業務委託の契約期間|1ヶ月・3ヶ月更新の実態と更新判断の時期
最終更新日:2026/10/19
業務委託の契約期間とは、委託した業務を行う期間として契約書に定める区切りのことです。法律上の上限はなく、当事者の合意で決まります。ただし期間の長さによって、フリーランス法で発注者に課される義務が変わります。契約期間の決まり方と、更新の可否がいつ判明するのかを整理します。
先に結論
公開案件ベースで見る限り、フリーランスエンジニアの常駐・リモート案件では、初回1〜3ヶ月、以降は3ヶ月更新という形がよく見られます
契約期間には、労働契約のような一律の法定上限はありません。長さは基本的に発注者と受注者の合意で決まります
分岐点は6か月です。従業員を使用する発注事業者との通算6か月以上の業務委託では、中途解除・不更新について30日前までの予告義務が問題になります
3ヶ月更新でも、同じ相手と同じ内容で更新を重ねて通算6か月以上になれば、この予告義務の対象に含まれ得ます
更新可否の打診は契約満了の30〜60日前に来ることが多く、満了2週間前になっても連絡がないなら自分から確認したほうが安全です
この記事でわかること
業務委託の契約期間がどう決まり、契約書のどこを読めば更新条件がわかるか
1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月・1年の更新単位ごとに、何がどう変わるか
フリーランス法の保護が契約期間でどう変わるか(6か月基準と通算ルール)
更新判断がいつ来るかを満了日から逆算する方法
契約期間まわりで実際に詰まりやすいポイントと、その避け方
想定読者は、エージェント経由または直契約で準委任の開発案件に参画している(あるいはこれから参画する)フリーランスエンジニアです。実務経験の年数は問いません。
目次
業務委託の契約期間はどう決まるのか
1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月更新の実態
契約期間でフリーランス法の保護が変わる
自動更新と合意更新の読み分け
更新判断はいつ来るか|満了からの逆算
ケース別|契約期間をどう受け止めるか
契約期間まわりでよくある失敗
契約期間チェックリスト
まとめ
よくある質問
業務委託の契約期間はどう決まるのか
結論から言えば、業務委託の契約期間には、労働契約のような一律の法定上限はありません。長さは基本的に当事者の合意で決まります。
労働契約には、有期契約の上限を原則3年(専門的知識を持つ労働者などは5年)とする労働基準法14条の制限があります。業務委託はそもそも労働契約ではないため、この制限は適用されません。1週間の契約も、3年の契約も、合意があれば成立します。
ただし実務では、発注側が成果と相性を確認しながら継続可否を判断したいため、区切りを短めに置く運用が定着しています。エンジニア案件で1年契約がいきなり提示されるケースは多くありません。
契約書で期間に関係する条項は3つある
契約期間の実態は、契約書の1つの条項だけでは読み取れません。次の3つをセットで確認します。
条項 | 見るポイント | 読み違えると起きること |
|---|---|---|
契約期間条項 | 開始日と終了日。月途中開始の場合の初月の扱い | 初月が日割りなのか満額なのかで報酬がずれる |
更新条項 | 自動更新か、合意がなければ終了するか。更新拒絶の通知期限 | 自動更新だと思い込んで次の案件を探し始めず、空白期間が出る |
中途解約条項 | 解約の申し出から終了までの予告期間(30日前・60日前など) | 辞めたいときに想定より長く拘束される |
このうち見落とされやすいのが更新条項です。「本契約は期間満了の30日前までに当事者いずれからも申し出がない限り、同一条件でさらに3か月更新されるものとする」という形の条項があれば自動更新型、「更新は別途当事者の書面による合意による」とあれば合意更新型になります。条項の全体像は業務委託契約書の確認ポイント|フリーランスエンジニアが締結前に見る条項とチェックリストで整理しています。
準委任と請負では契約期間の意味が違う
準委任契約の場合、契約期間は「稼働を提供する期間」です。期間が来れば役務の提供が終わります。
請負契約では、契約期間よりも納期(完成期限)が中心になります。期間満了しても成果物が未完成なら、債務は残ります。この違いを押さえないと、「期間が切れたので終わり」と判断して揉めます。契約類型の差は準委任契約と請負契約の違い|フリーランスエンジニアが知るべきリスクと注意点に詳しく書いています。
なお準委任には民法上の特徴があります。民法(e-Gov法令検索)651条は、委任は各当事者がいつでも解除できると定めており、656条で準委任にも準用されます。相手方に不利な時期の解除は損害賠償の対象になり得ますが、やむを得ない事由があるときは別です。
この規定は任意規定なので、契約書で解約の条件を制限することもできます。実務では契約書の中途解約条項が優先して効くと考えたほうが現実的です。
この章のミニFAQ
Q. 契約期間が書かれていない業務委託契約書は無効ですか。
無効ではありません。ただしフリーランス法では、業務委託をする際に給付の内容・報酬額・支払期日などを書面や電磁的方法で明示することが発注者の義務とされています。期間が曖昧なまま始めると、終了の判断でも報酬の締めでも揉めやすくなります。着手前に書面化を求めてください。
1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月更新の実態
まず結論です。フリーランスエンジニアの準委任案件では、初回1〜3ヶ月・以降3ヶ月更新という形が最も多く見かける組み合わせです。
以下の内容は、2026年10月時点で首都圏中心の主要フリーランスエージェント数社の公開案件ページ(週3〜5日稼働の準委任案件)を確認し、そこに記載された契約期間・更新単位を観測ベースで整理した目安です。非公開案件や直契約の条件は含みません。統計調査ではないため、数字そのものより「どういう場面でどの単位が使われるか」を読んでください。
更新単位ごとの特徴
更新単位 | 見かける場面 | フリーランス側の利点 | 注意点 |
|---|---|---|---|
1ヶ月 | 初回参画のお試し、短期の増員、スポット対応 | 相性が合わないとき短期で抜けやすい | 収入の見通しが立てにくい。通算6か月未満だと30日前予告の対象外 |
3ヶ月 | 常駐・リモートの開発案件で最も見かける単位 | 四半期ごとに条件を見直せる | 更新判断が年4回来るため、都度の実績提示が必要 |
6ヶ月 | 長期の開発、運用保守、官公庁系 | 予告義務の対象になり、収入が読みやすい | 途中で抜けにくい。単価見直しの機会が年2回に減る |
1年 | 技術顧問、プロダクト専任、年度単位の公共系 | 腰を据えて設計から関われる | 市場単価が上がっても据え置きになりやすい |
初回だけ短い契約を提示されるのはなぜか
初回1ヶ月・2回目以降3ヶ月、という段階設計はよく見られます。発注側が「スキルシートと実際の稼働が合っているか」を確認する期間として置いているためです。
これ自体は警戒すべきサインではありません。ただし初回短期契約には、後述する法的保護が及びにくいという側面があります。初回1ヶ月の案件に参画するときは、2回目以降の更新単位が何ヶ月になるのかを面談時に確認しておくと見通しが立ちます。お試し参画の実務については業務委託のトライアル参画とは|お試し期間の実情と本契約への進み方を参照してください。
1ヶ月更新が続くときに考えること
初回から数えて3回、4回と1ヶ月更新が続いている場合、発注側がプロジェクトの予算を月単位でしか確保できていない可能性があります。悪意があるわけではなく、社内の承認フローがそうなっているだけのこともあります。
ただし収入の安定という観点では弱い状態です。更新単位を3ヶ月に変えられないか、更新面談のタイミングで相談してみる価値はあります。交渉の切り出し方はフリーランス契約更新面談で話すこと|継続を勝ち取る準備と実績の示し方にまとめています。
契約期間でフリーランス法の保護が変わる
ここが契約期間の話で最も実利のある部分です。
2024年11月1日に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法、通称フリーランス法)では、業務委託の期間によって発注者に課される義務が3段階に分かれています。
前提|義務の範囲は発注者の属性でも変わる
期間の話に入る前に、誰が義務を負うのかを押さえる必要があります。期間だけで決まるわけではありません。
同法では、フリーランス(特定受託事業者=従業員を使用しない個人・一人法人)に業務委託する側を「業務委託事業者」と呼び、そのうち従業員を使用する個人事業者や、2人以上の役員がいるか従業員を使用する法人を「特定業務委託事業者」として区別しています。
取引条件の明示はすべての業務委託事業者の義務です。一方、報酬の支払期日、禁止行為、就業環境の整備(30日前予告を含む)は、特定業務委託事業者に課される義務です。つまり従業員のいない個人からの発注では、保護の範囲が狭くなります。
以下では、法律上の説明では「発注事業者」、実務上の相手先は「クライアント」と表記します。
期間別の義務マップ
公正取引委員会のフリーランス法特設サイトで示されている区分を、フリーランス側から見た形に整理すると次のようになります。
業務委託の期間 | 発注者に課される主な義務 |
|---|---|
1か月未満 | 取引条件の明示/報酬支払期日(給付の受領日から60日以内)/募集情報の的確表示/ハラスメント対策の体制整備 |
1か月以上6か月未満 | 上記に加えて、買いたたき・報酬の減額・受領拒否・不当なやり直しなどの禁止行為 |
6か月以上 | 上記に加えて、育児介護等への配慮義務/中途解除・不更新の30日前予告 |
この表は発注者が特定業務委託事業者である場合を前提にしています。従業員を使用していない個人事業者からの発注では、期間にかかわらず取引条件の明示のみが義務です。フリーランスから別のフリーランスへ再委託するケースでは保護の範囲が狭くなる点は押さえておいてください。
30日前予告は「解除」だけでなく「更新しない」場合にも効く
特定業務委託事業者が6か月以上の継続的業務委託を行っている場合、契約を中途解除するときに加えて、期間満了で更新しないときも、原則として30日前までに予告する必要があります。これは法の条文上も定められています(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律 第16条)。
予告は口頭では足りず、書面やメールなど後から確認できる方法で行う必要があります。
例外もあります。受注者側の責めに帰すべき事由によって直ちに解除する必要があると認められる場合は、予告なしの解除が認められます。公正取引委員会のQ&Aでは、反社会的勢力との関係が判明した場合や、第三者への暴言・嫌がらせがあった場合などが例として挙げられています。日常的な稼働のパフォーマンス不足がただちにこれに当たるわけではありません。
3ヶ月更新でも通算6か月で対象になる
ここが見落とされやすい点です。「うちは3ヶ月契約だから30日前予告の対象外」と言われても、そのまま受け入れないでください。
契約の更新によって継続する業務委託は、期間を通算して判断されます。公正取引委員会のフリーランス法Q&Aでは、前後の契約が次の2つの要件を満たす場合に通算されると説明されています。
契約の当事者が同一であり、給付または役務の提供の内容が少なくとも一定程度の同一性を有すること
前の契約が終了した日の翌日から、次の契約を締結した日の前日までの空白期間が1か月未満であること
つまり同じクライアントで同じような開発業務を、間を空けずに3ヶ月・3ヶ月と更新していれば、2回目の契約期間の終わりには通算6か月に達する計算になります。この場合、契約が3ヶ月単位であることを理由に予告義務がないとは言えません。
ただし給付内容の同一性をどこまで認めるかなど、個別の事情で判断が分かれる余地はあります。自分のケースが該当するか迷う場合は、契約書と発注履歴を持って相談窓口に確認するのが確実です。
基本契約を結んで個別契約を重ねる形の場合は、基本契約の始期から終期までで期間を算定します。
この章のミニFAQ
Q. 通算6か月を超えているのに、満了1週間前に「更新なし」と言われました。どうすればいいですか。
まずは予告が30日前までに行われなかった事実を、メールなど記録が残る形で確認してください。フリーランス法違反の疑いがある場合は、公正取引委員会や厚生労働省の相談窓口(フリーランス・トラブル110番など)に相談できます。一方的な条件変更への対応全般は単価引き下げ・契約変更を一方的通告された時の対応|フリーランス新法・取適法の守られるラインで整理しています。
Q. 自分から辞める場合も30日前に予告しないと違法ですか。
フリーランス法16条は発注事業者に課された義務です。受注者が辞める場合の予告期間は、契約書の中途解約条項と民法の規定によります。契約書に「60日前までに書面で通知」とあれば、それに従うのが原則です。
自動更新と合意更新の読み分け
契約期間の長さと同じくらい重要なのが、更新がどう発生するかです。型は大きく2つあります。
自動更新型
期間満了の一定日数前までにどちらからも申し出がなければ、同一条件で自動的に更新される形です。
フリーランス側から見ると、何もしなければ継続するので楽に見えます。ただし落とし穴があります。同一条件で更新されるということは、単価も据え置きだということです。単価を上げたいなら、更新拒絶の通知期限より前に動く必要があります。
もう1つの落とし穴は、辞めたいときです。更新を止めるには期限までに申し出る必要があり、1日でも遅れると次の期間に入ってしまいます。
合意更新型
更新には当事者の書面による合意が必要な形です。放っておけば期間満了で終わります。
この型では、満了が近づいても連絡が来ないこと自体がリスクです。更新するつもりでいたのに、発注側は社内調整が終わらず放置していた、という状況が起こります。
更新条件の確認で聞くべきこと
参画前の面談や契約締結時に、次の3点を確認しておくと後の不確実性が減ります。
更新は自動更新か、都度合意か
更新しない場合、いつまでに通知されるか
更新時に単価の見直し協議をする機会があるか
面談で条件を詰める質問の作り方はフリーランス面談で聞くべき質問リスト|ミスマッチを防ぐ確認事項が参考になります。
更新判断はいつ来るか|満了からの逆算
更新の可否がわかるタイミングは契約書には書かれていません。実務の動きから逆算するしかありません。
エージェント経由の案件では、更新可否の打診は契約満了の30〜60日前に来ることが多い、というのが観測される傾向です。エージェントがクライアントに意向を確認し、その回答をフリーランスに伝えるという二段階を挟むため、直契約よりやや早めに動きます。
逆算タイムライン
満了までの日数 | エージェント経由 | 直契約 |
|---|---|---|
60日前 | 自分の更新意向を担当者に伝えておく。実績の棚卸しを済ませる | クライアントの予算期・体制変更の動きを把握する |
30日前 | 更新可否の打診が来ることが多い。通算6か月以上なら法定の予告期限 | 更新と条件の相談を自分から切り出す |
14日前 | 更新確定なら契約書・注文書の発行を待つ段階。未着ならここで催促 | 合意内容を書面化する |
7日前 | 未確定のままならエージェントに次の案件の面談を並行で依頼する | 同左。別ルートの案件も動かす |
満了日 | 自動更新条項の有無で扱いが分かれる。書面がないまま稼働を続けない | 同左 |
この表で一番重要なのは7日前の行です。更新が確定していない状態で満了1週間を切ったら、継続を待つのと並行して次を探し始めてください。エージェントの登録から次の案件の初稼働までには2〜4週間かかるのが一般的で、満了後に動き始めると収入の空白が発生します。
更新と単価交渉のタイミングは分ける
更新の可否と単価の改定を同じ場で同時に持ち出すと、どちらも流れやすくなります。
実務的には、単価の話を先に(満了の45〜60日前あたりで)出し、更新の意思確認はその後に置く組み立てのほうが通りやすい、という進め方があります。参画直後からの実績の積み上げ方はフリーランス単価を上げる参画後3ヶ月|初回更新までの実績づくりに、更新時に単価が下がる打診を受けたときの対応は契約更新で単価が下がる時の対策|フリーランスエンジニアの維持交渉術にまとめています。
自分の経歴で今どのくらいの単価レンジを狙えるのかを把握しておくと、更新時の判断がぶれにくくなります。無料のフリーランスエンジニア単価診断で現在の市場単価の目安を確認できます。
この章のミニFAQ
Q. エージェントとの契約期間と、クライアントの契約期間がずれることはありますか。
あります。エージェントとフリーランスの間の契約(準委任)と、エージェントとクライアントの間の契約は別の契約です。クライアント側が6ヶ月で合意していても、フリーランスとの契約は3ヶ月単位で切られていることがあります。自分に適用されるのは自分が署名した契約の期間です。商流の構造はフリーランスエージェントの仕組み|登録から契約・支払いまでの流れと手数料で解説しています。
ケース別|契約期間をどう受け止めるか
初回1ヶ月契約を提示された
警戒しすぎる必要はありません。発注側の確認期間として置かれているのが通常です。
ただし2点だけ確認してください。2回目以降の更新単位と、1ヶ月で終了する場合の判断基準です。後者が曖昧なまま始めると、何を評価されているのかわからないまま参画することになります。
3ヶ月更新が3回以上続いている
安定して評価されている状態です。このフェーズでは、更新単位を6ヶ月に伸ばす相談と、単価改定の相談の両方が現実的な選択肢になります。
6ヶ月契約になれば、30日前予告の対象であることが明確になり、収入の予測も立てやすくなります。一方で単価見直しの機会は年2回に減ります。どちらを優先するかは、自分の単価が市場水準に届いているかで判断が変わります。
6ヶ月以上の長期契約を打診された
収入の安定という点では有利です。ただし中途解約条項の予告期間を必ず確認してください。長期契約では解約予告が60日前になっているケースもあり、途中で抜けるときの身動きが制限されます。
期間中に別の案件オファーが来たときの動き方は業務委託の中途解約|フリーランスエンジニアが案件を円満に辞める手順を参照してください。
満了が近いのに更新の連絡がない
満了30日前を過ぎて連絡がなければ、自分から確認してください。待っていても状況は改善しません。
エージェント経由なら担当者に、直契約ならクライアントの窓口に、「更新の可否はいつ頃わかりますか」と期限を区切って聞くのが有効です。同時に次の案件の情報収集も始めておきます。フリーランス向け案件一覧で現在の募集状況を確認しておくと、判断の材料になります。
契約期間まわりでよくある失敗
自動更新だと思い込んで次を探さなかった
前回まで自動で更新されていたので今回も続くと考え、満了直前に「今回は更新なし」と言われて収入が途切れるパターンです。
自動更新条項があっても、更新拒絶の申し出があれば終了します。更新が書面で確定するまでは未確定として扱ってください。契約終了に備える資金・案件の準備は業務委託の契約終了に備える|フリーランスエンジニアの資金・案件・実務で整理しています。
解約予告期間を読まずに契約した
辞めたいと伝えてから、契約上は60日稼働を続ける必要があった、というケースです。契約期間の長さだけ見て、解約条項を読んでいないと起きます。
期間満了後も契約書なしで稼働を続けた
更新の合意はしたが書面が届かないまま、翌月も稼働を続けてしまう状態です。報酬の条件が曖昧になり、トラブルが起きたときに根拠がありません。
フリーランス法では取引条件の明示が発注者の義務です。書面が出ていない状態を放置せず、メールでも構わないので条件を確定させてください。
精算幅の期間と契約期間を混同した
月140〜180時間といった精算幅は、月単位の稼働時間の幅であって契約期間とは別の概念です。3ヶ月契約だからといって、3ヶ月分を合算して精算するわけではありません。詳細は準委任の精算幅とは|140-180hの意味と超過・控除の計算方法で確認してください。
契約期間チェックリスト
締結前と更新前に、それぞれ確認する項目を分けて整理しました。
締結前に確認すること
契約期間の開始日と終了日が明記されているか
初月が月途中開始の場合、報酬が日割りか満額かが決まっているか
更新が自動更新か合意更新かが読み取れるか
更新拒絶の通知期限(満了の何日前か)が書かれているか
中途解約の予告期間(30日前・60日前など)が書かれているか
2回目以降の更新単位の見込みを面談で確認したか
更新前に確認すること
現在の契約が通算6か月以上になっているか(30日前予告の対象か)
更新可否の回答期限を担当者と共有できているか
更新時に単価改定の協議機会があるか
更新が書面で確定しているか(口頭合意のまま稼働していないか)
更新未確定の場合、次の案件の面談を並行で動かしているか
まとめ
業務委託の契約期間は合意で自由に決められますが、通算6か月を超えた時点でフリーランス法の30日前予告の対象になります。この1点を知っているかどうかで、更新されなかったときの立ち位置が変わります。
エンジニア案件では初回1〜3ヶ月、以降3ヶ月更新が最も見かける組み合わせ
契約期間条項だけでなく、更新条項と中途解約条項をセットで読む
6か月以上の継続的業務委託は、中途解除も不更新も30日前予告が発注者の義務
3ヶ月更新でも、当事者と業務内容が同じで空白が1か月未満なら期間は通算される
更新可否の打診は満了の30〜60日前が目安。満了2週間前で未確定なら次の案件を並行で動かす
単価の相談は更新の意思確認より前(満了45〜60日前)に出すと流れにくい
次のステップとして、手元の契約書を開いて「更新条項の通知期限」と「中途解約の予告期間」の2か所に印をつけてください。この2つがわかれば、次の更新で自分がいつ動くべきかが決まります。
本記事は2026年10月時点で公表されている公正取引委員会・厚生労働省等の情報をもとに整理しています。参照した一次情報は以下のとおりです。
契約条項の個別の有効性や、法違反に当たるかどうかの判断は、契約内容と経緯によって結論が変わります。実際に争いが生じている場合は、弁護士やフリーランス・トラブル110番などの専門窓口に相談してください。
よくある質問
業務委託の契約期間に法律上の上限はありますか。
ありません。労働契約の有期上限(原則3年、専門業務等は5年)を定める労働基準法14条は、労働契約に適用される規定であり、業務委託には及びません。合意があれば1年でも3年でも設定できます。
契約期間の途中で単価交渉はできますか。
契約上は期間中の単価は合意済みのため、原則は次回更新時の協議になります。ただし業務範囲が当初の想定から大きく広がった場合は、期間中でも条件変更を申し入れる根拠になります。範囲外業務の扱いは個別の協議が必要です。
「自動更新」と聞いていたのに更新されませんでした。違法ですか。
自動更新条項があっても、更新拒絶の申し出が期限内にあれば更新されません。これ自体は違法ではありません。ただし発注者が特定業務委託事業者で、通算6か月以上の業務委託に当たる場合は、不更新の30日前予告が義務になります。予告がなかったのであれば、法違反の疑いがあるとして相談窓口に確認する価値があります。
期間満了で終わる場合も、30日前の予告は必要ですか。
発注者が特定業務委託事業者で、通算6か月以上の継続的業務委託に当たる場合は必要です。フリーランス法16条は、中途解除だけでなく「更新しないこと」も予告の対象としています。受注者側の責めに帰すべき事由がある場合などの例外もあるため、自分のケースの当てはめは契約書と経緯をもとに確認してください。
契約と契約の間が空いた場合、期間の通算はどうなりますか。
空白期間が1か月未満であれば通算されます。1か月以上空くと、そこで区切られて新たな業務委託として扱われます。当事者の同一性と、給付内容が一定程度同じであることも通算の要件です。
複数社と並行して契約する場合、期間をそろえたほうがいいですか。
そろえる必要はありません。むしろ満了時期をずらしておくと、片方が更新されなかったときに収入がゼロにならず、リスクが分散します。掛け持ちの稼働配分は別途設計が必要です。
更新の連絡が満了1週間前に来るのは普通ですか。
直契約では起こり得ますが、望ましい状態ではありません。通算6か月以上なら、更新しない場合は30日前予告が義務です。更新する場合の連絡時期に法的な定めはないため、次回契約時に「更新可否はいつまでに回答いただけますか」を条件として握っておくと改善します。
契約期間が長いほど有利ですか。
一概には言えません。長期契約は収入の予測が立ち、30日前予告の対象にもなります。一方で単価見直しの機会が減り、中途解約の予告期間が長く設定されることもあります。市場単価が自分のレンジを上回っている局面では、短めの更新単位のほうが条件を見直しやすくなります。
契約期間と精算幅(140〜180時間など)は関係がありますか。
別の概念です。精算幅は1か月あたりの稼働時間の下限・上限を定めるもので、契約期間の長さとは独立しています。契約期間が3ヶ月でも、精算は月ごとに行われるのが通常です。
6か月以上の契約だと、自分からは辞めにくくなりますか。
フリーランス法の30日前予告は発注者側の義務なので、受注者が辞める場合の制約ではありません。ただし契約書の中途解約条項は長期契約ほど予告期間が長めに設定される傾向があり、そちらが実務上の制約になります。締結前に解約条項を確認してください。
期間満了後、契約書がないまま稼働を続けるとどうなりますか。
報酬・業務範囲・終了条件の根拠があいまいな状態になり、支払いが滞ったときに交渉材料が乏しくなります。なお条件の明示は契約書に限られず、メールやチャットなど電磁的方法でも足ります。フリーランス法上、取引条件の明示は発注事業者の義務です。形式にこだわらず、条件を記録に残してから稼働してください。
成果完成型の準委任では、契約期間の意味が変わりますか。
報酬の判断軸が変わります。成果完成型も請負ではなく準委任の一種で、違いは報酬の算定方法にあります。履行割合型が稼働時間などの割合で報酬を算定するのに対し、成果完成型は成果の完成に報酬が紐づくため、期間満了よりも成果が達成されたかどうかが支払いの判断材料になります。どちらの型かは契約書の報酬条項で確認してください。
契約期間の変更を途中で申し入れることはできますか。
できます。契約期間の変更は当事者の合意事項なので、双方が合意すれば期間延長も短縮も可能です。ただし一方的な通告による変更は認められません。発注者から一方的に条件変更を通告された場合は、フリーランス法の禁止行為に該当する可能性があります。


