予定納税とは|フリーランスエンジニアの対象基準・計算・減額申請
最終更新日:2026/06/14
予定納税とは、前年分を基準に、当年分の申告所得税及び復興特別所得税の一部をあらかじめ納付する制度です。前年分の申告所得税及び復興特別所得税の予定納税基準額が15万円以上のフリーランスエンジニアが対象になります。通知書の届く時期、納付額の計算、業績が落ちたときの減額申請までを、令和8年分(2026年分)の通知に間に合うように整理しました。
先に結論
予定納税は、前年の所得税額(予定納税基準額)が15万円以上の人が対象になります
通知書は税務署から6月中旬までに届きます。対象でなければ通知は来ません
納付額は予定納税基準額の3分の1ずつを第1期・第2期に納めます
業績が落ちて納め過ぎになりそうなときは、減額申請で納付額を減らせます
期日に遅れると延滞税がかかります。差額は翌年の確定申告で精算されます
この記事でわかること
予定納税の制度概要と、フリーランスエンジニアが対象になるかの判定基準
第1期・第2期の納付額の計算式と、令和8年分の納付スケジュール
業績悪化・廃業・法人成りなど、エンジニア特有のケースでの取扱い
減額申請の提出時期・必要書類・記載のポイント
納付忘れや誤りで失敗しないためのチェック項目
目次
予定納税とは|制度の概要
対象になる人の判定基準
予定納税額の計算方法
納付方法と納期
減額申請のやり方
フリーランスエンジニア特有の論点
よくある失敗と対策
実践チェックリスト
まとめ
よくある質問
予定納税とは|制度の概要
予定納税とは、前年分を基準に、当年分の申告所得税及び復興特別所得税の一部を当年中に前払いする制度です。確定申告のときに納税額が一気に膨らむことを避ける目的で、税務署側が分割納付の仕組みを設けています。
対象になる人
予定納税の対象は「前年分の予定納税基準額が15万円以上」の個人です。給与所得者でも、副業や事業の所得が大きければ対象になることがあります。
判定する基準額は前年分の所得税額そのものではなく、一定の所得や税額控除を除いた額です。詳細は国税庁の説明ページにあります。
仕組みと納付スケジュール
予定納税基準額の3分の1ずつを、第1期・第2期に分けて納付します。残りの3分の1は、翌年2月16日〜3月15日の確定申告で精算します。
区分 | 納期 | 納付額 |
|---|---|---|
第1期分 | 原則 7月1日〜7月31日 | 予定納税基準額 × 1/3 |
第2期分 | 原則 11月1日〜11月30日 | 予定納税基準額 × 1/3 |
確定申告 | 翌年2月16日〜3月15日 | 残額または還付 |
納期最終日が土日祝にあたる年は翌営業日にずれます。年ごとの正確な納期は税務署からの通知書または国税庁の公式ページで必ず確認してください。
通知書はいつ届くか
予定納税の通知書は、原則として6月15日までに税務署から送付されます。e-Taxを利用していれば、書面ではなく電子データで通知される場合もあります。
通常は通知書が届かなければ予定納税の対象ではありません。ただし、住所変更や電子通知設定等で未確認の可能性もあるため、不安があれば所轄税務署やe-Taxで確認してください。
対象になる人の判定基準
ここではフリーランスエンジニアが「自分は対象になるか」を判断しやすいよう、所得水準の目安を整理します。
予定納税基準額の考え方
予定納税基準額は、前年分の申告所得税及び復興特別所得税をベースに、山林所得・退職所得など一時的な所得や、源泉徴収税額・一定の税額控除などを調整して算出する額です。前年の納税額そのものと一致しないことがあります。
ざっくり言えば「経常的な事業所得・給与所得などにかかった前年の所得税額に近い水準」と理解しておけば、初年度の判定で大きく外れることは少なくなります。
所得水準の目安
予定納税基準額が15万円になる所得水準は、控除の組み合わせで変わるため一律には決められません。あくまで参考イメージとして、青色申告(65万円控除)を適用したフリーランスエンジニア(独身・扶養なし)の場合、おおむね事業所得が年600〜700万円台になると基準額15万円のラインに入ってくることが多いです。
ただし、ふるさと納税・iDeCo・小規模企業共済等の所得控除をどれだけ使っているかで、同じ売上でも基準額が大きく変わります。具体的な税額の試算はフリーランスエンジニアの税金シミュレーションも参考にしてください。
副業エンジニアは対象になる?
会社員の副業として案件を受けているケースでは、本業の給与から源泉徴収されている所得税は予定納税基準額の計算で控除されます。給与に対する源泉徴収税額が大きい人は、副業所得があっても予定納税の対象にならない場合があります。
副業の確定申告まわりは副業エンジニアの確定申告で詳しく解説しています。
予定納税額の計算方法
第1期・第2期で納める金額は、通知書に金額が明記されています。自分で計算する必要はありませんが、確認のために計算式を押さえておきます。
計算式
第1期分 = 予定納税基準額 × 1/3
第2期分 = 予定納税基準額 × 1/3
第3期分(確定申告で精算)= 残額
計算例
前年分の予定納税基準額が30万円のフリーランスエンジニアの場合は次のようになります。
区分 | 金額 |
|---|---|
第1期分 | 10万円 |
第2期分 | 10万円 |
確定申告で精算 | 残額(年税額-20万円) |
確定申告で計算した年税額が予定納税の合計を下回れば、差額は還付されます。上回れば追加で納付します。
ミニFAQ
Q. 復興特別所得税は予定納税の対象?
A. 予定納税基準額には所得税と復興特別所得税の合計が含まれます。通知書の金額をそのまま納付すれば、両者まとめて納めたことになります。
Q. 消費税の予定納税(中間納付)と同じ?
A. 別の制度です。消費税の中間納付は、前課税期間の消費税額に応じて回数・金額が決まります。詳細はフリーランスエンジニアの消費税を参照してください。
納付方法と納期
納付には複数の方法があります。納付忘れを防ぐためにも、自分に合った方法を1つに決めておくと運用が楽になります。
振替納税
口座振替で自動的に納付される方法です。事前に「預貯金口座振替依頼書」を税務署または金融機関に提出しておけば、納期日に指定口座から自動で引き落とされます。
紙の納付書を持ち歩く必要がなく、コンビニや銀行に行く手間も省けます。フリーランスエンジニアには最も実務上ハードルが低い方法と言えます。
e-Taxによるダイレクト納付
e-Taxを使えば、納付情報の登録から口座引き落としまで電子で完結します。確定申告をe-Taxで行っているなら、予定納税も同じ環境で処理できます。
e-Taxの操作手順はe-Taxで確定申告するやり方で解説しています。
クレジットカード・スマホアプリ納付
国税クレジットカードお支払サイトを使えば、カード決済も可能です。決済手数料がかかる点に注意してください。スマホアプリ納付(Pay-easy系・QRコード決済系)にも対応しており、上限額の範囲内なら手数料無料で利用できます。
納期に遅れたらどうなるか
法定納期限を1日でも過ぎると、延滞税の計算対象になります。延滞税は原則として、納期限の翌日から納付日までの日数に応じてかかります。
延滞税の計算と過去の納付忘れへの対処は期限後申告とは?で扱っています。
減額申請のやり方
業績が落ちて「前年並みの所得税を払うほどの利益は出ない」と見込まれる場合は、減額申請を提出することで予定納税額を減らせます。
減額申請が使えるケース
廃業・休業した
失業した(給与所得者)
災害や盗難で被害を受けた
多額の医療費を支払う見込みになった
売上の落ち込みで、当年分の所得金額が前年を大きく下回ると見込まれる
フリーランスエンジニアでよくあるのは「主要クライアントとの契約が終了し、年後半の売上が大きく落ちる」ケースや「法人成りで個人事業の売上が途中で止まる」ケースです。
申請期間
減額申請には2つのタイミングがあります。
申請区分 | 申請期間 | 対象 |
|---|---|---|
第1期分・第2期分の減額申請 | 7月15日まで | 第1期・第2期の両方 |
第2期分のみの減額申請 | 11月15日まで | 第2期のみ |
通知書を見て「この金額は払いすぎ」と感じたら、まず7月15日の期限を意識してください。第1期分の納付期限と申請期限が近接しているため、対応が遅れがちです。
必要書類と提出先
提出書類は「予定納税額の減額申請書」で、国税庁ホームページからダウンロードできます。確定申告書の見積りに使った収支内訳の根拠資料(試算表・売掛残高・契約終了の通知等)を添付するとスムーズです。
提出先は所轄税務署で、書面持参・郵送・e-Taxのいずれでも可能です。
還付の流れ
第1期分をすでに納付したあとに減額申請が認められた場合、納め過ぎになった分は還付されます。還付時期は申請時期や税務署の処理状況で変動するため、具体的な入金時期は個別に確認が必要です。
フリーランスエンジニア特有の論点
ここからは、エンジニアの実務でよく当たる判断ポイントをケース別に整理します。
開業初年度は対象になる?
開業1年目は、前年分の所得税額が基準を満たさないため、原則として予定納税の対象にはなりません。前年分に予定納税基準額を満たす所得がなければ、開業1年目は通知書が届かないのが通常です。
開業初年度の確定申告全般の判断は開業1年目の確定申告を参照してください。
法人成りした年の取扱い
個人事業を途中で廃業して法人成りした年は、個人としての事業所得は数か月分しか発生しません。それでも通知書は前年分の所得税額に基づいて届くため、減額申請を出しておくのが現実的です。
法人成り後は法人の予定納税(中間申告)が別途発生します。個人と法人の納税スケジュールが二重で走るため、納期表を作って管理しておくと混乱しません。
業績変動が大きいエンジニアのケース
スポット契約中心で年単位の売上ブレが大きいエンジニアは、予定納税の金額が「実態より重い」と感じやすい立場です。年初に大型案件が決まっていない年は、第1期の納付前に年間見込みを試算し、必要なら減額申請を検討します。
逆に、前年が小さかった人が当年に大幅増収となっても、予定納税は前年ベースなので当年の負担は前年並みに収まります。その分、翌年3月の確定申告で一気に追加納付が来るため、納税資金を別口座に分けて積み立てておくと安全です。
副業エンジニアが本業を辞めて独立した年
会社員時代の源泉徴収で所得税を支払っていた人が、年の途中で独立した場合、前年は給与所得が中心です。予定納税基準額の計算で給与の源泉徴収税額は控除されるため、前年の副業所得が大きくなかった場合は、独立1年目に予定納税の通知が来ないことが多いです。
海外在住・非居住者になった場合
年の途中で出国し非居住者になった場合、出国時までの所得をもとに精算する「準確定申告」が必要になります。出国後の予定納税の扱いは個別判断になるため、税務署または税理士に相談してください。
よくある失敗と対策
実務でつまずきやすいパターンを3つ挙げます。
納付忘れによる延滞税
予定納税の納期は確定申告と違って世の中で大きく告知されないため、振替納税にしていない人ほど忘れがちです。振替納税登録、または納付期限のスマホリマインダー設定を強く推奨します。
減額申請の期限切れ
7月15日の期限を過ぎてから「業績が落ちた」と気づき、第1期の減額申請が間に合わないケースは少なくありません。6月に通知書が届いたタイミングで、年間見込みを必ず一度試算してください。
予定納税分を別の用途で使ってしまう
通知書を見て「7月までに払うお金がない」と気づくフリーランスエンジニアは珍しくありません。前年の確定申告が終わった3月時点で、予定納税分を別口座に分けて確保しておく運用が安全です。月次の売上から納税用に積み立てる仕組みを作ると、納期前に慌てずに済みます。
実践チェックリスト
予定納税まわりで最低限押さえておく項目を一覧化しました。
前年分の所得税額が予定納税基準額15万円以上かを確認した
6月中旬に税務署からの通知書(または電子通知)を受け取った
第1期・第2期の納付方法を決めた(振替納税・ダイレクト納付・カード等)
振替納税の場合、口座残高を納期前に確認した
業績が落ちている年は、減額申請の必要性を試算した
減額申請の期限(7月15日・11月15日)をカレンダーに登録した
確定申告で精算する残額の納税資金を別口座で確保している
まとめ
予定納税は前年分の所得税額をもとに当年分の一部を前払いする制度で、15万円のラインを超えるフリーランスエンジニアが対象です。通知書が届いたらまず金額と納期を確認し、業績悪化が見えているなら7月15日までに減額申請を検討します。
押さえるポイントを最後に整理します。
対象は前年分の予定納税基準額15万円以上の人
通知書は6月中旬までに送付。届かなければ対象外
第1期・第2期に基準額の1/3ずつ、残りは翌年3月の確定申告で精算
業績が落ちた年は減額申請(7月15日まで/11月15日まで)を活用
納付方法は振替納税が運用面で最もラクで、忘れ防止にも有効
予定納税は単独で完結する論点ではなく、確定申告・経費判断・節税対策と一連で押さえる方が実務で迷いません。あわせて以下の記事も参考にしてください。
参照元
なお、本記事は2026年6月時点の制度に基づいて執筆しています。個別の税務判断は所轄税務署または税理士にご確認ください。
よくある質問
Q1. 予定納税を払わないとどうなる?
法定納期限を過ぎて納付しないと、延滞税が日割りで加算されます。督促状が届いたうえで放置すると、最終的には差押えの対象になります。資金繰り上どうしても払えない見込みなら、税務署に早めに相談して納税の猶予制度を検討してください。
Q2. 通知書が届かなかった。納めなくてよい?
通知書が届かない年は予定納税の対象外なので、自主的に納付する必要はありません。引っ越し直後で住所変更が反映されていない場合は税務署に確認してください。
Q3. 第1期分を払い忘れた。第2期と合算で払える?
第1期分を払い忘れた場合でも、第1期は第1期、第2期は第2期で別々に納付します。延滞税は第1期分の納期限の翌日から発生する点に注意してください。
Q4. 減額申請は何度でも出せる?
第1期・第2期両方の減額申請は7月15日まで、第2期分のみの減額申請は11月15日までです。同じ期分について同年中に複数回出すことは通常ありません。
Q5. 減額申請が認められないことはある?
提出した見積りに合理性がない、根拠資料が不十分などの理由で申請が認められないケースはあります。試算表や契約終了通知などの裏付け資料を添付し、減収の理由を明確に書くのが通り方の基本です。
Q6. 予定納税分は経費になる?
なりません。予定納税は所得税の前払いであり、所得税自体は事業の必要経費に算入できません。仕訳は事業主貸として処理します。経費の判断全般はフリーランスエンジニアが経費にできるもの一覧を参照してください。
Q7. 予定納税分が多すぎた。還付はある?
確定申告で計算した年税額より予定納税の合計が多ければ、差額は還付されます。e-Tax経由の還付は比較的早い傾向ですが、入金時期は申告方法や混雑状況で変動します。
Q8. 個人事業税にも予定納税のような仕組みはある?
所得税の予定納税とは別制度ですが、個人事業税は通常、都道府県から送付される納付書で年2回(おおむね8月・11月)に分けて納めます。詳細は個人事業税はかかる?を参照してください。
Q9. 消費税の中間納付と予定納税は別?
別です。所得税の予定納税は前年の所得税額をもとに、消費税の中間納付は前課税期間の消費税額をもとに、それぞれ独立して計算されます。消費税の中間納付はフリーランスエンジニアの消費税で解説しています。
Q10. 廃業した年の予定納税はどうする?
廃業した年でも、通知書が届けば原則として納付義務があります。ただし当年分の所得が大きく減る見込みなら、減額申請で大幅に減らせるケースが一般的です。
Q11. 振替納税の口座を変更したい
「預貯金口座振替依頼書」を新しい口座の金融機関または税務署に提出します。納期が近い時期に変更すると次回の引き落としに間に合わないことがあるため、早めに手続きしてください。
Q12. 予定納税基準額はどこで確認できる?
税務署から届く通知書に金額が記載されています。事前に試算したい場合は、前年の確定申告書を手元に置き、国税庁のNo.2040 予定納税を参考にしてください。

