マイクロフロントエンドとは|分割方式・採用判断・運用コストと見送る基準
最終更新日:2026/09/25
マイクロフロントエンドとは、1つのWebアプリのUIを機能単位に分割し、複数のチームが独立して開発・デプロイできるようにするアーキテクチャです。分割方式の違い、採用して割に合う規模の線引き、そのぶん増える運用コストまで、案件に参画するフリーランスエンジニアの視点で整理します。
先に結論
マイクロフロントエンドとは、1つのWebアプリのUIを機能単位で分割し、複数チームが独立して開発・デプロイできるようにする設計です。複数チームのリリース待ちを減らしたい大規模プロダクトで効果が出やすく、1〜2チームの体制では導入しないほうが無難です。
マイクロフロントエンドが主に解くのは、技術そのものより組織やリリース運用の問題です。チームが分かれていない現場に持ち込んでも効果は出にくくなります
分割方式は「ビルド時統合」「ランタイム統合」「ルーティング分割」「Web Components」「iframe・サーバーサイド統合」の5系統。公開事例や実務上の採用パターンでは、Module Federationとルーティング分割が中心です
採用を検討してよい目安は、経験則ベースでは独立して動くチームが3つ以上あり、それぞれが週1回以上のペースで自分たちの判断でリリースしたい状態です
1チームで開発しているなら、モノレポとワークスペース分割で目的の大半は満たせます。分割の前に、まず「誰の待ち時間を減らしたいのか」を言語化してください
参画する側が最初に確認すべきは、統合方式・共有依存のバージョン方針・障害時の一次切り分け担当の3点です
この記事でわかること
5系統の分割方式の違いと、どれを選ぶかの判断軸
採用が割に合う組織規模の閾値と、見送るべきケース
モノリス構成と比べて何の運用コストが増えるのか
国内企業が公開している実装事例で、実際に起きたつまずき
やめる・戻すときの出口戦略
業務委託でマイクロフロントエンド案件に入るときの確認項目
対象は、ReactやVueでのフロントエンド実務経験が3年程度以上あり、設計判断にも関わる立場のエンジニアです。フレームワークの入門的な説明は扱いません。
目次
マイクロフロントエンドとは何か
分割方式の5系統と選び方
Module Federationの現在地
採用判断|割に合うかを決める6つの軸
運用コストの内訳|モノリスと比べて何が増えるか
国内の公開事例に学ぶ失敗パターン
やめる・戻すときの出口戦略
フリーランスが参画するときの実務
まとめ
よくある質問
マイクロフロントエンドとは何か
マイクロフロントエンドは、1つのプロダクトのフロントエンドを機能やドメインの単位に切り出し、それぞれを別々のチームが所有・デプロイできるようにする設計思想です。用語としては2016年ごろから使われ始め、Cam Jacksonがmartinfowler.comのMicro Frontendsで整理した分類が、現在も議論の土台になっています。
重要なのは、これが「ファイルを分ける」話ではない点です。コンポーネント分割やディレクトリ分割はモノリスのままでもできます。マイクロフロントエンドが主に引き受けるのは、リリースの意思決定を誰が持つかという問題です。ただし、レガシースタックとの共存や段階的な技術刷新といった技術側の事情から採用されるケースもあります。
「マイクロサービスのフロント版」という説明のズレ
解説記事の多くは「マイクロサービスの考え方をフロントエンドに広げたもの」と始めます。方向性としては間違っていませんが、この説明だけを鵜呑みにすると判断を誤ります。
バックエンドのサービス分割は、プロセスもデータストアも物理的に分かれます。一方フロントエンドは、最終的にユーザーの1つのブラウザタブという共有環境で合流します。DOM、CSS、グローバル変数、認証トークン、ブラウザ履歴。これらは分割したあとも共有され続けます。
つまりフロントエンドの分割は、バックエンドほどきれいに切れません。サーバーサイドの分割判断についてはマイクロサービスとは|モノリスとの違い・採用判断・案件動向を解説で扱っているので、両者を混同しないよう読み分けてください。本記事はフロント側の分割に絞ります。
垂直分割と水平分割
分割の切り方には2通りあります。
垂直分割は、ページやルート単位で切る方法です。「/search 配下は検索チーム、/booking 配下は予約チーム」のように、URLで境界を引きます。合流地点が少ないぶん実装が素直で、国内の採用事例でも多く見られます。
水平分割は、同じ画面の中を領域で切る方法です。1つのページにヘッダー、商品情報、レコメンド、レビューが並び、それぞれ別チームが提供する構成を指します。柔軟ですが、CSSの衝突や読み込み順の制御といった問題が一気に増えます。
最初の採用では、ページやルート単位で境界を引けるなら垂直分割から始めるのが無難です。水平分割は、垂直で回せるようになってから検討しても遅くありません。1つの画面の中で複数ドメインが密接に同居するプロダクトでは、この限りではありません。
ミニFAQ:マイクロサービスを使っていないとマイクロフロントエンドは導入できませんか
いいえ、前提条件ではありません。バックエンドがモノリスのままでもフロントだけ分割する構成は成立します。ただし、バックエンドのAPIが単一チームの管理下にある場合、フロントを分けても結局そのチームが全体のボトルネックになる点には注意してください。
分割方式の5系統と選び方
方式は「いつ統合するか」で分類するのが主流です。結論から言うと、ルーティング分割かModule Federationのどちらかで始めるのが現実的で、残り3つは条件が合ったときの選択肢になります。ページ単位で分けられるならルーティング分割、同一画面内の部品を独立デプロイしたいならModule Federationが出発点です。
統合方式 | 統合のタイミング | 代表的な実装 | 向くケース | つまずきやすい点 |
|---|---|---|---|---|
ビルド時統合 | ビルド時 | npmパッケージとして取り込む | 変更頻度が低い共通UI | 取り込み側の再ビルドが必要で、独立デプロイにならない |
ランタイム統合(JS) | 実行時 | Module Federation、single-spa | 独立デプロイを本気でやりたい場合 | 共有依存のバージョン整合、初期構築の学習コスト |
ルーティング分割 | 実行時(遷移時) | リバースプロキシ、Next.js Multi-Zones | ページ単位で境界を引ける場合 | 画面遷移時にフルリロードが挟まることがある |
Web Components | 実行時 | Custom Elements、Shadow DOM | フレームワークが混在する場合 | スタイル注入やReactアプリとの統合で制約が出やすい |
iframe・サーバーサイド統合 | 実行時/サーバー | iframe、SSI・ESI | 分離を最優先する管理画面など | UXの制約が大きく、高さ同期や認証連携の実装負荷が増えやすい |
ビルド時統合
共通部分をnpmパッケージとして公開し、各アプリが依存として取り込む方式です。仕組みは単純で、既存のCI資産をそのまま使えます。
ただし、パッケージを更新したら取り込み側も再ビルドとデプロイが必要です。「独立してデプロイできる」という目的は達成できません。デザインシステムの配布には向きますが、これ単体をマイクロフロントエンドと呼ぶかは意見が分かれます。
ランタイム統合とModule Federation
実行時にリモートのバンドルを読み込み、ホストアプリに合流させる方式です。Webpack 5で導入されたModule Federationが代表格で、single-spaのようなフレームワークもこの系統に入ります。
この方式の強みは、リモート側をデプロイするだけでホストの挙動が変わる点です。裏を返すと、リモート側の事故がそのまま本番のホストに出ます。バージョン固定やフォールバックの設計を先に決めておかないと、切り分けに時間を取られます。
バンドラ側の前提知識はWebpackとは|モジュールバンドラーの仕組み・Viteとの違い・基本設定で補完してください。
ルーティング分割
リバースプロキシやフレームワークの機能で、パスごとに別アプリへ振り分けます。Next.jsのMulti-Zonesはこの考え方を公式機能として提供しており、詳細はNext.js公式ドキュメントのMulti-Zonesにまとまっています。
構成がわかりやすく、障害の切り分けも楽です。弱点は遷移体験で、ゾーンをまたぐ移動でフルリロードが発生することがあります。アプリの性格によっては許容できません。Next.js自体の基礎はNext.jsとは?React基盤のフレームワークの特徴・できること・年収・将来性をフリーランス視点で解説を参照してください。
Web Componentsとiframe
Web Componentsは、フレームワークに依存しないカスタム要素として各部品を提供する方式です。理屈の上ではもっとも中立ですが、実務では詰まりどころが多く報告されています(後述の事例を参照)。
iframeは分離の強さが利点です。スタイルもスクリプトも確実に隔離されます。その代わり、高さの同期、認証情報の受け渡し、ブラウザ履歴の制御といった実装負荷が増えやすくなります。社内管理画面のようにUXより分離を優先できる場面なら、今でも合理的な選択肢です。
クラウド上での構成パターンはAWS規範ガイダンスのマイクロフロントエンドに日本語でまとまっており、CDNやオリジンの持ち方まで含めて確認できます。
Module Federationの現在地
Module Federationは長くWebpack専用の機能でしたが、2.x系でランタイムがバンドラから切り離され、RspackやViteでも同等の構成を組めるようになりました。公式の情報源はmodule-federation.ioで、リリース経緯はGitHub Discussionsの2.0リリース告知から追えます。
本記事執筆時点(2026年9月)で公式ドキュメントが案内しているのは2.x系ですが、この領域はバージョンの動きが速いため、採用前に公式サイトで現行の安定版と対応バンドラを必ず確認してください。日本語の解説記事はWebpack 5を前提としたものが多く、そのまま読むと構成の選択肢を狭く見積もることになります。
型情報の共有やマニフェスト経由の読み込みなど、運用を楽にする機能も追加されています。ただし機能が増えたぶん設定の面は厚くなりました。「Module Federationを入れたから独立デプロイできる」わけではなく、共有依存の方針とリリース手順を人間側で決める作業が残ります。
採用判断|割に合うかを決める6つの軸
先に結論を書くと、判断の主語は「技術構成」ではなく「チームの数と、そのチームがリリースを待たされているか」です。以下の表は、国内外で公開されている採用事例と撤退事例に共通して現れる条件を、判断しやすい形に整理したものです。定量的な調査に基づく基準値ではなく、判断の出発点として使う目安として読んでください。
判断軸 | 採用を検討してよい目安 | 見送りが妥当な目安 |
|---|---|---|
独立したチーム数 | 3チーム以上が別々の意思決定で動いている | 1〜2チーム。全員が同じ朝会に出ている |
リリース頻度 | 各チームが週1回以上、自分の判断で出したい | プロダクト全体で月1回程度のリリース |
リリース待ちの実害 | 他チームの都合で自分たちのリリースが止まる事象が月に何度も起きる | 調整コストを体感していない |
コードベースの規模 | 1つのリポジトリで全体を把握できる人がいなくなっている | 数人で全体像を共有できている |
技術スタックの事情 | 旧スタックからの移行を段階的に進める必要がある | 全画面が同一バージョンの同一FWで揃っている |
組織の境界 | チームがドメイン単位で分かれ、担当画面が明確 | 機能横断で全員が全画面を触る |
上の列に3つ以上当てはまるなら検討の価値があります。下の列が目立つなら、分割はコストのほうが先に来ます。
導入しないほうがよいケース|モノレポで足りる線引き
「ビルドが遅い」「コードが大きすぎる」という不満だけが動機なら、マイクロフロントエンドは過剰です。モノレポにワークスペースを切り、ビルドキャッシュを効かせるだけで解決する問題が大半を占めます。
分割が必要になるのは、技術的な重さではなく組織的な待ち時間が問題になったときです。「他チームのレビューが終わらないとリリースできない」「リリース列車の時刻に間に合わないと1週間待ち」という状態が常態化しているかどうかで判断してください。
技術選定そのものを社内で通す手順は技術選定の進め方5ステップ|評価軸の作り方と提案を通す型にまとめています。
ミニFAQ:既存のモノリスから段階的に移行できますか
できます。新規画面や改修予定の画面だけを新アプリとして切り出し、ルーティングで少しずつ振り分け先を移していくやり方(ストラングラーパターン)が現実的です。一気に全画面を分割する進め方は、移行期間中に両方を保守することになり、途中で息切れしやすくなります。
運用コストの内訳|モノリスと比べて何が増えるか
デメリットとして「複雑性が増す」とだけ書かれることが多い部分を、項目ごとに分解します。ここが採用判断の実質的な争点です。
項目 | モノリス構成 | マイクロフロントエンド構成 | 効いてくる場面 |
|---|---|---|---|
CIの実行 | 1本のパイプライン | アプリ数ぶんのパイプライン+統合確認 | 共有ライブラリ更新時に全アプリの再確認が要る |
共有依存 | 1バージョンで統一 | アプリごとにバージョンがずれうる | ReactやUIライブラリのメジャー更新時 |
バンドルサイズ | 重複なし | 設定を誤ると同じライブラリが複数回読まれる | 初回表示のパフォーマンス計測時 |
デザインの一貫性 | 自然に揃う | 意識的に揃える仕組みが必要 | ホスト側のデザイン刷新時 |
E2Eテスト | 1系統で書ける | 境界をまたぐシナリオの持ち主が曖昧になる | リリース前の回帰確認 |
障害対応 | 調査範囲が1つ | どのアプリ起因かの切り分けが先に来る | 本番障害の初動 |
認証・セッション | 単一の実装 | アプリ間でのトークン共有設計が必要 | ログイン状態の不整合 |
とくに見落とされやすいのがE2Eテストと障害対応です。この2つは「誰の仕事か」が決まっていないと、境界のすき間に落ちます。分割の設計と同時に、テストと監視の責任分界を文書にしておくと後が楽になります。E2Eの実装手段はPlaywrightとは|E2Eテスト自動化の基本・Cypressとの違い・案件単価をフリーランス視点で解説を参考にしてください。
共有依存の重複は、Module Federationの共有設定で抑えられます。ただし設定漏れは計測しないと気づきません。バンドルサイズの上限をCIでチェックする仕組みを、分割の初日から入れておくことをおすすめします。後から入れると、すでに膨らんだ数字が基準値になってしまいます。
国内の公開事例に学ぶ失敗パターン
海外の大企業事例は多くの記事で紹介されていますが、規模が違いすぎて参考になりにくい面があります。ここでは日本企業が公開している実装記録から、再現性の高いつまずきを拾います。いずれも各社が自社ブログで公開している内容です。
Web Components方式が合わなかったケース
サイボウズは新卒でマイクロフロントエンドを経験してみてで、Web Componentsによる統合を検証した末に採用を見送った経緯を公開しています。理由として挙げられているのは、CSS in JSで書いたスタイルが適用されない、一部のカスタムフックが期待どおりに動かない、既存ライブラリとReactの協調が読みきれない、といった点です。
技術的に可能であることと、既存資産の上で成立することは別という典型例です。検証段階でスタイルとフックの挙動を先に潰しておくと、判断が早くなります。
通信設計と認証設計で作り直しになったケース
マネーフォワードのMicro Frontendsで築いた共通基盤と運用の試行錯誤では、アプリ間通信をCustomEventで組んだ結果、描画タイミングに依存する問題が出てイベント設計が複雑化したことが書かれています。認証についても、ホスト経由で各アプリのバックエンドを呼ぶ設計から直接通信へ変更しています。
加えて、ホスト側のデザイン更新でマイクロフロントエンド部分だけ見た目がずれる、E2Eの保守負荷が残る、といった未解決の課題も率直に共有されています。分割後に残る宿題の実例として読む価値があります。
CSSとルーティングで削られるケース
カケハシの爆速でプロダクトをリリースしようと思ったらマイクロフロントエンドを選んでいたでは、グローバルCSSによるレイアウト崩れやz-index管理の煩雑さが挙げられています。令和トラベルのNext.jsで実現するマイクロフロントエンドでも、アプリ間のコード重複やrewrites設定に起因する不具合が報告されています。
共通するのは、アーキテクチャの本質的な難しさではなく、スタイルとルーティングという地味な層で時間が溶けている点です。導入検討時の見積もりには、この層の調整期間を明示的に積んでおいてください。
やめる・戻すときの出口戦略
採用の話に比べて、畳み方を書いた日本語記事はほとんど見当たりません。しかし参画する側にとっては、撤退基準が決まっているかどうかがその現場の成熟度を示す指標になります。
再統合を検討すべきサイン
分割したのに、結局すべてのリリースが週次の全体調整会議を通っている
アプリごとの担当が実質的に同じ人・同じチームになっている
共有ライブラリの更新のたびに、全アプリの改修を1人が横断して行っている
障害の一次切り分けに、分割前より時間がかかるようになった
これらが揃っているなら、分割のメリットは失われ、コストだけが残っています。組織が縮小して1チームに戻った場合も同様です。
畳み方の順序
戻すときは、分割したときの逆順が安全です。まずルーティングの振り分けを1アプリに寄せ、次にリモート読み込みをビルド時の依存に置き換え、最後にリポジトリを統合します。一度に全部を戻そうとすると、分割時と同じかそれ以上の作業量になります。
この判断は技術的負債の整理と同じ性質を持ちます。合意形成の進め方は技術的負債とは|リファクタリング案件の合意形成と単価への影響が参考になります。
フリーランスが参画するときの実務
業務委託でマイクロフロントエンド構成の案件に入る場合、通常のフロントエンド案件とは確認すべき点が変わります。ここが他の解説記事でほぼ触れられていない領域です。
案件での遭遇の仕方
実際に出会うパターンは、おおむね3つに分かれます。大規模SaaSで既にマイクロフロントエンド化されている現場に1アプリの担当として入るケース。既存モノリスからの段階移行プロジェクトに、移行要員として入るケース。そして、分割そのものの設計を任されるケースです。
3つ目は設計と組織調整の比重が高く、テックリードとは?仕事内容・年収・PMやEMとの違いをエンジニア視点で解説で扱っている役割に近づきます。求められるのはReactの実装力だけではありません。
参画前に確認したい7項目
商談や初回面談の場で、以下を聞いておくと入ってからの事故が減ります。
統合方式は何か(Module Federation/ルーティング分割/Web Components のどれか)
共有依存のバージョン方針(誰がいつ上げるか、ずれを許容するか)
自分が担当するアプリの境界(画面単位か、ページ内の領域か)
デザインシステムの有無と更新主体(ホスト側が更新したとき誰が追従するか)
E2Eテストの責任分界(境界をまたぐシナリオは誰が持つか)
障害時の一次切り分け担当(どのアプリ起因かを誰が判定するか)
オンボーディング資料とローカル起動手順(全アプリを立ち上げないと動かない構成か)
7番目は軽視されがちですが、影響が大きい項目です。ローカルで全アプリを起動する必要がある構成だと、初日の環境構築だけで数日かかることがあります。参画から全体像をつかんで手が動くまで、この種の構成では2〜4週間程度を見込んでおくと、稼働計画のずれが小さくなります。3か月程度の短期案件では、この立ち上がり期間が稼働全体に占める比率を事前に計算しておいてください。
スキル要件と単価への効き方
マイクロフロントエンド案件で評価されるのは、フレームワークの実装力に加えて、ビルド基盤への理解と設計判断の経験です。この掛け算が効くぶん、同じフロントエンドでも要件が一段上がる傾向が見られます。
具体的なレンジについては本記事では扱いません。経験年数別・技術別の整理はフロントエンドエンジニアのフリーランス単価相場|経験別・技術別レンジと動向にまとめてあります。単価を体系的に上げる考え方はフリーランスエンジニアの単価相場と単価の上げ方で整理しています。自分が今どのくらいの単価を狙える位置にいるか気になる方は、無料のフリーランスエンジニア単価診断で市場単価の目安を確認できます。大規模フロント案件の募集状況はフリコンの案件一覧から探せます。
学習の進め方
いきなりModule Federationの設定から入ると、手段の理解だけで終わりがちです。順序としては、まず垂直分割の構成を小さく作ってみるところから始めるのが理解が早くなります。
既存のReactアプリを2つに分け、リバースプロキシでパスごとに振り分ける構成を手元で作る
次にModule Federationでホストとリモートの最小構成を組み、共有依存の指定を変えて挙動の違いを見る
共有ライブラリのバージョンを意図的にずらし、何が壊れるかを確認する
最後に、認証トークンの受け渡しとルーティング状態の同期を設計する
3つ目を実際に壊してみる経験があると、現場での議論の解像度が変わります。Reactそのものの基礎固めが必要ならReactとは?初心者向け入門解説|できること・人気の理由までから入ってください。
まとめ
マイクロフロントエンドは、複数チームのリリースを独立させるための手段であり、コードを綺麗にするための手段ではありません。チームが分かれていない現場では、コストだけが先に立ちます。
分割方式は5系統。まずはルーティング分割かModule Federationから検討する
採用の目安は、独立したチームが3つ以上あり、各チームが週1回以上のペースで自分の判断でリリースしたい状態
1〜2チーム・月1回程度のリリース頻度なら、モノレポとビルドキャッシュで足りる
増えるコストはCI・共有依存・デザイン統一・E2E・障害切り分け。とくに後ろ2つは責任分界を先に決める
国内事例でつまずいているのはスタイルとルーティングという地味な層。見積もりに調整期間を積む
撤退基準を持っている現場は成熟度が高い。戻すときは分割の逆順で進める
参画前に、統合方式・共有依存のバージョン方針・障害時の一次切り分け担当の3点を確認する
逆に、1〜2チームで全体を見渡せる段階なら、まずはモノレポと運用改善を優先するのが現実的です
次のステップとしては、手元のReactアプリを2つに分けてリバースプロキシで振り分ける構成を作り、そのうえでModule Federationの最小構成を組んでみてください。設定を書くより、共有依存をずらして壊してみるほうが学びが大きくなります。
参照した一次情報は以下のとおりです。バンドラの対応状況やバージョン情報は公開後も変わりやすいため、採用を決める前に公式ドキュメントで現行の安定版を確認してください。
よくある質問
小規模なプロダクトでも導入する価値はありますか
チームが1つなら、ほぼありません。得られるのは独立デプロイですが、独立してデプロイしたい相手がいない状態では利点が発生しません。ビルドの遅さが動機なら、ビルドキャッシュやバンドラの見直しで対処するほうが費用対効果は高くなります。
アプリごとに違うフレームワークを使っても大丈夫ですか
技術的には可能ですが、推奨しにくい構成です。ReactとVueが混在すると、共通コンポーネントを二重に持つか、Web Componentsでラップするかの選択を迫られます。旧スタックからの移行期間という明確な理由がある場合に限定し、恒久的な混在は避けるのが無難です。
アプリ間でどうやって状態を共有しますか
共有する状態を極力減らす設計が第一です。どうしても必要な場合は、URLのクエリパラメータ、ブラウザのストレージ、軽量なイベントバスの順に検討します。グローバルな状態管理ライブラリをアプリ間で共有すると、独立性が失われて分割の意味が薄れます。
認証はどこで持つべきですか
ホスト側でトークンを取得し、各アプリへ渡す構成が出発点になります。ただし前述のマネーフォワードの事例のように、ホスト経由でバックエンドを呼ぶ設計は詰まりやすい箇所です。トークンの取得はホスト、APIの呼び出しは各アプリが直接という分担が扱いやすくなります。
SEOへの影響はありますか
ルーティング分割やサーバーサイド統合であれば、通常のマルチページ構成と大きくは変わりません。注意が必要なのはクライアント側でリモートを読み込む構成で、初期HTMLに主要なコンテンツが載らないとクロール時に不利になる可能性があります。SSR対応の有無を方式選定の段階で確認してください。
Module Federationとsingle-spaはどちらを選ぶべきですか
モジュール単位で共有したいならModule Federation、アプリ単位でライフサイクルを管理したいならsingle-spaが近い設計思想です。両者は排他ではなく、single-spaのルーティング管理とModule Federationの読み込みを組み合わせる構成もあります。現在の情報量ではModule Federation側の公式ドキュメントのほうが厚くなっています。
モノレポとマイクロフロントエンドは同時に使えますか
使えますし、実際に多い組み合わせです。コードは1つのリポジトリに置きつつ、デプロイ単位は分ける構成になります。レビューや依存管理の一元化を保ったまま、リリースの独立性だけを取れるため、最初の一歩としては扱いやすい形です。
導入の検証にはどのくらいの期間を見ればよいですか
最小構成のPoCであれば数日で組めます。ただし判断材料として使うなら、既存のデザインシステムの適用、認証の受け渡し、E2Eの実行までを通して確認する必要があり、2〜4週間程度を見込むケースが多くなります。スタイルの衝突は小さなPoCでは顕在化しないため、実際の画面に近い状態まで作り込んでから判断してください。
未経験でもマイクロフロントエンド案件に入れますか
アーキテクチャ自体の経験は必須ではないことが多く、フロントエンドの実務経験に加えてビルド設定を読める力があれば候補になります。募集要件では「大規模プロダクトの経験」「ビルド・CI周りの改善経験」といった形で表現されることが多く、アーキテクチャ名が明示されていない案件もあります。
求人票にマイクロフロントエンドと書かれていない案件でも遭遇しますか
あります。「複数プロダクトを横断するフロントエンド基盤」「既存画面の段階的リプレイス」といった表現で募集されているケースでは、中身が実質的にこの構成であることがあります。面談時に統合方式を聞けば判別できます。
分割した結果、パフォーマンスは悪化しますか
設定次第です。共有依存の重複を放置すると初回読み込みは重くなります。一方で、画面ごとに必要なコードだけを読み込む構成にできれば改善する余地もあります。分割の前後で初回表示の指標を計測し、数字で比較できる状態にしてから判断することをおすすめします。
チームが分かれていない状態で導入すると何が起きますか
境界をまたぐ変更のたびに、同じ人が複数のリポジトリを行き来することになります。レビューもデプロイも回数が増え、得られるものがないまま手間だけが残ります。この状態は再統合を検討するサインです。
