマの責任です。

COBOLのメモリ管理は、言語仕様としては直接的ではありませんが、実行環境に大きく依存し、一般的にはプログラマが直接メモリを意識することは少ないです。

数値計算

COBOLは事務処理における十進数計算の精度を重視します。

C/C++は二進数演算が基本であり、科学技術計算などで高速な浮動小数点演算を得意とします。

可読性と抽象化

COBOLはビジネスロジックの可読性を目指しますが、低レベルな抽象化は行いません。

C++はオブジェクト指向やジェネリックプログラミングといった高度な抽象化機能を提供しますが、コードは複雑になりがちです。

使い分け

システムプログラミング、パフォーマンスクリティカルな処理、ハードウェア制御ではC/C++。

ビジネスアプリケーションのバッチ処理や帳票作成ではCOBOL。

両者が直接競合する場面はほとんどありません。


これらの比較から、COBOLが持つ事務処理への特化性、特にファイル処理や十進数計算の正確性といった強みと、現代の汎用言語と比較した場合の限界が明らかになります。

COBOLが今なお生き残っているのは、その特定の強みが、置き換えの難しい重要なシステムで必要とされ続けているからなのです。

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COBOLエンジニアのキャリア:年収と将来性

COBOLという非常に長い歴史を持つ言語スキルは、現代のソフトウェア開発市場においてどのような価値を持ち、それを扱うエンジニアはどのようなキャリアを歩み、どの程度の報酬が期待できるのでしょうか?

そして、その将来性はどうなのでしょうか?

ここでは、COBOLエンジニアを取り巻く現実的な状況について考察します。

COBOLエンジニアに求められるスキル

COBOLエンジニアとして、特に既存システムの保守・運用やモダナイゼーションといった分野で活躍するためには、単にCOBOLの文法を知っているだけでは不十分です。

多くの場合、特定の環境や業務に関する深い知識と経験が求められます。

COBOL言語の深い知識

COBOLの様々なバージョンの文法、データ構造、ファイル処理、帳票作成、組み込みSQLなどを深く理解し、既存のコードを正確に読み解き、修正できる能力。

メインフレーム環境の知識・運用経験

これが非常に重要です。

COBOLプログラムの多くが稼働するIBMのz/OSのようなメインフレームオペレーティングシステム、JCL (Job Control Language) を用いたバッチジョブの作成・実行、オンライン処理を制御するCICS (Customer Information Control System)、階層型データベースであるIMS DB、リレーショナルデータベースであるDB2 for z/OSといった、メインフレーム特有のミドルウェアやツールに関する知識と実務経験が必須です。

担当する基幹システムの業務知識

金融、製造、官公庁といった、COBOLが使われているシステムの業務ドメインに関する深い理解が重要です

ビジネスロジックがCOBOLプログラムに凝縮されているため、業務を知らなければコードの意図を正確に把握できません。

ファイル設計、バッチ処理設計、帳票設計のスキル

COBOLが得意とするこれらの分野における設計ノウハウと経験も必要となります。

レガシーコードの読解、デバッグ、保守、改修能力

ドキュメントが不十分であったり、長年の改修で複雑化したりした既存のCOBOLプログラムを粘り強く解析し、問題を特定し、安全に修正・拡張する能力も重要です。

他の言語や技術への理解

既存のCOBOL資産を新しい技術と連携させたり、段階的に置き換えたりするプロジェクトに関わる場合、それらの新しい技術に関する基本的な知識や学習意欲も非常に重要となります。

ドキュメント作成能力

システムの仕様変更や保守作業の内容を正確に記録し、後任者や他の関係者に伝えるためのドキュメント作成能力が求められることも多いです。

コミュニケーション能力

業務部門の担当者や、他のシステム担当者と円滑にコミュニケーションを取り、要件を正確に把握し、問題を解決していく能力ももちろん重要です。


これらのスキルセット、特にメインフレーム技術と業務知識を併せ持つCOBOLエンジニアは、市場において希少価値が高いとされています。

COBOLエンジニアの年収

COBOLエンジニアの年収水準は、一概に高いとも低いとも言えず、その専門性と市場の需給バランスによって大きく変動します。

技術者の高齢化と後継者不足による希少価値

前述の通り、COBOLを扱えるエンジニア、特にメインフレーム環境での豊富な経験を持つシニアエンジニアは、年々その数が減少し、引退が進んでいます。

一方で、COBOLで書かれた基幹システムは依然として社会の重要インフラを担っており、その保守・運用は不可欠です。

この需要に対して供給が細っているため、特定のスキルセットを持つ経験豊富なCOBOLエンジニアは、非常に高い年収を得られる可能性があります。

例えば、金融機関の大規模COBOLシステムに精通し、障害対応や性能改善、法改正対応などをリードできるような人材であれば、年収800万円~1500万円以上といったケースも珍しくありません。

これは、他のモダン言語のトップエンジニアに匹敵する、あるいはそれを上回る水準です。

若手や経験の浅いエンジニアの場合

一方で、COBOLの経験が浅い、あるいはメインフレーム環境の知識が乏しい若手エンジニアの場合、他のモダン言語を扱うエンジニアと同等か、あるいは新規開発案件の少なさからやや低い年収水準となる可能性もあります。

COBOLエンジニアとしてのキャリアをスタートさせる場合、まずはメインフレーム技術や担当業務の知識を深めることが重要になります。

求人の偏在

COBOLエンジニアの求人は、金融、保険、大手製造業といった特定の業界や、メインフレームを運用している企業に集中する傾向があります。

そのため、勤務地や業種によっては、求人自体を見つけるのが難しい場合もあります。


COBOLエンジニアの年収は、そのスキルが現代の市場でどのような価値を持つか、そしてその希少性がどの程度かによって大きく左右されます。

高い専門性を確立できれば、依然として魅力的な報酬を得られる可能性がある分野です。

COBOLの将来性

COBOL言語自体の将来性、そしてCOBOLエンジニアの仕事が今後も存在し続けるのかどうかは、多くの人が関心を持つ点です。

COBOLシステムはすぐにはなくならない

これが最も重要なポイントです。世界中で稼働しているCOBOLプログラムの行数はあまりにも膨大であり、それらが担っている業務は社会や企業の根幹に関わるものです。

これらのシステムを全面的に新しい技術に置き換えることは、技術的な困難さ、莫大なコスト、そしてビジネス継続性のリスクから、ほとんどの企業にとって現実的な選択肢ではありません。

したがって、既存のCOBOLシステムは、今後数十年単位で稼働し続ける可能性が非常に高いです。

保守・運用需要は確実に継続する

これらのシステムが存在し続ける限り、それらを維持し、日々の運用を行い、法改正や業務変更に対応するための保守・改修作業は必ず発生します

つまり、COBOLプログラムを読み書きでき、関連するメインフレーム技術や業務知識を持つエンジニアへの需要は、当面の間、確実に存在し続けます

技術者の高齢化と後継者不足はさらに深刻化する

COBOL技術者の引退が進む一方で、若い世代が新たにCOBOLを学ぶインセンティブは低いため、スキルを持つエンジニアの数は今後ますます減少していくと予想されます。

これにより、残されたCOBOLエンジニアの希少価値は相対的にさらに高まる可能性があります。

モダナイゼーションへの取り組みは続く

COBOLシステムを完全に捨てるのではなく、その価値あるビジネスロジックを活かしつつ、APIを通じて新しいWebシステムやモバイルアプリと連携させたり、クラウド環境へ移行したり、GUI部分をWeb技術で刷新したりといった、モダナイゼーションの取り組みは今後も活発に行われるでしょう。

このようなプロジェクトでは、COBOLと新しい技術の両方を理解できるブリッジ人材が求められます。

新規開発での採用はほぼ皆無

一方で、新しいシステムをゼロからCOBOLで開発することは、現在では考えられません

その役割は、Java, C#, Python, Goといったよりモダンで生産性の高い言語に完全に取って代わられています。

結論

結論として、COBOLという言語自体の技術的な魅力や革新性が将来的に注目されることはないでしょう。

しかし、「既存の膨大なCOBOL資産をどうするか」という問題は、今後もIT業界の大きな課題であり続けます

その課題に対応できるCOBOLエンジニア、特に高い専門性を持つ人材に対する需要は、今後も一定期間、非常に強く継続すると考えられます。

ただし、その需要は主に保守・運用とモダナイゼーションに限定されるため、長期的なキャリアを考えると、COBOLスキルだけに依存するのはリスクが高いと言わざるを得ません。

新しい技術への関心を持ち続け、スキルセットを広げていく努力が求められます。

COBOLエンジニアのキャリアパス例

COBOLスキルを活かしたキャリアパスは、その専門性と、現代の技術トレンドとの関わり方によって多様な形が考えられます。

  • 基幹システム保守・運用スペシャリスト: 特定の業界のCOBOLで書かれた基幹システムに深く精通し、その安定稼働と機能改善を担う専門家。業務知識とメインフレーム技術が強み。

  • メインフレーム技術スペシャリスト: OS 、ミドルウェア 、JCLといったメインフレーム固有の技術スタック全般にわたる深い専門知識を持ち、COBOLアプリケーションを含むシステム全体の最適化やトラブルシューティングを行う。

  • COBOLシステムのモダナイゼーションコンサルタント/アーキテクト: 既存のCOBOL資産を分析し、API化、クラウド移行、他の言語への連携・リライトといったモダナイゼーション戦略の立案や設計、実行を支援する。COBOLと新しい技術の両方に明るい必要がある。

  • プロジェクトマネージャー: COBOLシステムの保守・改修プロジェクトや、モダナイゼーションプロジェクトを管理・推進する。技術的な背景理解が強み。

  • 他の言語へのスキルチェンジ: COBOL開発で培った担当業務の深い知識を活かし、Java, C#, Pythonといったより需要の多い言語スキルを習得し、同じ業務ドメインの新しいシステム開発に携わる。

  • ITコンサルタント: COBOLシステムが使われている業務プロセスを分析し、ITを活用した改善提案や、将来的なシステム刷新の構想・計画策定を支援する。

COBOLエンジニアのキャリアは、単に古い技術にしがみつくのではなく、その経験と知識を土台として、現代の課題解決や新しい技術領域へと展開していくことで、より豊かで持続可能なものになるでしょう。

まとめ

この記事では、「COBOLとは何か?」という問いに対し、その誕生から半世紀以上にわたる長い歴史、事務処理言語としての独特な特徴、現代社会における重要な役割と直面する課題、そしてエンジニアとしてのキャリアと未来の展望に至るまで、多角的に解説してきました。

COBOLは、1959年にビジネスアプリケーション開発のための共通言語として生まれ、その英語に近いの構文による可読性、強力なファイル処理能力、そして十進数計算の正確性といった特徴により、特に金融機関、官公庁、大企業の基幹システムという、社会の根幹を支えるミッションクリティカルな領域で広く採用され、長年にわたりその信頼性を証明してきました。

現在、COBOLは「レガシーシステム」の代名詞のように語られることも多く、新規開発で積極的に採用されることは稀です。

言語仕様の古さ、冗長な記述、現代的な開発手法との親和性の低さといった課題も抱えています。

しかし、その一方で、世界中で稼働し続ける膨大なCOBOLプログラムは、今なお日々の経済活動や行政サービスを支える重要な社会インフラであり、これらのシステムを維持・保守・運用できるCOBOLエンジニアへの需要は、技術者の高齢化と後継者不足という背景も相まって、依然として根強く存在しています。

特にメインフレーム技術と業務知識に精通した専門家は、高い市場価値を持つ可能性があります。

この記事が、COBOLという言語が持つ歴史的意義、そのユニークな設計思想、そして「古い」という一面的なイメージだけでは語れない現代における複雑な立ち位置への理解を深める一助となれば幸いです。

COBOLは、コンピュータがビジネスの世界に革命をもたらした時代の証人であり、その物語は、技術の進化と社会の変化、そしてエンジニアリングの不変の価値について、私たちに多くのことを教えてくれます。

COBOLが築き上げた遺産と、それが投げかける課題に目を向けることは、ITに関わるすべての人にとって意義深いことと言えるでしょう。

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