GKEとは|Autopilotの仕組み・料金とEKS・AKSの違い
最終更新日:2026/11/07
GKE(Google Kubernetes Engine)とは、Google CloudがKubernetesのコントロールプレーンを運用するマネージドサービスです。ノードまで任せるAutopilotと、自分でノードプールを持つStandardの2モードがあり、どちらを選ぶかで料金の数え方が変わります。EKS・AKSとの違いまで整理します。
先に結論
GKEはコントロールプレーンの運用をGoogleに任せるサービス。Autopilotはノードまで任せるモード、Standardはノードプールを自分で持つモードです
クラスタ管理手数料は1クラスタあたり1時間0.10ドル。Autopilot・Standardを問わず、クラスタの大きさにも関係なく同額がかかります(執筆時点のGKE の料金。料金は地域・時期で改定されます)
無料枠は請求先アカウントごとに毎月74.40ドル分のクレジット。ゾーンStandardクラスタ1つ、またはAutopilotクラスタ1つの管理手数料に相当します
EKS・AKSとの一番わかりやすい違いはコントロールプレーンの課金とバージョンサポートの長さ。AKSのFree tierだけはクラスタ管理が無料です
案件としてはGoogle Cloud中心の現場、またはデータ・AI基盤と一体で動いている現場で出てきます。公開されている案件情報を見る限りAWS案件と比べて母数は小さく、EKS経験からの横展開で入るケースが現実的です
なお本記事の料金・SLA・サポート期間はいずれも執筆時点(2026年11月)に各社の公式ページで確認した数値です。クラウド3社とも改定が頻繁なため、提案書や見積もりに載せる数値は、本文中にリンクした公式ページで必ず取り直してください。
この記事でわかること
GKEが引き受ける範囲と、利用者側に残る運用作業
AutopilotとStandardの違い、どちらを選ぶかの判断基準
クラスタ管理手数料・無料枠・ノード費用という3層の料金構造
GKE・EKS・AKSの違いを、課金・自動運用モード・サポート期間・SLAの4軸で整理した比較表
フリーランスエンジニアがGKE案件に入るときの、スキルシートの書き方と参入順序
対象は、Dockerとコンテナの基本はひととおり触ったことがあり、これからKubernetesをクラウドで運用する側に回る人です。Kubernetes自体の仕組みから知りたい場合はKubernetesとは?仕組み・Dockerとの違い・フリーランス案件の単価をエンジニア視点で解説を先に読むと、この記事の前提がそろいます。
目次
GKEとは|Google CloudのマネージドKubernetes
GKEのAutopilotモードとStandardモードの違い
GKEの料金|クラスタ管理手数料と無料枠
GKE・EKS・AKSの違い
ケース別|どれを選ぶかの判断
GKE案件でフリーランスエンジニアに求められること
実務で詰まりやすいポイント
GKEを学ぶ順序
まとめ
よくある質問
GKEとは|Google CloudのマネージドKubernetes
結論から言うと、GKEは「Kubernetesのコントロールプレーンを自分で建てなくていい」サービスです。動かす対象はコンテナ化したアプリケーション全般で、実際の現場ではWeb API、マイクロサービス群、定期バッチ、機械学習の学習・推論基盤あたりが載っています。etcdやAPIサーバーの冗長化、証明書の更新、コンポーネントのセキュリティパッチ適用といった、壊れると業務が止まるのに誰もやりたがらない作業をGoogle側が引き受けます。
条件として、引き受けてもらえるのはあくまでクラスタ基盤までです。Deploymentの設計、リソースリクエストの見積もり、監視とアラート、アプリのロールアウト戦略は利用者側に残ります。例外的に、後述のAutopilotモードではノードのサイジングとスケーリングも向こう側に移ります。
GKEが引き受ける範囲と、利用者に残る範囲
領域 | GKEが引き受ける | 利用者に残る |
|---|---|---|
コントロールプレーン | APIサーバー・etcdの運用、冗長化、パッチ | リリースチャンネルの選択 |
ノード | Autopilotでは全面的に管理。Standardでは自動修復・自動アップグレードを任意で有効化 | Standardではマシンタイプ・台数・ノードプール設計 |
ネットワーク | VPCネイティブ構成の基盤提供 | Service・Ingress・NetworkPolicyの設計 |
ワークロード | なし | マニフェスト、リソース設計、Helmチャート管理 |
可観測性 | Cloud Logging・Cloud Monitoringとの既定連携 | SLI/SLOの設計、アラート設計 |
自分で見るべき範囲が「ワークロードとその周辺」に寄るほど、インフラ職というよりプラットフォーム職の仕事に近づきます。この線引きはプラットフォームエンジニアとは|仕事内容・年収・SRE/DevOpsとの違いで扱っている役割分担とほぼ重なります。
「エディション」と「モード」は別の軸
ここは混乱しやすい。GKEにはモード(Autopilot / Standard)という軸と、エディション(Standard / Enterprise)という軸が別々にあります。モードはノードを誰が持つかの話、エディションはマルチクラスタ管理やガバナンス機能が付くかどうかの話です。
「Standardモード」と「Standardエディション」は別物。案件の要件定義書で「GKE Standard」とだけ書かれていたら、どちらの意味かを最初の打ち合わせで確認しておくと、あとで構成が丸ごと変わる事故を避けられます。
ミニFAQ
GKEを使うのにKubernetesの深い知識は要りますか。
Autopilotならノード層の知識は薄くても動かせます。ただしPodが起動しない原因の切り分けには、リソースリクエスト・スケジューリング・Serviceの理解が必要です。マニフェストが読めないまま運用に入るのは厳しいです。
GKEとCloud Runはどちらを選ぶべきですか。
単機能のHTTPサービスを少数動かすだけならCloud Runのほうが運用が軽くなります。複数サービスの依存関係やバッチ、ステートフルな処理を束ねるならGKEです。比較はGCP Cloud Runとは|仕組み・AWS Lambdaとの違い・料金と案件単価で整理しています。
GKEのAutopilotモードとStandardモードの違い
結論は単純で、ノードを自分で持つかどうかです。この一点から課金方式も制約も派生します。
Autopilot:ノードを持たず、Podのリクエストで課金
Autopilotでは、Googleがノードの構成・スケーリング・セキュリティ制約を管理します。公式ドキュメントも、もっとも手間の少ない体験としてAutopilotクラスタを挙げています(GKE Autopilot overview)。
課金は汎用のAutopilot Podについてはポッドベース、つまりPodが要求したCPU・メモリ・一時ストレージの量で決まります。ノードに空きがあっても使っていなければ払わない、という数え方です。
Standard:ノードプールを自分で持つ
Standardはノードプールを自分で作り、マシンタイプも台数も自分で決めます。公式の比較ドキュメントは、Standardについて「Podがリソースを使っているかどうかに関わらずノードの容量に対して支払う」と明記しています(Compare GKE Autopilot and Standard)。
そのかわり自由度は高い。ノード上で特権アクセスを必要とするサードパーティ監視エージェントや、ノード層に踏み込むDaemonSetを入れられるのはStandardです。Autopilotでは、Google Cloudパートナー提供のツールか、ノードへの昇格アクセスを必要としないツールに限られます。
Standardクラスタの中でAutopilotモードを動かす
「どちらか一方を選ぶ」という前提は、今は崩れています。StandardクラスタでもAutopilot ComputeClass(ワークロードに割り当てる計算リソースの種類を指定する仕組み)を使えば、指定した一部のワークロードだけをAutopilotモードで動かせます。ノード層を触る必要があるコンポーネントは自前のノードプールに残し、ステートレスなアプリだけ任せる、といった分け方ができます。
ただしこれは「既存のStandardクラスタを丸ごとAutopilotクラスタに変換する機能ではありません」。クラスタ自体はStandardのままで、該当ワークロードの実行基盤だけがAutopilotモードになる、という理解が正確です。対応バージョンや利用条件が設定されているため、採用を前提に設計する場合はCompare GKE Autopilot and Standardで現行の条件を確認してください。
どちらを選ぶかの判断基準
状況 | 向いているモード | 理由 |
|---|---|---|
少人数チーム、専任インフラ担当がいない | Autopilot | ノードのサイジングとアップグレード計画が不要になる |
GPU・特殊なマシンタイプを細かく指定したい | Standard | マシンタイプの選択肢と制御が広い |
ノード層に入る監視・セキュリティエージェントが必須 | Standard | 特権アクセスを伴うDaemonSetを入れられる |
リクエストが読みづらく、ノードが遊びがち | Autopilot | 使った分だけの課金に寄せられる |
既存のノードプール設計をそのまま移したい | Standard | 構成をほぼ写し取れる |
迷ったらAutopilotから入り、制約に当たった部分だけComputeClassで切り分けるのが、やり直しの少ない順序です。
GKEの料金|クラスタ管理手数料と無料枠
GKEの請求は3層で考えると読み違えません。クラスタ管理手数料/コンピュート費用/周辺サービス費用の3つです。
全クラスタ共通のクラスタ管理手数料
公式料金ページによると、1クラスタあたり1時間0.10ドルの定額手数料が、運用モード・クラスタサイズ・トポロジーに関係なくすべてのGKEクラスタにかかります。課金は1秒単位です。
ここでよくある誤解がひとつ。「Autopilotはコントロールプレーンが無料」と書いている解説記事が今も残っていますが、現行の料金ページはモードを問わず同額としています。料金は改定されるので、見積もりを出す前にGKE の料金の原文を確認してください。本記事の数値も執筆時点(2026年11月)に公式ページで確認したものです。
無料枠は月74.40ドルのクレジット
GKEの無料枠は、請求先アカウントごとに毎月74.40ドルのクレジットという形で提供されます。これはゾーンStandardクラスタ1つ、またはAutopilotクラスタ1つぶんの管理手数料に相当します。
注意点として、無料になるのは管理手数料の部分だけです。ノードのCompute Engine費用、ロードバランサ、永続ディスク、エグレス通信は別途かかります。検証用クラスタを立てっぱなしにして「無料枠のはずなのに請求が来た」という相談は、だいたいここが原因です。
Autopilotのほうが安くなるケース・高くなるケース
Autopilotはリクエスト量での課金なので、ノードの使用率が低い構成では安くなりやすい。逆に、リクエストを実際の使用量より大きく盛っている構成では、その盛った分をそのまま払うことになります。
Standardはノード単位なので、ビンパッキングを詰められるチームほど有利です。ここは「どちらが安いか」ではなく「自分たちがリソースリクエストを正しく見積もれるか」で決まります。見積もりが甘いチームほどAutopilotのほうが結果的に安い、というのはよくある逆転です。
ミニFAQ
クラスタを止めている間も管理手数料はかかりますか。
クラスタが存在する限りかかります。ノードを0台にしても、クラスタ自体を削除しない限り手数料は発生します。検証環境はクラスタごと消すのが確実です。
マルチクラスタ構成にすると手数料は倍になりますか。
クラスタ数ぶんかかります。環境ごと(本番・ステージング・開発)にクラスタを分けると、その数だけ0.10ドル/時が積み上がる計算です。
GKE・EKS・AKSの違い
3サービスとも「マネージドKubernetes」という括りは同じですが、課金の起点とサポート期間の設計が違います。このページだけの整理として、4軸でまとめます。以下はいずれも執筆時点(2026年11月)に各社公式ページで確認した内容で、料金・SLA・サポート期間は改定されます。また料金はリージョンによって異なる場合があります。
比較軸 | GKE | EKS | AKS |
|---|---|---|---|
コントロールプレーン課金 | 1クラスタ1時間0.10ドル(全モード共通)。月74.40ドルの無料クレジットあり | 1クラスタ1時間0.10ドル(標準サポート)/0.60ドル(延長サポート) | Free tierは無料。Standard・Premium tierは従量課金 |
自動運用モード | Autopilot(Standardクラスタ内でも利用可) | EKS Auto Mode(EC2インスタンス料金に上乗せ、1秒単位・最低1分) | AKS Automatic(本番向けの推奨既定。Standard tier前提) |
バージョンサポート | リリースチャンネル制。Extendedチャンネルで標準14か月+約10か月=最長24か月 | 標準サポート14か月+延長サポート12か月=計26か月 | Premium tierで24か月のLTS |
SLA | リージョンクラスタは99.95%(構成により異なる。GKE SLA参照) | 標準コントロールプレーン99.95%/Provisioned Control Plane 99.99% | Free tierは財務保証付きSLAなし。Standard・Premiumは可用性ゾーンありで99.95%、なしで99.9% |
出典は各社の公式ページです(Amazon EKS の料金、EKSのKubernetesバージョンライフサイクル、AKSのFree/Standard/Premium価格レベル)。料金は地域・時期で変わるため、提案書に載せる数値は必ず最新の公式ページで取り直してください。
コントロールプレーンの課金で見ると
AKSのFree tierだけがクラスタ管理無料です。ただし公式ドキュメントはFree tierを開発・テスト・評価用と位置づけ、10ノード未満のクラスタを推奨しています。本番でSLAが要るならStandard tier以上になるので、「AKSはタダ」で判断すると見積もりがずれます。
自動運用モードで見ると
GKE Autopilot、EKS Auto Mode、AKS Automatic。いずれも「ノード層の判断を減らす」方向の機能ですが、課金の数え方も、任せられる範囲も、適用できる条件も三者三様です。名前が似ているからといって同じものとして見積もると、あとでコスト試算が崩れます。
GKE Autopilot: モードとしてクラスタ単位(またはComputeClass指定のワークロード単位)で選ぶ。課金はPodが要求したリソース量が起点
EKS Auto Mode: EC2インスタンス料金に対する上乗せ課金。1秒単位・最低1分から計算される。ノードのインスタンス費用自体は別途かかる
AKS Automatic: 本番向けの推奨既定という位置づけで、Standard tier以上が前提。最大5,000ノード、Podのレディネスについても対象操作の99.9%が5分以内に完了するというSLA項目を持つ
いずれも対応リージョン・対応バージョン・制約事項が個別に定められており、提供状況も更新されます。設計に組み込む前に各社の公式ドキュメントで現行の条件を確認してください。EKSのノード自動スケーリング周りはKarpenterとは|EKSのノード自動スケーリングの仕組みと導入手順も併せて読むと、どこまでが標準機能でどこからがアドオンかの区別がつきます。
バージョンサポート期間で見ると
ここは案件の計画に直結します。Kubernetesのマイナーバージョンは上流でおおむね4か月に1回出ます。各社の猶予は、EKSが14か月+12か月で計26か月、AKSのPremium tierが24か月のLTS、GKEはExtendedチャンネルで標準14か月に約10か月を足して最長24か月です。
EKSで注意したいのは、延長サポートが既定で有効であること。何もしなければ14か月を過ぎた時点で時間単価が0.10ドルから0.60ドルに上がります。6倍です。さらに延長サポートも切れると、コントロールプレーンは自動でアップグレードされます。アップグレード案件が定期的に切り出されるのは、この期限設計があるからです。
ネットワーキングと周辺エコシステム
3サービスともVPC統合型のネットワーキングを既定にしていますが、IPアドレスの消費の仕方が違います。EKSのVPC CNIは各PodにVPCのIPを割り当てるため、サブネット設計を誤るとIPが枯渇します。GKEはエイリアスIP範囲を使うVPCネイティブ構成が既定です。
その上に載るエコシステムはどのクラウドでもほぼ共通で、Helmとは|Kubernetesのチャート作成と運用・Helm 4の変更点、Istioとは|サービスメッシュの仕組み・Kubernetes運用での役割を解説、Kubernetes Operatorとは|CRDの仕組みと自作の判断基準あたりは3サービス共通で効きます。つまりKubernetes本体とエコシステムの経験はクラウドをまたいで持ち運べるということです。
ケース別|どれを選ぶかの判断
すでにAWS中心で動いている
EKSが素直です。IAM・VPC・ALB・CloudWatchの設計をそのまま延長でき、学習コストが一番低い。コンテナをKubernetesで動かす必然性が薄いなら、ECS/Fargateのほうが運用は軽くなります。判断材料はAWS ECS・Fargateとは|仕組み・EKSとの違い・案件単価を解説にまとめています。
Google Cloudのデータ・AI基盤と一体で動かす
GKEが有利です。BigQueryやVertex AIと同じプロジェクト・同じIAMの中で完結し、ネットワーク越えの設計が減ります。Google Cloud全体の構成はGCP(Google Cloud)とは|主要サービス・AWSとの違い・無料枠・案件単価【2026年】が入口になります。
Microsoft 365・Entra ID中心の社内システム
AKSが収まりがいい。認証をEntra IDに寄せている組織では、クラスタのRBACを既存のグループ設計に載せられます。Azure全体像はMicrosoft Azureとは|主要サービス・AWS/GCPとの違い・案件単価を参照してください。
マルチクラウド前提で設計する
どれを主にしても、Kubernetesのマニフェストとエコシステムは共通化できます。差が出るのはIAM・ネットワーク・ロードバランサ・ログ基盤の接続部分です。ここを抽象化しすぎると運用が複雑になるので、共通化するのはワークロード定義まで、インフラ接続部分は各クラウドのやり方に寄せるのが扱いやすい落としどころです。
GKE案件でフリーランスエンジニアに求められること
案件として出てくる形
Google Cloud案件の母数は、フリーランス向けエージェントが公開している案件情報を見る限りAWS案件より小さい傾向があります(非公開案件は含まないため、市場全体の比率を示すものではありません)。そのぶんGKE案件は、Google Cloudをすでに採用している現場か、データ基盤・機械学習基盤と一体で動いている現場に偏りやすい。単独で「GKEだけ」の募集より、Google Cloud全般の構築・運用の一部としてGKEが出てくるケースのほうが目につきます。
どのクラウドから参入するかの順序はクラウド案件の参入順序|AWS・Azure・GCPどれから取るかの判断軸で整理しています。案件の比較軸そのものを整理したい場合は案件の選び方|フリーランスエンジニアが単価・稼働・スキルで決める優先順位が使えます。
単価の考え方
Kubernetes運用の単価は、クラスタを建てられるかより壊れたときに切り分けられるかで変わります。マニフェストを書く作業と、本番障害時にコントロールプレーンのメトリクスから原因を絞る作業では、求められる経験が別物だからです。
レンジの目安は職種側の記事に寄せています。SREフリーランスの単価相場|DevOps案件の月額レンジと参入目安、単価を体系的に上げる考え方は【2026年最新版】フリーランスエンジニアの単価相場と単価の上げ方とは?で整理しています。自分の経験でどのくらいを狙えるかは、無料のフリーランスエンジニア単価診断で市場単価の目安を確認できます。実際の募集条件はKubernetes案件の一覧から見られます。
スキルシートの書き方で差がつく点
Autopilotでの運用経験は、そのまま書くと「ノード運用をやっていない人」と読まれることがあります。実務で見られているのは、どの規模のクラスタを、どのSLOで、何件のインシデントを経て運用したかです。
クラスタ数・ノード数・Pod数の規模感
アップグレードを何回、どの方式(サージ/Blue-Green)で回したか
コスト削減をいくら、どの手段(リクエスト見直し/Spot/ビンパッキング)で達成したか
障害対応の件数と、代表的な切り分けの中身
数字が1つも入っていないスキルシートは、クラウド案件では通りにくい。書き方の型はインフラエンジニアのスキルシートの書き方|構築・運用実績の数値化と職種別テンプレにまとめています。
EKS経験からGKEに移るときのギャップ
Kubernetes本体の知識は9割そのまま使えます。詰まるのは周辺です。IAMの考え方(Workload Identityとサービスアカウントの紐付け)、ロードバランサの挙動、ログ基盤のクエリ言語。この3つは最初の1〜2週間で確実に時間を取られるので、参画前に手を動かしておくと立ち上がりが変わります。
実務で詰まりやすいポイント
Autopilotの制約に後から気づく
ノードに特権アクセスが必要な監視エージェントやセキュリティエージェントは、Autopilotでは入らないことがあります。監視ツールの選定が先に決まっている現場では、ツール要件を先に確認してからモードを決める順序にしないと、クラスタを作り直すことになります。
アップグレードを「あとで」にして期限に追われる
各社とも期限が決まっている以上、アップグレードは必ず来ます。リリースチャンネルの既定はRegularで、公式も多くの利用者に推奨しています。安定性を優先するならStable、長く同じマイナーバージョンに留まりたいならExtendedという選び分けです(GKEのリリースチャンネル)。
契約期間が3か月単位の案件では、自分の参画期間中にバージョン期限が来るかどうかを最初に確認しておくと、スコープの認識ズレが減ります。
コストがノード費用ではなく周辺で膨らむ
クラスタ管理手数料とノード費用に目が行きがちですが、実際に効いてくるのはロードバランサの数、ログの取り込み量、リージョン間の通信です。ログは放っておくと増え続けるので、保持期間とフィルタを最初に決めておくのが効きます。
ミニFAQ
Autopilotでノードのログは見られますか。
ノードのシステムログはCloud Loggingに流れるので参照できます。ただしノードにSSHして直接調べる前提の手順書は使えません。切り分けの手順をログベースに組み替える必要があります。
GKEを学ぶ順序
Kubernetesの基本(Pod・Deployment・Service・ConfigMap)をローカルのkind等で動かす。ここを飛ばすとクラウド側の挙動が読めません
GKE Autopilotでクラスタを1つ作る。無料クレジットの範囲内で、アプリを1つ外部公開するところまで通す
Helmでのデプロイに置き換える。マニフェストの直書きから、環境差分を値で切る形に移す
監視とアラートを入れる。SLIを1つ決めて、閾値を割ったら通知が飛ぶところまで作る
アップグレードを1回経験する。リリースチャンネルを切り替えて、ワークロードが落ちないことを確認する
ここまでを一周するのに必要な時間は、前提知識によって大きく変わります。Kubernetesの基本を一度やったことがあり、クラウドの基本操作に慣れている人であれば、数十時間規模の集中した学習で一周できるというのが筆者の体感です。Kubernetes自体が初めての場合はステップ1だけで同じくらいかかるので、期間の見積もりは自分の前提に合わせて調整してください。資格で裏付けを足すなら、Kubernetes側はCKA資格とは|Kubernetes認定の合格ライン・費用・出題範囲と勉強法、Google Cloud側はGoogle Cloud認定資格おすすめ一覧|難易度・受験料・キャリア戦略が対応します。
まとめ
GKEは、クラスタ管理手数料が1クラスタ1時間0.10ドルで全モード共通、毎月74.40ドル分の無料クレジットがあるという料金構造を押さえれば、見積もりの骨格はつかめます。モード選択はノードを自分で持つかどうかの一点で決まります。
GKEはコントロールプレーンの運用を引き受けるサービス。ワークロード設計と監視は利用者に残る
Autopilotはノードまで任せてPodのリクエストで課金、Standardはノードプール単位で課金
StandardクラスタでもAutopilot ComputeClassを使えば、ワークロード単位で使い分けられる
EKSは標準14か月+延長12か月で計26か月、延長期間は時間単価が6倍になる。AKSはPremium tierで24か月のLTS、GKEはExtendedチャンネルで最長24か月
AKSのFree tierだけクラスタ管理が無料だが、公式は非本番向けと位置づけている
Kubernetes本体とHelm・Istio等のエコシステム経験はクラウドをまたいで持ち運べる
次にやることは、Autopilotでクラスタを1つ立てて、アプリを外部公開するところまで通すことです。そのうえで自分の経験がどの単価帯に当たるかを知りたい場合は、フリーランスエンジニア単価診断で目安を確認してみてください。
参照した一次情報は以下のとおりです。
よくある質問
GKEのクラスタ管理手数料は、クラスタを1つも使っていない月も発生しますか
クラスタが存在していれば発生します。ノードを0台にしても、クラスタリソース自体が残っている限り1時間あたり0.10ドルが積み上がります。使わない期間はクラスタごと削除するのが確実です。
無料枠の74.40ドルは、クラスタを2つ作ると半分ずつ充当されますか
クレジットは請求先アカウント単位で付与され、管理手数料に充当されます。2つ作れば手数料は2クラスタぶん発生するため、超過分は請求されます。無料枠で収まるのは実質1クラスタぶんと考えてください。
AutopilotとStandardは後から切り替えられますか
モードはクラスタ作成時に決まるもので、既存クラスタのモードを入れ替える操作ではありません。移行する場合は新しいクラスタを作ってワークロードを移すのが基本です。ただしStandardクラスタ内でAutopilot ComputeClassを使えば、一部のワークロードだけAutopilotモードで動かせます。
EKSの延長サポート料金は自動でかかってしまいますか
延長サポートは既定で有効です。標準サポートの14か月を過ぎると、何もしなければ時間単価が0.10ドルから0.60ドルに切り替わります。無効化もできますが、その場合は標準サポート終了時にクラスタが自動アップグレードされます。どちらを選ぶかは、停止できる時間帯があるかで決めることになります。
AKSのFree tierは本番で使っても問題ありませんか
公式ドキュメントは開発・テスト・評価・非本番ワークロード向けと位置づけ、10ノード未満のクラスタを推奨しています。財務的保証のある稼働率SLAも付きません。本番でSLAが必要ならStandard tier以上を選ぶことになります。
GKEとEKSで、障害対応の進め方は変わりますか
Kubernetesレイヤの切り分けはほぼ同じです。変わるのはその外側で、ロードバランサの挙動、IAMの権限不足の見え方、ログの検索方法が各クラウド固有になります。移った直後はここで時間を取られるので、ログのクエリだけでも先に慣れておくと差が出ます。
Kubernetesを使わずにコンテナを動かす選択肢はありますか
あります。単発のHTTPサービスやジョブならCloud Run、AWSならECS/Fargateが候補です。Kubernetesは複数サービスの依存関係・スケジューリング・拡張性が必要になってから効いてきます。小さい構成で入れると運用コストのほうが勝ちます。
GKE案件に入るのに、Google Cloudの認定資格は必須ですか
必須として書かれている募集は多くありません。選考で見られるのは、クラスタ規模・運用期間・障害対応の中身です。ただし実務経験がまだ薄い段階では、資格が書類通過の補強になるケースはあります。
Autopilotしか経験がない場合、EKS案件に応募できますか
応募は可能です。マニフェスト・Helm・監視設計の経験は共通で評価されます。ただしノードプールのサイジングやAMI更新の経験は問われるので、その部分は「未経験だが設計の考え方は理解している」と正直に切り分けて伝えたほうが、参画後の齟齬が出ません。
マルチクラスタ構成は、どのくらいの規模から検討すべきですか
環境分離(本番・ステージング)が目的なら最初から分けるのが普通です。ネームスペースだけで分ける方式はコスト面では有利ですが、権限分離とリソース競合の管理が重くなります。チームが複数に分かれてきたタイミングが、クラスタ分割を検討する実務的な目安です。
GKEのバージョンアップグレードは、どのくらいの頻度で回す想定ですか
上流のマイナーバージョンがおおむね4か月に1回出ることを踏まえると、年2〜3回は何らかのアップグレード作業が発生する想定になります。Extendedチャンネルを選んでも最長24か月なので、「2年に1回は必ず上げる」という計画は必要です。
