フリーランスエンジニアの廃業|廃業届・税務処理・再就職への影響を徹底解説
最終更新日:2026/05/13
フリーランスエンジニアの廃業とは、個人事業主として行っていた事業活動を終了し、税務署・自治体・年金保険関連の手続きを完了させることをいいます。「会社員に戻りたい」「事業をたたんで休業したい」と考えるエンジニアに向けて、廃業届の出し方、青色申告の取りやめ、消費税・社会保険の切替、再就職への影響、廃業後の選択肢まで体系的にまとめます。
先に結論
個人事業主の廃業では、「個人事業の開業・廃業等届出書」(廃業届)を税務署に提出します。提出期限は廃業の事実があった日から原則1か月以内です
青色申告を選択していた場合は、「青色申告の取りやめ届出書」もあわせて提出します(取りやめようとする年の翌年3月15日までが原則)
消費税の課税事業者は「事業廃止届出書」、給与支払いがあった人は「給与支払事務所等の廃止届出書」など、状況に応じた届出が追加で必要です
廃業した年は、廃業前の業務に係る売上・経費・未収入金・廃業に伴う費用を整理して確定申告します。在庫・固定資産の処分、廃業後経費の扱いに注意します
健康保険・年金は、会社員に戻る場合は会社の手続き、扶養に入る場合は家族の勤務先経由、無職で国保に新規加入する場合は資格喪失日から原則14日以内に手続きが必要です(すでに国保加入中なら廃業だけで新規加入手続きが必要になるとは限りません)
再就職への影響は限定的で、業務委託期間の役割・実績を職務経歴書に整理しておけば、転職活動で大きな不利になることは少ない傾向です
この記事でわかること
この記事は、廃業を検討しているフリーランスエンジニア、または会社員復帰・休業・法人化への移行を考えているエンジニア向けです。
個人事業主の廃業に必要な届出書と提出期限
廃業した年の確定申告の進め方と、廃業後経費・在庫・固定資産の扱い
消費税・源泉徴収・給与支払事務所まわりの追加手続き
健康保険・年金の切替パターン(再就職/無職/扶養)
法人を廃業する場合の概要と個人事業との違い
再就職への影響と、職務経歴書の書き方の注意点
廃業以外の選択肢(休業・法人化・複業継続)
目次
フリーランスエンジニアの廃業とは
個人事業主の廃業届の出し方
廃業時にあわせて必要な届出
廃業した年の確定申告
健康保険・年金の切替
法人を廃業する場合の概要
廃業の再就職・キャリアへの影響
廃業以外の選択肢
廃業でよくある失敗と注意点
廃業の実践チェックリスト
まとめ
よくある質問
フリーランスエンジニアの廃業とは
結論として、個人事業主の廃業は、税務署に廃業届を提出して事業活動の終了を届け出る手続きのことです。法人を解散・清算する場合は別の手続き(解散登記・清算結了登記など)が必要で、個人事業主の廃業より手続きが多くなります。本記事では主に個人事業主の廃業を中心に解説します。
廃業と「休業」「廃止」の違い
廃業:事業活動を終了し、税務署等に届け出る正式な手続き
休業:事業を一時的に止める状態。届出が必要なケースもあるが、税務署への廃業届とは区別される
法人の解散・清算:法人格を消滅させる手続き。登記・清算結了申告などが必要
所得税の税務署手続きとしては、個人事業主向けの一般的な「休業届」はありません。事業を一時停止する場合でも、廃業届を出すかどうかは再開予定の有無で判断します。自治体の個人事業税関連の届出は別途確認が必要です。売上ゼロの年があっても、廃業届を出さない限り個人事業主としての届出は有効です。
廃業を考える主なきっかけ
会社員に戻りたい(再就職・転職)
法人化に移行する(個人事業主から法人代表者へ)
健康面・家庭の事情で稼働を止めたい
案件が取れず、収入見通しが立たない
副業から本業化したが、会社員に戻る方針に変えた
ミニFAQ:
Q. 売上がない年があっても廃業届は必要?
事業活動を継続する意志がある場合は、廃業届を出さずに開業届を維持できます。事業を完全に止めて、再開予定がないと判断した時点で廃業届を出すのが原則です。判断に迷う場合は、税務署や税理士に相談すると安全です。
個人事業主の廃業届の出し方
結論として、個人事業主が廃業する場合は、「個人事業の開業・廃業等届出書」(通称:廃業届)を税務署に提出します。提出期限は、廃業の事実があった日から原則1か月以内です。
提出する書類
個人事業の開業・廃業等届出書(国税庁:手続案内で様式とガイドを確認)
記入時のポイント
「廃業」にチェックを入れ、廃業日を記入
屋号があれば屋号を記入
廃業理由は「事業の廃止」「法人成り」など簡潔に
提出先は納税地を所轄する税務署
提出方法
税務署窓口で直接提出
郵送(控えがほしい場合は返信用封筒同封)
e-Tax(電子申請)
あわせて検討する自治体への届出
事業税を支払っていた場合や、屋号付き口座・事業所得の住民税を区分けしている場合などは、都道府県税事務所への事業廃止申告が必要なケースがあります。提出期限・様式は自治体により異なるため、居住地の都道府県税事務所に確認します。
ミニFAQ:
Q. 廃業届の提出期限を過ぎても受理してもらえる?
原則1か月以内ですが、過ぎても受理されるケースが多いとされます。ただし、遅れたことで青色申告の取りやめ手続きが翌年度に延びるなど、副次的な影響が出ることもあるため、気付いた時点で速やかに提出するのが安全です。
廃業時にあわせて必要な届出
結論として、廃業届だけでは手続きが完結しません。青色申告・消費税・源泉徴収・給与支払いの状況に応じて、複数の届出書を税務署に提出する必要があります。主な届出書を以下に整理します。
届出書 | 対象者 | 提出期限の原則 |
|---|---|---|
個人事業の開業・廃業等届出書 | 廃業する全員 | 廃業日から1か月以内 |
所得税の青色申告の取りやめ届出書 | 青色申告を選択していた人 | 取りやめようとする年の翌年3月15日まで |
事業廃止届出書(消費税) | 消費税の課税事業者 | 事業廃止後速やかに |
適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書 | インボイス登録事業者 | 取消しを求める課税期間の初日から起算して15日前の日まで等(取扱要件あり) |
給与支払事務所等の廃止届出書 | 家族・従業員に給与支払いがあった人 | 廃止後1か月以内 |
予定納税額の減額申請書 | 予定納税の対象で減額希望者 | 第1期分は7月15日、第2期分は11月15日が原則 |
青色申告を選択している場合
「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を提出
提出期限:取りやめようとする年の翌年3月15日まで
これを出さないと、青色申告のままになり、申告がない場合は税務署から問い合わせが来ることがあります
詳細は青色申告と白色申告の違い、国税庁:青色申告制度も参考にしてください。
消費税の課税事業者の場合
「事業廃止届出書」を提出
提出期限:事業廃止後速やかに
インボイス登録事業者(適格請求書発行事業者)の場合は、廃業時の登録失効・取消しの扱いを税務署で確認し、必要に応じて関連届出を提出します(提出時期によって効力発生日が変わる点に注意)
詳細はフリーランスエンジニアの消費税、インボイスとは?も参考にしてください。
給与支払事務所等の届出をしていた場合
「給与支払事務所等の廃止届出書」を提出
提出期限:廃止後1か月以内
家族・従業員に給与を支払っていた人事業主が対象です
予定納税をしている場合
廃業した年の事業所得が前年より大幅に減る見込みであれば、「予定納税額の減額申請書」を提出して予定納税の負担を抑えられる場合があります
減額申請の提出期限は、第1期分は7月15日、第2期分は11月15日が原則です
ミニFAQ:
Q. すべての届出を一度にまとめて出せる?
税務署に提出する届出は、同時にまとめて提出できます。郵送でも、同一封筒に各届出書をまとめて入れて送ることが可能です。ただし、自治体・健康保険・年金・法務局関連の手続きは別窓口です。控えが必要な届出は、コピーまたは控用紙を同封して受付印をもらう運用が安全です。
廃業した年の確定申告
結論として、廃業した年は、廃業前の業務に係る売上・経費・未収入金・廃業に伴う費用を整理して確定申告する必要があります。廃業日後の収入・支出があっても、廃業前の業務に対応する分は事業所得として処理し、廃業に伴う費用は廃業後経費として一定範囲で計上できる場合があります。
廃業年の確定申告の流れ
廃業日までの売上・経費を集計
在庫・固定資産の処分損益を計上
廃業後経費(廃業に伴う費用)を確認
青色申告の場合は、青色申告決算書も含めて作成
翌年の2月16日〜3月15日(原則)に確定申告
詳細はフリーランスエンジニアの確定申告を参考にしてください。
在庫・固定資産の扱い
在庫:廃業時点で残った在庫は、自家消費・売却・廃棄など処分方法に応じて処理
固定資産(PC・備品など):廃業時点で未償却残高がある場合、売却・自家用転用・廃棄に応じて処理
- 自家用転用:事業用としての減価償却を停止します。高額資産や消費税課税事業者の場合は、転用時の税務処理に注意が必要です
- 売却:資産の種類・取得価額・処理方法により、譲渡所得・事業所得・消費税の扱いが変わる場合があります。高額な資産や課税事業者の場合は税理士に確認します
- 廃棄:除却損として事業所得の必要経費に算入できる場合があります(廃棄の事実を示す資料の保存が必要)
廃業後経費の扱い
廃業後に発生する費用(事務所の片付け費用・最終的な税理士費用など)は、事業に直接関連する範囲で必要経費に算入できる場合があります。具体的には国税庁:所得税法第63条(事業を廃止した場合の必要経費の特例)などで確認できますが、個別判断が必要なため税理士への相談が安全です。
未回収の売掛金の扱い
廃業前の業務に対応する未収売上は、発生時期に応じて事業所得として整理します
すでに過年度に売上計上済みの売掛金は、入金時に二重計上しないよう注意します
回収不能と判断される場合は、貸倒損失として処理できる場合があります(条件あり)
ミニFAQ:
Q. 廃業した年の確定申告は青色申告でできる?
廃業日が年内であっても、廃業年は青色申告のまま申告できます。青色申告の取りやめ届出書の効力は「翌年から」となるため、廃業年の確定申告では青色申告特別控除(要件を満たす場合)が引き続き使えます。
健康保険・年金の切替
結論として、廃業後の健康保険・年金は、「会社員に再就職する」「無職になる」「家族の扶養に入る」「個人事業主のまま継続する(廃業しない)」のいずれを選ぶかで手続きが大きく変わります。
パターン1:会社員に再就職する場合
健康保険:勤務先の健康保険組合または協会けんぽに加入(勤務先が手続き)
年金:厚生年金に切替(勤務先が手続き)
ただし、国民健康保険に加入していた人は、会社の健康保険加入後に自治体で国保脱退手続きが必要です
パターン2:無職・休業の状態になる場合
健康保険:すでに国民健康保険に加入している場合、廃業だけで新たな加入手続きが必要になるとは限りません。会社の健康保険を喪失して国民健康保険に新規加入する場合は、資格喪失日から原則14日以内に市区町村で手続きします
年金:国民年金第1号被保険者として継続(変更があれば届出)
国民健康保険料は前年所得をもとに自治体ごとに算定されるため、廃業翌年も前年の所得が高ければ高めの保険料になる点に注意します。
パターン3:家族(配偶者など)の扶養に入る場合
健康保険:家族の勤務先の健康保険組合に被扶養者として加入(収入要件あり)
年金:国民年金第3号被保険者として手続き(配偶者の勤務先経由)
被扶養者の収入要件は、加入する健康保険組合によって細かい条件が異なります(年間収入130万円未満が一つの目安として語られることが多いが、見込み収入・継続性なども見られる)。加入先の健康保険組合への確認が前提です。
任意継続被保険者制度の活用
会社員時代の健康保険を退職後最長2年間継続する任意継続被保険者制度を利用している場合、廃業そのものが直ちに資格喪失理由になるとは限りません。任意継続の資格喪失は、原則として期間満了・保険料未納・就職による健康保険加入・本人の申出・後期高齢者医療制度への移行などが主な理由です。再就職、扶養への移行、保険料納付状況などによって扱いが変わるため、加入先の協会けんぽ・健康保険組合に確認します。
健康保険全般はフリーランスエンジニアの健康保険の選び方、年金はフリーランスエンジニアの年金対策も参考にしてください。
ミニFAQ:
Q. 廃業届の提出と健康保険の切替はどちらが先?
どちらが先でも構いませんが、会社員に戻る場合は再就職日が決まってから廃業届を出すのが現実的です。再就職日から逆算して、廃業日・確定申告・健康保険切替のスケジュールを組みます。
法人を廃業する場合の概要
結論として、法人(株式会社・合同会社など)を廃業する場合は、解散決議→解散登記→清算手続き→清算結了登記→税務関連の届出という複数の段階を踏みます。個人事業主の廃業より手続きが多く、登記費用や専門家費用がかかります。
法人廃業の主なステップ
解散決議:株主総会(合同会社は社員総会)で解散を決議
解散登記:法務局で解散登記(清算人選任登記もあわせて)
解散公告:官報で債権者保護のための公告(通常2か月以上)
財産処分・債権回収・債務弁済:清算人が清算業務を実施
残余財産の確定・分配:株主・社員に残余財産を分配
清算結了登記:すべての清算が完了したら登記
税務署への異動届・解散事業年度・清算事業年度の申告
法人廃業にかかる費用の目安
解散登記・清算結了登記の登録免許税:合計4〜6万円程度
官報公告料:3〜4万円程度
司法書士・税理士費用:合計10〜30万円程度(業務範囲による)
小規模な株式会社・合同会社で、債務整理や訴訟対応などがないケースでは、専門家費用を含めて15〜40万円程度が一つの目安です。ただし、債務超過・未申告・従業員対応がある場合は大きく増える可能性があります。費用は事務所・業務範囲で大きく変わるため、見積もりを取って判断します。
法人廃業の判断は専門家に相談
法人廃業は、税務・登記・労務の判断が絡む複雑な手続きです。マイクロ法人を運営している人でも、廃業時には税理士・司法書士への相談が安全です。法人化の判断はフリーランスエンジニアの法人化、マイクロ法人とは?も参考にしてください。
ミニFAQ:
Q. マイクロ法人を作ったが、すぐ廃業したい場合は?
すぐの廃業は可能ですが、解散登記・清算手続き・最終事業年度の申告が必要で、設立費用と合わせて数十万円のコストが発生します。法人化前に「数年は維持する見込みがあるか」を税理士と相談してから設立すると、廃業コストの判断ミスを避けられます。
廃業の再就職・キャリアへの影響
結論として、フリーランス廃業から会社員へ戻ること自体は可能です。実務経験や成果を具体的に説明できる場合、廃業そのものが直ちに大きな不利になるとは限りません。ただし、案件の空白期間や担当範囲が曖昧な場合は、説明材料を準備しておく必要があります。
職務経歴書の書き方のポイント
業務委託期間は「フリーランス(個人事業主)」として記載
各案件ごとに参画期間・役割・成果・技術スタックを1社1社書く
フリーランス期間中の自己研鑽(資格・OSS貢献・技術ブログなど)も加点要素
廃業理由は「再就職を希望」「事業転換」などシンプルに
スキルシートやポートフォリオの書き方はフリーランスエンジニアのスキルシートの書き方、フリーランスエンジニアのポートフォリオの作り方も参考にしてください。
再就職時の社会保険・税務まわり
会社員に戻ると、厚生年金・健康保険に切替(会社が手続き)
廃業年の住民税は、廃業前の所得に基づいて翌年に課税されるため、入社後に給与から特別徴収か、自分で普通徴収を続けるかを確認
廃業年の確定申告は自分で行う必要がある
再就職で説明が必要になる場面
フリーランス期間が長い場合や、会社員経験から時間が空いている場合は、面接で「なぜ会社員に戻るのか」を聞かれるケースがある
案件途切れ期間が長い場合は、その期間に何をしていたか(学習・準備・休養など)の説明が必要
希望年収を聞かれた際に、フリーランス時代の売上・所得・手取りと会社員年収の違いを整理して説明できるようにしておくと安心
ミニFAQ:
Q. フリーランス期間中の役職・肩書きはどう書く?
業務委託契約上、正式な役職がない場合は「テックリード」「シニアエンジニア」「コンサルタント」など、実際に担っていたロールを書きます。明確な役職表記がない場合は、「フリーランスエンジニア(業務委託)」と書き、案件ごとの役割を詳細に記述する形が現実的です。
廃業以外の選択肢
廃業を決める前に、他の選択肢で対応できないかを整理すると判断が確実になります。代表的な選択肢を以下にまとめます。
1. 休業(事業を一時停止)
個人事業主には正式な「休業届」はありませんが、事業活動を一時的に止めること自体は可能です。売上ゼロの年があっても確定申告は必要(収入がなければ申告不要のケースもありますが、確認推奨)。
2. 法人化(マイクロ法人への移行)
個人事業主のままより、法人化した方が節税・社会保険の構造で有利になるケースがあります。一般に所得が大きくなるほど法人化を検討する余地はありますが、有利不利は社会保険料・役員報酬・家族構成・消費税の状況で変わります。年間所得800〜1,000万円台は一つの相談目安にとどめ、税理士に試算してもらうのが安全です。詳細はフリーランスエンジニアの法人化、マイクロ法人とは?を参考にしてください。
3. 複業並行(フリーランス+会社員)
会社員に戻りつつ、業務委託案件を副業として継続する選択肢もあります。会社の就業規則で副業可かどうかを必ず確認します。詳細は副業エンジニアの案件の探し方を参考にしてください。
4. 稼働調整(週3〜4日に絞る)
廃業ではなく、稼働日数を減らして負担を軽くする方法もあります。アドバイザリー・技術顧問などの稼働日数が少ない案件を組み合わせれば、収入を保ちつつ稼働を抑えられます。
ミニFAQ:
Q. 「とりあえず廃業」する前に確認すべきことは?
直近の貯蓄・現在の案件継続性・再就職先の見込み・健康保険/年金の切替先の4点を確認します。会社員復帰先が決まっていないまま廃業すると、健康保険料・住民税の負担で生活が圧迫されるケースがあります。
廃業でよくある失敗と注意点
失敗1:青色申告の取りやめ届出を出し忘れる
廃業届だけ出して青色申告の取りやめ届出を忘れると、翌年も青色申告のまま放置されるケースがあります。提出期限は翌年3月15日までなので、廃業時にあわせて準備しておきます。
失敗2:インボイス登録の取り消しを忘れる
インボイス登録事業者だった人が廃業届だけ出して、インボイス登録に関する手続きを忘れるケースがあります。気付いた時点で税務署に確認し、事業廃止届出書や登録取消関連の届出など、必要な手続きを行います。提出時期によって効力発生日が変わるため、廃業時には早めに確認するのが安全です。
失敗3:未回収の売掛金の扱いを誤る
廃業後に売掛金が入金された場合の処理が分からず、確定申告の数字がずれるケースがあります。廃業年の売上として計上するのが原則ですが、回収不能の場合は貸倒損失として処理できる場合もあります。判断に迷う場合は税理士に相談します。
失敗4:固定資産の処理を忘れる
廃業時点で残ったPC・備品などの固定資産を、売却・自家用転用・廃棄のいずれで処理するかを決めずに放置するケースがあります。減価償却を止める処理を含めて、確定申告で必ず整理します。
失敗5:健康保険・年金の切替を忘れる
会社員復帰・扶養・国民健康保険への加入など、選ぶ制度によって手続き先と期限が異なります。特に会社の健康保険を喪失して国民健康保険に新規加入する場合は、原則14日以内の手続きが必要です。手続き漏れがあると、医療費の窓口10割負担などの不利益につながります。
失敗6:住民税の支払いに備えていない
廃業翌年も、廃業前の所得に基づいて住民税が課税されます。廃業翌年の住民税の支払い資金を確保しておかないと、再就職前の無職期間に資金繰りが厳しくなるケースがあります。
ミニFAQ:
Q. 廃業前に税理士に相談すべき?
YMYL領域(税務・社会保険)で個別判断が必要な箇所が多いため、所得が大きい年・固定資産が多い・法人化や複業を伴う場合は税理士相談を推奨します。費用は数万円程度から相談できる事務所も多くあります。
廃業の実践チェックリスト
廃業を決めたら、次の順序で進めると漏れが防ぎやすくなります。
廃業前(1〜3か月前)
案件継続性の確認(既存案件の終了時期)
再就職先・休業期間の見込み確認
健康保険・年金の切替先の確認(会社員復帰/国保/扶養)
直近1〜3年の確定申告書・帳簿の整理
廃業時の在庫・固定資産・売掛金・借入の棚卸し
税理士への相談(所得が大きい場合・法人廃業の場合)
廃業日〜廃業後1か月
個人事業の開業・廃業等届出書を税務署に提出(原則1か月以内)
青色申告の取りやめ届出書を準備(翌年3月15日まで)
消費税課税事業者なら事業廃止届出書を提出
インボイス登録事業者なら登録取消届を提出
給与支払事務所等の届出をしていた場合は廃止届を提出
健康保険の切替確認(会社の健康保険を喪失して国保に加入する場合は、資格喪失日から原則14日以内)
年金切替手続き
都道府県税事務所への事業廃止申告(該当する場合)
廃業した年の確定申告(翌年2月16日〜3月15日)
廃業日までの売上・経費を集計
在庫・固定資産・売掛金・買掛金の処分整理
廃業後経費の計上
青色申告決算書・収支内訳書の作成
確定申告書の作成・提出
住民税・国民健康保険料の納付計画
まとめ
フリーランスエンジニアの廃業は、廃業届・青色申告取りやめ・消費税廃止・インボイス関連・社会保険切替などの手続きを順序立てて進めることが重要です。個人事業主の主な届出は1〜2か月で整理できることが多いですが、廃業年の確定申告や住民税・国保料の影響は翌年以降まで続く点に注意が必要です。
要点を整理します。
個人事業の廃業届は、廃業日から原則1か月以内に税務署へ提出
青色申告取りやめ届は、取りやめようとする年の翌年3月15日まで
消費税課税事業者・インボイス登録事業者は追加の届出が必要
廃業した年も廃業日までの所得を確定申告。在庫・固定資産・売掛金・廃業後経費の処理に注意
健康保険・年金は、再就職/国保/扶養のどれに切り替えるかで手続きが変わる
法人廃業は登記・清算が必要で、個人事業主の廃業より手続き・費用が多い
再就職への影響は限定的。職務経歴書に業務委託期間の役割・実績を整理すれば不利になりにくい
廃業以外にも、休業・法人化・複業並行・稼働調整などの選択肢を比較する価値あり
廃業を決める前に、直近の貯蓄・案件継続性・再就職先・健康保険切替先の4点を確認しておくと判断のミスを減らせます。所得が大きい人・固定資産が多い人・法人化済みの人は、廃業前に税理士に相談すると安全です。フリコンでもフリーランスエンジニアのキャリア相談に対応していますので、廃業後の方向性に迷う場合は一度面談で話してみるのも一つの方法です。
参考・一次情報
よくある質問
Q1. 廃業届は必ず提出しないといけませんか?
事業を完全に止めて再開予定がない場合は、廃業届の提出が原則です。提出しないと、税務署側では事業が継続しているとみなされ、無申告として問い合わせが来る場合があります。
Q2. 廃業届の提出費用はかかりますか?
廃業届の提出に費用はかかりません。税務署窓口・郵送・e-Taxのいずれも無料で提出できます。
Q3. 廃業日はいつにすればいい?
最後の業務委託案件の終了日、または再就職日の前日に設定するケースが多くなっています。売上・経費の区切りとして明確な日付を選ぶと、確定申告で迷いません。
Q4. 開業届を出していなかった場合でも廃業届は必要?
開業届を出していない場合、税務署側で事業主として把握されていない可能性があります。確定申告で事業所得を申告していた人は、廃業届を提出しておく方が安全です。判断に迷う場合は税務署に確認します。
Q5. 廃業した翌年に再開業する場合の手続きは?
再開業する場合は、「個人事業の開業・廃業等届出書」を新たに提出します。事業内容・屋号・開業日などを記入し、再開業として届け出ます。詳細はフリーランスエンジニアのための開業届ガイドを参考にしてください。
Q6. 廃業した年も青色申告特別控除は使えますか?
廃業日が年内であっても、廃業年は青色申告のまま申告できるため、要件(複式簿記での記帳・期限内申告・e-Taxによる電子申告または優良な電子帳簿保存など)を満たせば青色申告特別控除が引き続き使えます。最大65万円控除を受けるには、複式簿記での記帳+e-Taxによる電子申告(または優良な電子帳簿保存)の要件を満たす必要があります。
Q7. 廃業後にもらった売上はどう処理する?
廃業前の業務に対する報酬であれば、発生時期に応じて事業所得として整理します。すでに売上計上済みの売掛金は、入金時に二重計上しないよう注意します。判断に迷う場合は税理士に相談すると安全です。
Q8. 廃業後に再就職した場合、確定申告は必要?
廃業した年は、廃業前の事業所得+再就職後の給与所得を合算して確定申告する必要があります。再就職先で年末調整を受けても、事業所得がある以上は自分で確定申告します。
Q9. 廃業時に貯まっていた小規模企業共済の扱いは?
廃業を理由とした共済金の請求が可能な場合があります。廃業の証明書類(廃業届の控えなど)を添えて、中小企業基盤整備機構に請求します。詳細は中小企業基盤整備機構:小規模企業共済で確認してください。共済の活用は小規模企業共済とは?も参考にしてください。
Q10. 廃業時にiDeCoはどうなる?
iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入資格は、廃業後の働き方(会社員・第1号被保険者・第3号被保険者)に応じて変わります。会社員に戻る場合、勤務先の企業型DC加入状況や金融機関の手続きが必要になることがあります。詳細はiDeCoとは?、国民年金基金連合会:iDeCo公式サイトを確認してください。
Q11. 廃業時に国民健康保険料は減額される?
廃業や倒産による失業の場合、国民健康保険料の軽減・減免が受けられる場合があります。自治体ごとに条件・申請方法が異なるため、廃業届の提出時に居住自治体の窓口で確認します。
Q12. 廃業後にフリーランスに戻りたくなったら?
再開業として開業届を出し直すことで、再びフリーランスとして活動できます。青色申告承認申請書も忘れずに提出します(新規開業から2か月以内、または青色申告を適用しようとする年の3月15日まで)。



