開業1年目の確定申告|いくらから必要か・提出書類と令和8年分の変更点
最終更新日:2026/10/09
開業1年目の確定申告とは、開業日から12月31日までの事業所得を、翌年2月16日〜3月15日に申告・納税する手続きです。申告が必要かは売上でなく所得で決まり、令和8年分は基礎控除が所得に応じて最大104万円に上がりました。開業届の期限変更と、売上規模別の提出書類も整理します。
先に結論
1年目の申告対象は「開業日〜12月31日」の所得。年の途中で開業しても12月で区切り、2026年開業なら2027年2月16日〜3月15日に令和8年分として申告する
申告が必要かどうかは売上ではなく所得と控除で判定する。令和8年分の基礎控除は、合計所得489万円以下なら104万円(2026年12月1日施行)。事業所得だけで合計所得が104万円以下なら、基礎控除の範囲内に収まり所得税がかからないケースが多い
開業届は2026年1月以後の開業から「確定申告期限まで」に延びた。一方、青色申告承認申請書は「開業から2か月以内」のまま。開業届を後回しにすると、青色申告の期限だけ先に過ぎる
1年目の課税売上高が1,000万円を超えると翌々年(3年目)から消費税の課税事業者。1年目の1〜6月だけで1,000万円を超えた場合は、2年目から課税事業者になり得る
青色申告特別控除は令和8年分まで最大65万円。令和9年分(2年目)からは条件を満たすと75万円の選択肢が加わる
この記事でわかること
開業1年目に申告が必要かどうかの判定軸と、令和8年分の基礎控除の早見表
売上規模別(〜100万/100〜500万/500〜1,000万/1,000万超)の判断と提出書類
開業届と青色申告承認申請書の期限が「ずれた」ことへの対処
年の途中で開業した場合(給与・退職金・開業費)の論点
1年目に陥りやすい失敗と、時系列のチェックリスト
目次
開業1年目の確定申告の基本ルール
令和8年分で変わった3つのこと
申告が必要かどうかの判定
売上規模別の判断フロー
売上100万円以下のケース
売上100〜500万円のケース
売上500〜1,000万円のケース
売上1,000万円超のケース
開業1年目に時期ごとに必要な主な書類
年の途中に開業した場合の注意点
開業1年目によくある失敗
1年目の確定申告 実践チェックリスト
まとめ
よくある質問
開業1年目の確定申告の基本ルール
開業1年目の確定申告は、開業日から12月31日までの事業所得を翌年に申告するのが原則です。途中開業でも、暦年(1月1日〜12月31日)で区切る点は変わりません。
対象読者は、2026年に独立した、またはこれから独立するフリーランスエンジニアです。会社員時代の給与がある年に開業した人も含みます。
2026年開業なら「令和8年分」を2027年に申告する
本記事執筆時点(2026年10月)で次に来る申告シーズンは2027年2〜3月で、対象は令和8年分(2026年1月1日〜12月31日)の所得です。2026年に開業した人は、2027年2月16日〜3月15日に令和8年分の確定申告を行います。
公式の案内は国税庁の確定申告特集ページで確認できます。
申告期限は原則3月15日(土日祝なら翌日)
所得税の申告期限は原則として翌年3月15日です。3月15日が土曜・日曜・祝日にあたる年は、翌平日にずれます。令和8年分の期限は2027年3月15日(月)です。
納税も同じ日が期限です。振替納税を選ぶと引落しは4月中旬になりますが、現金の準備は申告と並行して進めます。e-Taxなら期限当日まで電子提出できます(メンテナンス時間を除く)。
年の途中開業でも12月で締める
「8月に開業したから来年8月までが1年目?」と誤解しやすいのですが、所得税は暦年単位です。8月開業なら、その年の8月〜12月の所得が1年目の申告対象です。翌年1月からは2年目に入ります。
開業の手続き全般はフリーランスエンジニアのための開業届ガイドで詳しく解説しています。
ミニFAQ:開業日と申告期間
Q. 開業届を出していなくても申告は必要ですか?
A. 開業届の有無と確定申告の要否は別問題です。所得が控除を上回り税額が出るなら、開業届が未提出でも申告は必要です。
Q. 開業前の準備期間に使った費用も1年目に入れていいですか?
A. 事業のために直接必要だった支出は「開業費」として繰延資産に計上できることがあります。償却のタイミングを任意で選べるため、利益が出た年に経費化する使い方ができます。詳しくは後半の「開業前経費(開業費)の整理」で扱います。
令和8年分で変わった3つのこと
2026年に開業した人は、ちょうど制度が動いた年に1年目を迎えます。古い解説記事の数字をそのまま使わないよう、変更点を先に押さえます。
1. 基礎控除が最大104万円に(令和8年分・令和9年分)
令和8年度税制改正で、所得税の基礎控除が引き上げられました。令和8年分の規定は2026年12月1日に施行され、2027年に行う令和8年分の確定申告から反映されます。
合計所得金額 | 令和7年分 | 令和8年分・令和9年分 |
|---|---|---|
132万円以下 | 95万円 | 104万円 |
132万円超〜336万円以下 | 88万円 | 104万円 |
336万円超〜489万円以下 | 68万円 | 104万円 |
489万円超〜655万円以下 | 63万円 | 67万円 |
655万円超〜2,350万円以下 | 58万円 | 62万円 |
2,350万円超〜2,400万円以下 | 48万円 | 48万円 |
出典は国税庁のNo.1199 基礎控除(令和8年4月1日現在法令等)です。2,400万円超はさらに段階的に減ります。令和10年分以後は、132万円以下が99万円、132万円超〜2,350万円以下が62万円になる予定です。
住民税の基礎控除は43万円のままで、所得税とは連動していません。所得税がゼロでも住民税はかかる、という逆転が起きやすいのはこのためです。
2. 開業届の期限が「確定申告期限まで」に
2026年1月1日以後に開業した場合、開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)の提出期限は、開業した年分の確定申告期限までになりました。2026年6月開業なら2027年3月15日です。2025年12月31日までの開業は、従来どおり事業開始から1か月以内です。
手続きの正式な案内は国税庁の個人事業の開業届出・廃業届出等手続にあります。
3. 青色申告承認申請書の期限は変わっていない
ここが最大の落とし穴です。青色申告承認申請書の期限は「3月15日まで(1月16日以後の開業は開業日から2か月以内)」のままです(国税庁所得税の青色申告承認申請手続)。
書類 | 2026年1月以後の開業の期限 | 例:2026年6月1日開業 |
|---|---|---|
開業届 | 開業した年分の確定申告期限まで | 2027年3月15日 |
青色申告承認申請書 | 開業日から2か月以内(1月15日以前の開業は3月15日まで) | 2026年8月1日 |
「開業届は年明けでいいらしい」と承認申請書まで後回しにすると、1年目は白色申告で確定します。2つは同じ日に出すのが、もっとも取りこぼしのない運用です。
申告が必要かどうかの判定
申告が必要かどうかは、売上ではなく所得と控除で決まります。
入口の判定:所得と控除を比べる
事業所得(売上から必要経費を引いた額)と、給与など他の所得を合計します。そこから基礎控除・社会保険料控除などの所得控除を差し引いて、所得税額が出る場合は確定申告が原則必要です。
事業所得だけで、所得控除が基礎控除だけという単純なケースなら、令和8年分は所得104万円以下で所得税はかかりません。実際には国民年金・国民健康保険の社会保険料控除も差し引けるため、ラインはもう少し上になります。
申告不要でも申告したほうがよいケース
1年目が赤字で、青色申告の純損失の繰越控除(3年間・期限内申告などが要件)を使いたい
報酬から源泉徴収された所得税があり、還付を受けたい
会社員時代の給与と合算すると、年末調整で納めすぎた税金が戻る
住民税の申告が別途必要になる(確定申告をすれば、原則として住民税の申告は別途不要)
市区町村によっては、所得税の申告が不要でも住民税の申告を求められます。国民健康保険料の軽減判定にも申告内容が使われるため、所得が小さい年ほど「申告しておく」ほうが手続きが楽になる場合があります。
売上規模別の判断フロー
申告要否そのものは売上ではなく所得と控除で判定します。ここでは実務上の論点を整理するために、売上帯で分けています。売上規模が大きくなるほど、青色申告の効果や消費税の判定など、検討すべき論点が増えるからです。
売上規模(年間) | 所得税の申告 | 青色申告の効果 | 消費税 | 主な追加論点 |
|---|---|---|---|---|
〜100万円 | 所得と控除次第(不要なことも多い) | 赤字の繰越・翌年以降の控除に効く | 免税(インボイス登録時を除く) | 住民税の申告、雑所得との区別 |
100〜500万円 | 多くの場合必要 | 大きい | 免税(インボイス登録時を除く) | 青色申告特別控除のフル活用 |
500〜1,000万円 | 必要 | 大きい | 1年目は原則免税。上半期の売上次第で2年目から課税 | 国保・国民年金の負担増 |
1,000万円超 | 必要 | 大きい | 翌々年から課税事業者(上半期次第で翌年から) | 法人化・インボイスの本格対応 |
ここでの売上は事業全体の年間売上で、給与所得や雑所得は別に扱います。
売上規模は「月単価×稼働月数」でほぼ決まります。途中開業の年は月数が少ないため、同じ単価でも1年目は下の帯に入りがちです。自分の単価がどのくらいの水準か気になる方は、無料のフリーランスエンジニア単価診断で市場単価の目安を確認できます。単価を上げる考え方は『フリーランスエンジニアの単価相場と単価の上げ方』で整理しています。
売上100万円以下のケース
売上100万円以下は、年の後半に開業して数か月だけ稼働した人や、副業から本格独立に移った直後の人に多い帯です。
申告は必要?基礎控除との関係
売上から経費を引いた事業所得が、基礎控除などの所得控除を超えるかがスタートです。令和8年分は基礎控除が104万円まで上がったため、この帯で所得税がかかるケースは減ります。給与所得など他の所得がある人は、合算したうえで判定します。
ただし住民税の基礎控除は43万円のままです。所得税がゼロでも住民税の申告が必要になることがあります。
1年目から青色申告にする価値はあるか
売上が小さくても、1年目から青色申告承認申請書を出しておく価値はあります。
青色申告特別控除(要件に応じて65万円・55万円・10万円)を、売上が伸びる2年目以降にすぐ使える
純損失の繰越控除(3年間)が使えるため、1年目の赤字を翌年以降の黒字と相殺できる
家族への給与(青色事業専従者給与)を必要経費に算入できる(届出・適正額が必要)
65万円控除には、複式簿記での記帳+e-Taxによる電子申告(または優良な電子帳簿保存)などの要件があります。電子申告等の要件を満たさなければ55万円、簡易簿記なら10万円です。制度の詳細は国税庁の青色申告特別控除(No.2072)で確認できます。
提出書類
確定申告書(第一表・第二表)
青色申告決算書(青色申告の場合)/収支内訳書(白色申告の場合)
給与所得がある場合は源泉徴収票の内容(申告書に転記。添付は不要)
控除証明書(生命保険・国民年金・小規模企業共済等)
控除額や帳簿要件の差は青色申告と白色申告の違いで整理しています。
売上100〜500万円のケース
開業1年目で多い帯がこのレンジです。途中開業で稼働月数が少ない人、副業から本格移行した人、家庭の事情で稼働を抑えた人などが該当します。
青色申告特別控除をフル活用する
この帯では、要件を満たせば青色申告特別控除65万円の効果が大きく出ます。
控除額 | 必要な要件(令和8年分) |
|---|---|
65万円 | 複式簿記+貸借対照表の添付+期限内申告+e-Taxによる申告(または優良な電子帳簿保存) |
55万円 | 複式簿記+貸借対照表の添付+期限内申告(電子申告等の要件なし) |
10万円 | 簡易簿記での記帳 |
会計ソフト(freee/マネーフォワード/弥生など)を使うと、複式簿記や電子申告の要件に対応しやすくなります。ただし、ソフトを入れただけで65万円の要件を満たすわけではありません。帳簿付け・申告方法・保存方法まで含めて運用が必要です。
2年目からは75万円控除という選択肢も
令和7年度税制改正で、令和9年分以後は青色申告特別控除が最大75万円になりました。2026年開業の人にとっては、2年目から使える選択肢です。
75万円には、65万円の要件に加えて「優良な電子帳簿保存」または新設の「デジタルシームレス保存」と電子申告が必要で、事前の届出も求められます。要件の全体像は国税庁のパンフレット電子帳簿等保存制度を活用して、デジタル化をさらに進めてみませんか?で確認できます。1年目の会計ソフト選びの段階で、電子帳簿保存に対応しているかを見ておくと移行が楽です。
経費計上のポイント
エンジニアの仕事では、案件獲得から納品までにかかる支出の多くが経費の候補になります。
開発機材(PC・モニター・キーボード等)
通信費(自宅Wi-Fi・モバイル回線)
サブスクリプション(GitHub Copilot・ChatGPT・JetBrains等)
書籍・オンライン学習
コワーキングスペース利用料
自宅兼事務所の家賃や通信費は家事按分が必要です。業務時間や使用面積を根拠に、按分割合を説明できるようにしておきます。具体例は家事按分の計算式と按分例で整理しています。
提出・準備しておく書類
税務署に提出するものと、手元で保管するものを分けて整理します。
確定申告書(第一表・第二表)
青色申告決算書(4ページ:損益計算書・内訳・貸借対照表)
控除証明書(国民年金・国民健康保険・生命保険等)
開業届の控え(提出物ではなく手元保管。屋号付き口座の開設などで求められることがある)
2025年1月以降、書面で提出した控えに税務署の受付印は押されなくなりました(国税庁申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて)。控えが必要な人は、e-Taxで提出して受信通知を残すか、窓口でその場で日付入りのリーフレットを受け取ります。
経費の根拠資料(請求書・領収書・口座の取引履歴)には保存義務があり、青色申告では7年保存が必要な書類もあります。保存年数は書類の種類で分かれるため、国税庁の帳簿書類等の保存義務で確認します。電子データで受け取った請求書は電子帳簿保存法への対応も必要です。
ミニFAQ:100〜500万円帯のよくある疑問
Q. 売上300万円・経費80万円なら、青色65万円控除でどのくらい負担が変わりますか?
A. 独身・扶養なしの概算では、所得が65万円下がるため、所得税・住民税・国民健康保険料を合わせた負担率を仮に20〜25%とすると、年13〜16万円ほど軽くなる計算です。負担率は所得や自治体で変わるため、あくまで目安です。
売上500〜1,000万円のケース
実務経験のあるエンジニアが年初に近い時期から稼働した場合などに見られる帯です。単価・稼働率・商流によって大きく変わります。
消費税は1年目は原則免税・2年目の判定に注意
個人事業者の消費税は、前々年(基準期間)の課税売上高で判定します。開業1年目は基準期間の売上がないため、原則として免税事業者です。例外は次のとおりです。
適格請求書発行事業者(インボイス)として登録した
「課税事業者選択届出書」を提出した
もう1つ見落としやすいのが特定期間です。前年の1月1日〜6月30日の課税売上高(または給与等の支払額)が1,000万円を超えると、翌年は課税事業者になります。1月開業で上半期に1,000万円を超えた場合は、2年目から課税事業者になり得ます。制度の詳細は国税庁の消費税の納税義務(No.6501)で確認できます。
インボイス登録したなら「2割特例」と「3割特例」
インボイス登録によって免税事業者から課税事業者になった個人は、納める消費税を売上税額の2割にできる2割特例を令和8年分まで使えます。令和9年分・令和10年分は、個人事業者に限って3割特例が設けられています(国税庁インボイス制度に関するお知らせ(令和8年度税制改正))。
インボイス登録の要否は、取引先の意向で変わります。契約時に確認しておきます。フリーランス向けの整理はフリーランスエンジニアの消費税を参照してください。
国保・国民年金の負担増
この帯では、所得税・住民税に加えて国民健康保険料・国民年金保険料が手取りに大きく影響します。国保は前年の所得をもとに算定されるため、1年目に申告した所得が2年目の保険料に響きます。
概算例(令和8年分・事業所得600万円・独身・扶養なし・40歳未満)
負担項目 | 概算 |
|---|---|
所得税(復興特別所得税を含む) | 約46万円 |
住民税 | 約46万円 |
国民健康保険料 | 約60〜90万円(自治体・年齢で差が非常に大きい) |
国民年金保険料 | 約21万円(令和8年度は月額17,920円) |
所得税・住民税は、社会保険料控除を約96万円(国保75万円・国民年金21万円と仮定)、所得税の基礎控除67万円・住民税の基礎控除43万円として計算した概算です。自治体・年齢・加入制度で大きく変わるため、詳細は税理士・社労士等に確認してください。具体的な試算はフリーランスエンジニアの税金シミュレーションで確認できます。
提出書類
確定申告書(第一表・第二表)
青色申告決算書
控除証明書一式
消費税の確定申告書(インボイス登録済みで課税事業者になっている場合)
売上1,000万円超のケース
1年目から年商1,000万円を超えるのは少数派です。上流工程やPM・テックリードの経験があり、年初から稼働した人などで到達する可能性があります。
翌々年から消費税の課税事業者になる
1年目の課税売上高が1,000万円を超えると、翌々年(3年目)から消費税の課税事業者です。2026年に1,000万円超なら、2028年から課税事業者になります。上半期(1〜6月)だけで1,000万円を超えていれば、特定期間の判定で2027年から課税事業者になる点にも注意します。インボイス登録済みなら、登録日から課税事業者です。
法人化の検討タイミング
利益水準が高くなると、手取りの最適化や取引先の要件から法人化(株式会社・合同会社)を検討する人も出てきます。役員報酬への給与所得控除、経費の幅、対外的な信用などのメリットがある一方、社会保険料や事務コストは増えます。判断は税理士に試算を依頼してから行うのが安全です。
法人化の判断軸はフリーランスエンジニアの法人化・マイクロ法人とはで詳しく整理しています。
提出書類
確定申告書(第一表・第二表)
青色申告決算書
控除証明書一式
消費税の確定申告書(課税事業者の場合)
課税事業者になる年に備えた帳簿の整備(税率ごとの区分記帳・適格請求書の保存)
開業1年目に時期ごとに必要な主な書類
開業届・青色申告承認申請書・確定申告書は、提出の時期が違います。「申告期に3点まとめて出せばいい」と誤解すると、青色申告の期限だけ過ぎてしまいます。
開業時:開業届と青色申告承認申請書
2026年以後の開業なら、開業届の期限は確定申告期限までです。ただし青色申告承認申請書は開業日から2か月以内なので、2つを同時に出すのが確実です。国税庁の新たに事業を始めたときの届出(No.2090)や青色申告制度(No.2070)で手続き要件を確認できます。
申告期:確定申告書一式
翌年2月16日〜3月15日に、税務署またはe-Taxで提出します。e-Taxの操作はe-Taxで確定申告するやり方で整理しています。
給与所得がある場合は源泉徴収票、社会保険料控除を受ける場合は国民年金・国民健康保険の控除証明書や支払額のわかる書類を準備します。
年の途中に開業した場合の注意点
会社員から独立したケースでは、開業前の給与や退職金との関係を整理する必要があります。
給与所得との合算
退職前に受け取った給与は、勤務先が交付する源泉徴収票の内容を確定申告書に記載します。給与所得と事業所得を合算した所得に対して所得税が計算されます。年の途中で退職して年末調整を受けていない場合、申告で税金が戻ることも少なくありません。
住民税は前年の所得を基準に翌年6月から徴収されます。独立した年は、会社員時代の所得にかかる住民税を自分で納める(普通徴収)ことになるため、現金の準備が必要です。
退職金の扱い
退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に出していれば、多くの場合は源泉徴収で課税関係が完結します。出していない場合は、確定申告で精算が必要になることがあります。
開業前経費(開業費)の整理
開業準備のために直接かかった費用は、開業費として繰延資産に計上できることがあります。償却のタイミングを任意で選べるため、1年目に利益が出なかった場合は翌年以降に経費化する使い方ができます。
開業前の名刺・印鑑作成費
開業前に購入した書籍・スクール代
開業の打ち合わせのための交通費
ただし、開業前に購入した10万円以上のPCなどは減価償却資産として扱い、仕入や前払費用も別の処理になります。領収書を整理する段階で分類しておきます。勘定科目別の判断基準はフリーランスエンジニアが経費にできるもの一覧で整理しています。
開業1年目によくある失敗
失敗1:開業届を後回しにして、青色申告の期限も過ぎる
2026年以後の開業から開業届の期限が延びたことで、新しく増えそうな失敗です。開業届は年明けでも間に合いますが、青色申告承認申請書は開業日から2か月で締め切られます。過ぎるとその年は白色申告で確定し、65万円控除も赤字の繰越もその年は使えません。
失敗2:古い基礎控除の数字で申告要否を判断する
ネット上には「所得48万円以下なら申告不要」という古い解説が残っています。令和7年分から基礎控除は段階制になり、令和8年分は所得によって最大104万円です。一方、住民税は43万円のままです。所得税と住民税で数字が違う点を混同しないようにします。
失敗3:開業前経費を全部その年の経費に入れてしまう
開業前の支出は、開業費にできるものと、固定資産・仕入・前払費用など別処理になるものを分けて整理するのが基本です。すべて1年目の必要経費に入れると、税務調査で否認される可能性があります。
失敗4:赤字を給与所得と相殺できないと諦める
1年目が赤字で、同じ年に前職の給与所得がある場合、事業所得の赤字を給与所得と損益通算できるケースがあります。前提は、帳簿・継続性・独立性など事業としての実態があることです。雑所得と判断されると損益通算できません。副業から独立した直後は判断が割れやすいため、金額が大きい場合は税理士に確認するのが安全です。
1年目の確定申告 実践チェックリスト
開業から確定申告までを時系列で整理しました。
開業時(開業日から2か月以内)
青色申告承認申請書を提出(期限は開業日から2か月)
開業届を提出(2026年以後の開業は申告期限までだが、承認申請書と同時が確実)
控えが必要ならe-Taxの受信通知を保存するか、窓口でリーフレットを受け取る
事業用の銀行口座・クレジットカードを分ける
会計ソフトを契約(2年目の75万円控除を見据えるなら電子帳簿保存の対応も確認)
開業中(毎月)
請求書を発行・保存
領収書・レシートを月次でデータ化
銀行口座・カード明細を会計ソフトと連携して記帳
年末(12月)
12月末で帳簿を締める準備
国民年金・国民健康保険・生命保険の控除証明書を整理
1〜6月の売上が1,000万円を超えていないか確認(2年目の消費税)
翌年のインボイス登録・課税事業者選択の判断
申告期(翌年1〜3月)
1月:青色申告決算書を作成
2月:確定申告書を作成
2月16日〜3月15日:e-Taxまたは税務署で申告
3月15日までに納税(振替納税なら4月中旬に引落し)
まとめ
開業1年目の確定申告は、「開業日〜12月31日の所得を翌年3月15日までに申告する」が基本です。2026年開業なら、基礎控除の引き上げと、開業届・青色申告承認申請書の期限のずれを押さえておけば判断を誤りません。
申告対象は開業日〜12月31日。2026年開業は2027年2月16日〜3月15日に令和8年分を申告する
令和8年分の基礎控除は合計所得489万円以下なら104万円。住民税は43万円のまま
開業届は申告期限まで延びたが、青色申告承認申請書は開業日から2か月以内。同時に出す
1年目の課税売上高1,000万円超なら翌々年から、上半期で1,000万円超なら翌年から消費税の課税事業者
青色申告特別控除は令和8年分まで最大65万円。令和9年分からは条件付きで75万円
開業前経費(開業費)と1年目の必要経費は分けて整理する
シンプルなケースなら、会計ソフトと国税庁の一次情報で自力でも対応できます。消費税・損益通算・法人化の判断は、税理士に確認してから動くのが安全です。次のステップとして、青色申告の手続きは青色申告と白色申告の違い、e-Taxの操作はe-Taxで確定申告するやり方、確定申告の全体像はフリーランス確定申告が初めての人向け完全ガイドを参考にしてください。
参照元・一次情報リンク
※本記事は2026年10月時点の法令等にもとづく一般的な情報提供です。個別の税務判断は税理士等の専門家にご相談ください。
よくある質問
開業1年目で売上ゼロでも、開業届を出していれば申告は必要ですか?
事業所得が赤字で他に申告が必要な所得もなければ、所得税の申告義務はないのが一般的です。ただし青色申告で純損失を翌年以降に繰り越したい場合は、申告したほうが有利です。3年間の繰越控除で、翌年以降の黒字と相殺できます。
令和8年分の基礎控除104万円は誰でも使えますか?
合計所得金額が489万円以下の人が対象です。489万円超〜655万円以下は67万円、655万円超〜2,350万円以下は62万円です。売上ではなく、経費などを差し引いた後の所得で判定します。
会社員時代の副業所得(雑所得)と、独立後の事業所得は合算できますか?
同じ年分の中で、副業の雑所得と独立後の事業所得は別の所得区分として申告します。雑所得の赤字は他の所得と損益通算できませんが、事業所得の赤字は給与所得と損益通算できます。所得区分は継続性・反復性・事業としての実態で判断されます。
開業届を出し忘れたまま1年目が終わりそうです。青色申告は使えますか?
2026年以後の開業なら、開業届自体は確定申告期限までに出せば間に合います。ただし青色申告承認申請書を開業日から2か月以内に出していなければ、その年は白色申告です。翌年から青色にするなら、翌年3月15日までに承認申請書を出します。
インボイス登録は1年目から必要ですか?
必須ではありません。取引先が適格請求書を求めるかどうかで判断します。エージェント経由の案件では登録を求められることがあるため、契約前に確認するのが実務的です。登録した場合は、令和8年分は2割特例を使えるかを確認します。
開業1年目に税理士に依頼すべきですか?
売上規模・帳簿の複雑さ・本業の忙しさで判断します。費用は地域・売上規模・業務範囲で大きく異なるため、複数の税理士に見積りを取るのが基本です。会計ソフトで完結できる規模なら、初年度は自分で申告する選択肢もあります。
売上が振り込まれるのは年明けですが、12月の請求はどの年の売上ですか?
原則は発生主義で、役務提供の完了や契約上の計上基準で判断します。準委任契約で12月分の作業が完了していれば、入金が1月でも12月の売上として計上するのが基本です。検収日や契約条件で変わる場合もあるため、判断に迷えば税理士に相談してください。
開業1年目に消費税の還付を受けたい場合はどうしますか?
大きな設備投資があって還付を受けたい場合は、「課税事業者選択届出書」を出して課税事業者になる方法があります。開業した年は、その年中に届け出ればその年から課税事業者になれます。ただし一定期間は免税事業者に戻れないなどの制約があるため、国税庁の消費税の課税事業者選択(No.6629)で要件を確認し、長期で試算してから判断します。
開業1年目から法人化したほうが得になるケースはありますか?
売上規模・経費構造・社会保険の状況により異なります。「年商800万〜1,000万円が目安」と言われることもありますが、役員報酬・社会保険・事務コストで大きく変わります。税理士の試算を前提に判断してください。
確定申告を3月15日までに間に合わせられない場合はどうなりますか?
期限後申告となり、無申告加算税や延滞税がかかる場合があります。65万円・55万円の青色申告特別控除は期限内申告が要件のため、期限後申告では控除額が最大10万円に下がります。計算式と対処は期限後申告とはで整理しています。
1年目の所得は翌年の国民健康保険料にどう影響しますか?
国民健康保険料は前年の所得をもとに計算されます。1年目に申告した所得が、2年目(翌年度)の保険料の基準になります。青色申告特別控除などで所得を適正に下げておくことは、保険料の面でも意味があります。
