フリーランス確定申告が初めての人向け完全ガイド|独立1年目のやること・期限・スケジュール【令和8年分】
最終更新日:2026/10/15
フリーランスの確定申告とは、1年分の事業所得を自分で計算し、原則として翌年2月16日〜3月15日に申告・納税する手続きです。2026年に独立した人は「令和8年分」を2027年3月15日までに申告します。独立準備中〜1年目のエンジニア向けに、開業直後の届出から申告、2年目の納税まで「いつ何をやるか」を時系列で整理します。
先に結論
2026年に独立した人は、令和8年分の確定申告を2027年2月16日(火)〜3月15日(月)に行う。所得税の納付期限も3月15日
最初に来る締切は青色申告承認申請書(開業日から2か月以内)。開業届の期限は2026年1月以後の開業から「確定申告期限まで」に延びたが、青色の期限は変わっていない
令和8年分の基礎控除は、合計所得489万円以下なら104万円(国税庁No.1199・2026年10月時点で確認)。事業所得だけで104万円以下なら所得税の申告義務は原則ないが、赤字の繰越や還付のために申告したほうが得なこともある
帳簿は月次で付ける。年明けに1年分まとめて入力しようとすると、思い出せない取引が必ず出る
独立2年目の6月以降に住民税・国民健康保険・予定納税の支払いが続く。初年度のうちに納税資金を取り分けておく
この記事でわかること
2026年に独立した人の期限一覧(青色申請・開業届・申告・納付)
初年度に確定申告が必要かどうかの考え方(令和8年分の基礎控除104万円を反映)
開業届と青色申告承認申請書の出し方と、期限の「ずれ」の注意点
月次・年末・申告期・2年目に何をやるかの年間スケジュール
初年度に起きやすい失敗と回避策
目次
確定申告の基礎|フリーランスエンジニアが初めて直面する全体像
2026年に独立した人の期限一覧|最初の締切は青色申告
初年度に確定申告が必要か|令和8年分の考え方
独立1年目の準備|開業届と青色申告承認申請書
初年度の経費とプライベートの線引き
提出が必要な書類と保存しておくもの
申告までの年間スケジュール|初年度の動き方
e-Taxと紙申告の選び方
ケース別解説|初年度のリアルパターン
初年度に起きやすい失敗と対策
初年度確定申告 実践チェックリスト
まとめ
よくある質問
確定申告の基礎|フリーランスエンジニアが初めて直面する全体像
会社員時代は年末調整で完結していた税金の計算を、独立後は自分で行います。まずは何を提出する手続きなのか、用語と全体像を押さえます。
確定申告とは何か
確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年分の所得と所得税を自分で計算し、税務署に申告して納税する手続きです。フリーランスエンジニアの場合は「事業所得」として申告するのが一般的で、青色申告か白色申告を選びます。
似た用語に「収入」「所得」「課税所得」があります。混同しやすいので、先に整理しておきます。
用語 | 定義 |
|---|---|
収入(売上) | クライアントから受け取った報酬の合計 |
所得 | 収入から必要経費を引いた額 |
課税所得 | 所得から所得控除(基礎控除・社会保険料控除など)を引いた額 |
所得税 | 課税所得に税率をかけて算出する税金 |
「所得=売上−経費」「課税所得=所得−所得控除」という2段階の引き算です。控除を引く前が「所得」、引いた後が「課税所得」。この区別さえ押さえれば、後の判断で迷いません。
会社員と何が変わるのか
会社員は給与から所得税が源泉徴収され、年末調整で精算されていました。フリーランスは自分で1年分の所得税を計算して納めます。エンジニアの一般的な業務委託報酬は源泉徴収の対象外になることが多い一方、原稿料・デザイン料などに該当する報酬は対象になる場合があります。
主な違いは次のとおりです。
税金の計算と納付を自分で行う
経費を自分で集計する(請求書・領収書の保管が必須)
社会保険が国民健康保険・国民年金に切り替わる
住民税は、独立後の事業所得分を自分で納付する形(普通徴収)になるのが通常
いちばん大きな違いは「経費を集計する」点です。あの月の交通費はいくらだったか。1年後に思い出して計上するのは、現実的にはまず無理です。
申告期間と提出先
確定申告の期間は、原則として翌年2月16日から3月15日までです。2026年に独立した人が提出する令和8年分は、2027年2月16日(火)〜3月15日(月)が申告期間になります。期限日が土日祝に当たる年は翌日にずれるため、その年の正確な日程は国税庁の確定申告特集ページで確認してください。
提出先は住所地を管轄する税務署です。提出方法はe-Tax(電子申告)、窓口への持参、郵送の3通り。青色申告で65万円控除を受けるには、複式簿記などの要件に加えて、e-Taxによる申告または電子帳簿保存の要件を満たす必要があります。
ミニFAQ
Q. 申告しなかったらどうなる? → 期限後申告となり、無申告加算税・延滞税がかかる可能性があります。詳細は期限後申告の解説記事を参照してください
Q. 退職前の給与や副業時代の所得も申告に含めるの? → 同じ年の1月1日〜12月31日の所得は、給与・事業を問わずまとめて申告します。前職の源泉徴収票は必ず保管しておきます
2026年に独立した人の期限一覧|最初の締切は青色申告
独立1年目の締切は、確定申告の3月15日だけではありません。最初に来るのは青色申告承認申請書の「開業日から2か月以内」で、ここを逃すと初年度は白色申告になります。2026年に開業した場合の主な期限を一覧にしました。
手続き | 期限の原則 | 例:2026年6月1日に開業 |
|---|---|---|
青色申告承認申請書 | 開業日から2か月以内(1月15日以前の開業はその年の3月15日まで) | 7月中に出せば確実 |
開業届(個人事業の開業・廃業等届出書) | 開業した年分の確定申告期限まで(2026年1月1日以後の開業) | 2027年3月15日(月) |
確定申告(令和8年分) | 翌年2月16日〜3月15日 | 2027年2月16日(火)〜3月15日(月) |
還付申告 | 翌年1月1日から提出可能 | 2027年1月1日から |
所得税の納付 | 申告期限と同じ(振替納税は引落日が後になる) | 2027年3月15日(月) |
出典は国税庁の個人事業の開業届出・廃業届出等手続と所得税の青色申告承認申請手続です。
注意したいのは、開業届と青色申告承認申請書の期限がずれたことです。2025年12月31日までの開業では、開業届も「事業開始から1か月以内」でした。開業届の期限だけを見て「申告のときにまとめて出せばいい」と考えると、青色の2か月を過ぎてしまいます。
2年目に来る支払いもここで把握しておく
初年度の申告が終わった後、独立2年目には前年の所得をもとにした支払いが続きます。会社員時代に天引きされていたものが、まとめて請求書の形で届くイメージです。
支払い | 時期の目安 | 対象・ポイント |
|---|---|---|
住民税 | 6月ごろに通知、年4回(6月・8月・10月・翌年1月が一般的)で納付 | 前年の所得がベース。自治体により納期が異なる |
国民健康保険料 | 6〜7月ごろに通知 | 前年の所得で決まる。納付回数は自治体ごとに異なる |
予定納税 | 第1期7月・第2期11月 | 前年分の申告納税額が15万円以上の場合に通知される |
予定納税の基準や減額申請は予定納税の解説記事で、2年目の負担増の全体像は独立2年目の税金ショックの記事で整理しています。初年度のうちに、売上の入金口座とは別に納税用の資金を分けておくと慌てずに済みます。
ミニFAQ
Q. 開業日はいつにすればいい? → 実際に事業を始めた日(初回契約の稼働開始日など)を記載するのが基本です。青色申告承認申請書の2か月はこの日から数えるため、開業日を決めたら同じタイミングで2枚とも出すのが安全です
初年度に確定申告が必要か|令和8年分の考え方
「売上がほとんどないけど申告は必要?」という質問は、初年度に特に多くあります。結論は所得の合計が所得控除の合計を上回るかで決まります。
令和8年分は基礎控除が大きく変わったため、まずそこから確認します。数字はいずれも原則ベースの目安です。社会保険料控除や配偶者控除など個別事情で課税所得は変わるため、最終判断は国税庁の確定申告書等作成コーナーでのシミュレーションや税理士への相談で行ってください。
令和8年分の基礎控除は最大104万円
国税庁のNo.1199 基礎控除(2026年10月時点で確認)によると、令和8年分の所得税の基礎控除は合計所得金額に応じて次のとおりです。
合計所得金額 | 令和7年分 | 令和8年分 |
|---|---|---|
132万円以下 | 95万円 | 104万円 |
132万円超〜336万円以下 | 88万円 | 104万円 |
336万円超〜489万円以下 | 68万円 | 104万円 |
489万円超〜655万円以下 | 63万円 | 67万円 |
655万円超〜2,350万円以下 | 58万円 | 62万円 |
令和8年分の規定は2026年12月1日に施行されます。2027年に行う令和8年分の確定申告では、この金額で計算します。
ほかに所得がない専業フリーランスなら、事業所得(青色申告特別控除を引いた後)が104万円以下で所得税はかかりません。その場合、所得税の申告義務は原則ありません。
一方、住民税の基礎控除は43万円のままです。所得税はゼロでも住民税はかかる、という逆転が起きやすくなっています。所得税の申告をしない場合でも、住民税の申告が必要になるケースがあるため、自治体の案内を確認してください。改正の詳細は基礎控除の改正と手取りの記事、売上規模ごとの細かい判定は開業1年目の確定申告|いくらから必要かで解説しています。
売上0円〜赤字でも申告したほうがいいケース
専業フリーランスで売上がほぼゼロや赤字でも、青色申告をしておくと純損失を翌年以後3年間繰り越せます(国税庁 No.2070 青色申告制度)。2年目に売上が伸びたとき、繰り越した赤字と相殺して所得税・住民税を抑えられる可能性があります。
繰越控除を使う主な条件は次のとおりです。
青色申告承認申請書を期限内に提出している
赤字の年も期限内に確定申告を行う
その後も連続して確定申告をする
赤字だから申告しない。これをやると、繰越の権利を失います。
所得税がかからなくても申告した方が得なケース
事業所得が基礎控除以下で所得税が発生しない場合でも、次のような場合は申告した方が得になることがあります。
クライアントから源泉徴収されている報酬がある(源泉徴収の解説を参照)
年の途中で退職し、給与から源泉徴収された所得税が年末調整されていない
国民健康保険料の算定や軽減判定で所得の申告が必要になる
翌年以降に住宅ローンや事業融資の審査を受ける予定がある
源泉徴収されている報酬や給与があれば、申告で還付金が戻ることがあります。報酬から差し引かれている金額がないか、支払明細で確認しておきます。
売上1,000万円以上で出てくる消費税の論点
原則として、基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円を超えると、その年は消費税の課税事業者になります。独立1年目は基準期間の売上がないため、原則として免税事業者です。
ただし特定期間(前年1〜6月)の課税売上高と給与等支払額がともに1,000万円を超えると、2年目から課税事業者になることがあります。初年度に売上1,000万円を超える独立エンジニアは少数派ですが、可能性がある場合は消費税・インボイスの解説記事も合わせて読んでおくと安心です。
インボイス登録は別軸の論点です。取引先からインボイス発行を求められ、1年目から課税事業者になるケースもあります。登録した場合の負担軽減策(2割特例は令和8年分まで、令和9・10年分は個人事業者向けの3割特例)もあるため、取引先の構成と事務負担を見て判断します。
売上規模別の目安(最終判断は所得・控除・給与の合算で)
専業・ほかの所得なしの場合のざっくりした目安を表にまとめました。申告義務は売上額だけでは決まらず、給与所得なども合算した所得と所得控除の比較で判断します。
売上規模 | 申告の要否(専業の目安) | やったほうがいいこと |
|---|---|---|
売上ほぼ0円・赤字 | 任意(やった方が有利なことが多い) | 青色申告で純損失の繰越を確保 |
売上〜100万円程度 | 経費・控除しだい | 源泉徴収や退職前の給与があれば還付を確認 |
売上100〜500万円 | 経費・控除しだいで必要になる | 青色申告特別控除は申告が前提。控除を受けるために申告する |
売上500〜1,000万円 | 原則として必要 | 青色申告+経費の取りこぼし防止 |
売上1,000万円超 | 原則として必要。原則として翌々年に消費税課税 | 特定期間の判定とインボイス登録を別途検討 |
ミニFAQ
Q. 開業1年目で売上が会社員時代の給与より少ない。申告は必要? → 退職前の給与所得と事業所得を合算した所得で判断します。年の途中で退職した人は年末調整を受けていないことが多く、申告で還付になる場合もあります
独立1年目の準備|開業届と青色申告承認申請書
確定申告そのものは年明けの作業です。ただ、独立1年目の節税の大枠は開業時点で決まります。鍵になるのが「開業届」と「青色申告承認申請書」の2枚です。
開業届の提出時期と書き方
開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)の期限は、2026年1月1日以後の開業なら、開業した年分の確定申告期限までです。2025年12月31日までの開業は従来どおり「事業開始から1か月以内」でした。
期限は延びましたが、開業時に出しておくメリットは変わりません。屋号付き口座の開設や小規模企業共済の加入で、開業届の控えを求められることがあるためです。
開業届に書く主な項目は次のとおりです。
納税地(住所地が原則)
屋号(なくてもよい)
事業の概要(例:「ソフトウェアの受託開発」)
開業日
青色申告承認申請書の提出の有無
なお、2025年1月以降、書面で提出した申告書や届出書の控えには税務署の受付印(収受日付印)が押されなくなりました(国税庁の案内)。提出日を示すものが必要なら、e-Taxの受信通知を保存するか、窓口で提出するときにその場で日付入りのリーフレットを受け取ります。詳しい書き方と提出方法は開業届の解説記事にまとめています。
青色申告承認申請書の期限
青色申告承認申請書の期限は次のとおりです。
その年の1月16日以後に新規開業した場合:開業日から2か月以内
1月1日〜15日に開業した場合や、すでに事業をしていて青色に変更する場合:その年の3月15日まで
期限を過ぎると、その年は青色申告を適用できません。初年度の65万円控除(または55万円・10万円)や赤字の繰越を逃さないために、開業届と青色申告承認申請書は同時に提出するのが安全です。どちらもe-Taxで提出できます。
申請書類 | 期限の原則(2026年以後の開業) | 出さなかった場合 |
|---|---|---|
開業届 | 開業した年分の確定申告期限まで | 屋号付き口座・共済加入などで手続きが滞ることがある |
青色申告承認申請書 | 開業日から2か月以内(1月15日以前の開業は3月15日) | その年は白色申告になる |
青色申告と白色申告の違い
青色申告は最大65万円の青色申告特別控除や赤字の繰越などの特典がある代わりに、複式簿記での記帳が求められます。白色申告も記帳と帳簿保存は必要ですが、簡易な記帳で足り、青色申告特別控除はありません。
エンジニアの場合、会計ソフトを使えば複式簿記のハードルは下がります。節税効果や将来の融資審査を考えて、青色申告を選ぶケースが多くなります。詳しい比較は青色申告と白色申告の違いを参照してください。
最大65万円控除を受けるには、複式簿記での記帳に加えて、e-Taxによる電子申告または優良な電子帳簿保存などの要件を満たす必要があります。紙での提出だと55万円控除です。
さらに国税庁のパンフレットでは、令和9年分(独立2年目にあたる2027年分)以後の最大75万円の控除が案内されています。優良な電子帳簿またはデジタルシームレス保存を行い、e-Taxで申告することが要件で、事前の届出も必要です(国税庁のパンフレット)。初年度は65万円を確実に取り、2年目に75万円を狙うかを会計ソフトの対応状況を見て判断する流れが現実的です。
初年度の経費とプライベートの線引き
経費にできるかどうかは、事業との関連性を説明できるかで決まります。初年度は、自宅費用の按分と開業前の支出の扱いで迷う人が特に多くなります。
家事按分の考え方
自宅で作業するフリーランスエンジニアは、家賃・光熱費・通信費の一部を「家事按分」で経費にできます。按分比率は業務実態に応じた合理的な割合にし、面積比や使用時間比を根拠として説明できるようにしておくのが基本です。
按分の出し方は家事按分の解説記事に詳しくまとめています。初年度から記録の取り方を決めておけば、年末に困りません。
開業前の支出は経費にできるか
開業日より前に支払った事業のための支出は、「開業費」という繰延資産として処理できるものがあります。名刺作成費、打ち合わせの交通費、業務用ソフトウェアのサブスクリプション利用料などが該当します。一方、PCのように取得額や性質によって開業費ではなく固定資産として処理するものもあるため、区分には注意が必要です。
開業費のポイントは次のとおりです。
開業日より前の支出のうち、開業準備のための費用が対象
領収書・レシートを保管しておく
任意償却ができる(好きな年に好きな額を経費にできる)
利益が出た年にまとめて経費化すれば節税効果が高まります。開業準備中の領収書も処分せず、必ず取っておきましょう。区分の判断に迷う支出は税理士に相談するのが安全です。
よくある経費項目の判断
エンジニアが計上することの多い経費を、判断の目安とあわせて整理します。
項目 | 経費可否の目安 | 注意点 |
|---|---|---|
PC・ディスプレイ | 業務利用なら可 | 取得額によっては減価償却が必要。少額減価償却資産の特例が使える場合もある |
書籍・技術書 | 業務関連なら可 | 私的な趣味本は対象外 |
カンファレンス参加費 | 業務関連なら可 | 領収書を必ず保管 |
自宅家賃 | 家事按分で一部可 | 按分根拠の記録を残す |
通信費(プロバイダ) | 家事按分で一部可 | 業務時間比などで按分 |
食事代 | 取引先との会食は可 | 一人での昼食は基本的に対象外 |
判断に迷うものは、業務との関連性を説明できるかどうかが判断軸になります。経費全体の整理は経費にできるもの一覧を参照してください。
ミニFAQ
Q. 開業前に買ったMacBookは経費にできる? → 取得額や使用実態によっては固定資産として減価償却の対象になります。少額減価償却資産の特例が使えるケースもあるため、購入時の領収書を保管したうえで税理士・税務署に相談するのが安全です
Q. レシートをなくしたらどうする? → クレジットカード明細や銀行通帳などの出金記録でも支出の裏付けにはなりますが、原則は領収書を保管します
提出が必要な書類と保存しておくもの
提出するのは確定申告書と青色申告決算書(白色は収支内訳書)が中心です。請求書や領収書は提出せず、手元で5〜7年保存します。
確定申告で提出する書類
書類 | 用途 | 青色申告 | 白色申告 |
|---|---|---|---|
確定申告書 | 所得と税額を記載 | 必須 | 必須 |
青色申告決算書 | 損益計算書・貸借対照表など | 必須 | 不要 |
収支内訳書 | 売上と経費の内訳 | 不要 | 必須 |
各種控除証明書 | 添付または提示 | 該当する控除がある場合 | 該当する控除がある場合 |
控除証明書は、社会保険料・生命保険料・小規模企業共済などの支払いを証明する書類で、多くは自宅に郵送されます。e-Taxで提出する場合は添付を省略できる書類もあり、保管のみで足りるケースがあります。詳しい提出書類のリストは確定申告の必要書類一覧にまとめています。
自分で保管しておく書類
提出はしないものの、保管が必要な書類は次のとおりです。
請求書(自分が発行したもの・受け取ったもの)
領収書・レシート
銀行通帳・クレジットカード明細
業務委託契約書
帳簿(仕訳帳・総勘定元帳など)
保管期間は青色申告で原則7年間、書類によっては5年間です。メール添付のPDF請求書など電子取引で受け取ったデータは、電子帳簿保存法に基づき電子データのまま保存する必要があります。
帳簿の付け方
青色申告で65万円控除を受けるには、複式簿記での記帳が必要です。会計ソフト(freee・マネーフォワード・弥生など)を使えば、銀行口座やクレジットカードと連携して自動で仕訳を作れます。
初年度の選び方の目安は次のとおりです。
簿記がまったく分からない:freee(質問形式で入力できる)
銀行・カード連携を重視:マネーフォワード(連携先が多い)
税理士に渡しやすい定番を選びたい:弥生(会計事務所での利用が多い)
どれを選ぶにしても、初年度は「月次で入力できる仕組み」を作ることを優先します。2年目に75万円控除を狙うなら、優良な電子帳簿の要件に対応した設定ができるかも確認しておきます。
申告までの年間スケジュール|初年度の動き方
確定申告は3月15日だけの作業ではありません。1年を通じた記録の集大成です。初年度は次のスケジュールで動くと、年明けに慌てずに済みます。
開業直後(開業から2か月以内)にやること
開業届と青色申告承認申請書を提出する
事業用の銀行口座とクレジットカードを用意する
会計ソフトを契約し、口座・カードを連携する
国民健康保険・国民年金への切り替えを済ませる(退職日の翌日から14日以内が原則)
月次でやること
毎月の作業は4つだけです。
請求書を発行する(月末締めが基本)
入金を確認する
領収書・レシートをスキャンまたは保管する
会計ソフトに仕訳を入力する
特に領収書の保管と仕訳入力は月内に済ませるのが鉄則です。年末にまとめようとすると、思い出せない取引や紛失したレシートが必ず出ます。週1回30分の入力時間をカレンダーに入れておくだけでも違います。
12月までにやること
年内に決着させておきたい論点です。
12月末日までに支払う経費の最終確認
国民年金保険料・国民健康保険料の支払いと証明書の保管
小規模企業共済・iDeCoの掛金の確認(その年に支払った分が控除対象)
開業費を含めた経費漏れのチェック
年末調整のないフリーランスは、控除を増やせる手段を12月末までに使い切る必要があります。節税の具体策は節税対策の記事を参照してください。
1月〜3月の動き
申告期に入ったら、次の順序で動きます。
1月:控除証明書と前職の源泉徴収票がそろっているか確認する
1月〜2月:会計ソフトで年次決算(売上・経費の最終確定)を行う
2月:申告書を作成する(e-Taxの確定申告書等作成コーナーが便利)
2月16日〜3月15日:申告と納税(納付は窓口のほか、振替納税やダイレクト納付も選べる)
還付申告は1月1日から提出できます。源泉徴収や退職前の給与で還付が見込める場合は、2月を待たずに早めに出しましょう。
ミニFAQ
Q. 確定申告書の用紙はいつ手に入る? → e-Taxの確定申告書等作成コーナーは例年1月上旬から当年分の申告書を作成できます。紙の様式は税務署で配布されるほか、作成コーナーで作って印刷できます
Q. 期限ギリギリで間に合いそうにない。どうする? → 期限後申告になると無申告加算税・延滞税がかかる可能性があります。できる限り正確な内容で期限内提出を目指し、迷う点は税務署や税理士に早めに相談するのが安全です
e-Taxと紙申告の選び方
提出方法は3通りありますが、初年度からe-Taxを使うと有利な点が多くあります。
青色申告の65万円控除の要件を満たせる(紙だと55万円控除)
還付の処理が紙より早い傾向がある
一部の添付書類を省略できる
e-Taxにはマイナンバーカード方式とID・パスワード方式があり、マイナンバーカードとスマートフォンがあれば自宅で完結できます。操作手順はe-Taxで確定申告するやり方で画面の流れに沿って解説しています。
紙申告は、会計ソフトで作成した申告書を印刷して持参・郵送する方法です。e-Taxの環境が整わない場合の選択肢として残しておけば十分です。
ケース別解説|初年度のリアルパターン
実際にどんな1年目があるかを、ケース別に整理します。自分に近いパターンに当てはめてみてください。
ケース1:4月独立・売上400万円・経費50万円
会社員を3月末で退職し、4月から独立。9か月で売上400万円・経費50万円のケースです。
1〜3月分の給与所得:前職の源泉徴収票で集計
4月以降の事業所得:売上400万円−経費50万円=350万円(青色申告特別控除の前)
開業日4月1日。4月中に開業届と青色申告承認申請書を提出
12月末で帳簿を締め、青色申告決算書を作成
申告では給与所得と事業所得を合算
初年度から65万円控除を受ければ、事業所得は285万円まで下がります。退職金を受け取った場合は退職所得として別枠になるため、申告書での扱いに注意します。
9か月で売上400万円は月額約44万円のペースです。翌年の売上見込みや納税資金を考える起点は、この「月額単価×稼働月数」になります。資金計画の前提として、自分のスキルでどのくらいの単価が狙えるかを確かめたい方は、無料のフリーランスエンジニア単価診断で市場単価の目安を確認できます。
ケース2:10月独立・売上100万円・経費20万円
10月から独立し、3か月で売上100万円のケースです。
1〜9月分の給与所得:前職の源泉徴収票で集計
10月以降の事業所得:80万円(青色申告特別控除の前)
開業日10月1日。10月中に開業届と青色申告承認申請書を提出
給与所得と合算した所得で税額が決まる
事業所得自体は小さくても、退職前の給与所得と合算すると申告が必要になるケースが大半です。年の途中で退職して年末調整を受けていないため、給与から源泉徴収された所得税が還付になることもあります。
ケース3:副業から完全移行(年初は会社員)
会社員時代から副業をしていて、年の途中で独立したケースです。
1月〜独立まで:給与所得+副業の所得
独立後:事業所得
副業時代の売上・経費も同じ年なら同じ申告に含める
副業時代の所得区分(雑所得か事業所得か)は判断が分かれることがあります。継続的に受託していて帳簿も保存している場合は事業所得として扱える可能性が高いものの、個別事情で変わるため迷ったら税理士に相談するのが安全です。副業時代の論点は副業エンジニアの確定申告も参考になります。
初年度に起きやすい失敗と対策
初年度の失敗は、ある程度パターン化されています。事前に知っておけば避けられます。
開業届の期限に合わせて青色申請まで先送りする
2026年以後の開業では、開業届は確定申告期限までに出せば間に合います。これを見て青色申告承認申請書も後回しにすると、2ヶ月の期限を過ぎて初年度は白色申告になります。
対策:独立を決めたら、開業届と青色申告承認申請書はセットで提出します。税務署窓口・郵送・e-Taxのいずれでも出せます。
領収書をまとめて捨てる
「使うかわからない」と領収書をその場で処分すると、年末に経費計上できる支出を取りこぼします。
対策:レシート用の封筒・ファイル・アプリを用意し、その日のうちに保管する習慣をつけます。PDFで受け取った請求書は電子データのまま保存します。
事業用と生活用の口座・カードを分けない
事業の入出金と生活費が混ざると、年末の帳簿付けで仕分けが膨大になります。税務調査で説明しにくくなる点も見逃せません。
対策:独立時に事業用の銀行口座と事業用クレジットカードを別途用意します。屋号付き口座の作り方は屋号付き銀行口座の解説を参照してください。
年明けに慌てて帳簿付け
12月までノータッチで、申告期に1年分をまとめて入力しようとすると、取引内容を思い出せない月が出ます。
対策:会計ソフトを開業初月に契約し、月次で入力する仕組みを作ります。
2年目の住民税・国保の通知で資金が足りなくなる
初年度は所得税以外の請求がほとんど来ないため、手元の資金を使ってしまいがちです。2年目の6月以降、住民税と国民健康保険料の通知がまとめて届きます。
対策:入金のたびに一定額を納税用口座へ移しておきます。いくら残すかは、初年度の決算を会計ソフトで試算すると見えてきます。
経費の按分根拠を残さない
家賃や通信費の按分比率を「なんとなく30%」で計上すると、税務調査で根拠を聞かれて答えられません。
対策:按分根拠は面積比や時間比などの計算メモとして保管します。Excelやテキストファイルでも構いません。
初年度確定申告 実践チェックリスト
開業から申告、2年目の納税までを一つのチェックリストにまとめました。コピーして自分の進捗管理に使ってください。
開業直後(開業日から2か月以内)
青色申告承認申請書を税務署に提出
開業届を税務署に提出(青色と同時が安全)
提出の控え(e-Taxの受信通知、または窓口でもらった日付入りリーフレット)を保存
事業用の銀行口座を開設
事業用クレジットカードを発行
会計ソフトを契約(freee・マネーフォワード・弥生など)
月次(毎月)
請求書を発行・送付
入金確認
領収書・レシートをスキャン保管
会計ソフトに仕訳入力
納税用口座へ資金を移す
年末(12月)
年内に支払う経費の最終確認
国民年金・国民健康保険の支払証明書を保管
小規模企業共済・iDeCoの掛金確認
開業費の集計(独立1年目のみ)
申告期(1〜3月)
控除証明書と前職の源泉徴収票を確認
会計ソフトで年次決算
青色申告決算書(または収支内訳書)を作成
確定申告書を作成
e-Taxまたは郵送で提出(令和8年分は2027年2月16日〜3月15日)
納税または還付の受け取り
2年目(6月〜11月)
住民税・国民健康保険料の通知を確認し、納期を把握
予定納税の通知が来たら金額と納期(7月・11月)を確認
75万円控除を狙う場合は、要件と届出の期限を確認
まとめ
フリーランスの初めての確定申告は、開業から2か月以内の青色申請と、月次の記帳習慣でほぼ決まります。2026年に独立した人は、令和8年分を2027年3月15日までに申告します。
青色申告承認申請書は開業日から2か月以内。開業届は期限が延びても同時に出す
令和8年分の基礎控除は合計所得489万円以下で104万円。住民税は43万円のまま
事業用の口座とカードを分け、会計ソフトに連携して月次で入力する
12月末までに控除証明書をそろえ、必要に応じて節税策を打つ
2027年2月16日〜3月15日にe-Taxで申告し、65万円控除の要件を満たす
2年目の住民税・国保・予定納税に備え、納税資金を取り分けておく
売上が小さい初年度でも、赤字の繰越や還付で申告するメリットは出ます。独立後の単価の考え方はフリーランスエンジニアの単価相場と単価の上げ方で整理しています。今の自分の市場単価を確かめたい方はフリーランスエンジニア単価診断も使ってみてください。
判断に迷う論点は、国税庁のタックスアンサーや確定申告書等作成コーナーで確認し、必要に応じて税理士や税務署の相談窓口を活用してください。本記事は2026年10月時点の法令・国税庁の公表情報に基づいています。税制や申告期限は年によって変わるため、最新情報は国税庁の確定申告特集ページで確認し、個別の税務判断は税理士に相談してください。
よくある質問
事業所得が30万円程度。確定申告は必要?
ほかに所得がなければ、令和8年分は基礎控除(合計所得489万円以下なら104万円)を下回るため、所得税の確定申告義務は原則ありません。ただし住民税の基礎控除は43万円のままなので、住民税の申告が必要になる場合があります。源泉徴収されている報酬があれば、申告すると還付になる可能性があります。
開業届を出していない期間の売上はどう扱う?
開業届を出していなくても、事業を行っていた実態があれば事業所得として申告できます。開業届に記載する開業日は、実際に事業を始めた日です。ただし青色申告承認申請書の2か月期限は後から延ばせないため、期限を過ぎていればその年は白色申告になります。
開業届の控えに受付印がもらえない。屋号付き口座の開設はどうする?
2025年1月以降、控えに受付印は押されません。国税当局は金融機関に対して、受付印のある控えを求めないよう依頼しています。e-Taxの受信通知や、窓口でその場で受け取れる日付入りリーフレットを保存しておき、口座開設時に金融機関の指示に従って提示します。
確定申告は税理士に頼むべき?
売上規模・経理経験・時間的余裕で判断します。消費税の課税事業者になるタイミングや、法人化を検討する段階では相談するメリットが大きくなります。費用は地域・売上規模・業務範囲で大きく異なるため、税理士費用と依頼の判断基準も参考に、複数の事務所で見積もりを取るのが安全です。
青色申告と白色申告、初年度はどちらを選ぶべき?
会計ソフトを使う前提なら、青色申告を選ぶケースが多くなります。65万円(または55万円・10万円)の控除と赤字の繰越ができるためです。ただし開業日から2か月以内に青色申告承認申請書を出す必要があるため、開業届と同時に提出するのが安全です。
クライアントに源泉徴収されていた場合、何か手続きは必要?
源泉徴収された税額は、確定申告で精算されます。納めすぎていれば還付されるため、支払明細や支払調書(受け取れた場合)で源泉徴収税額を確認しておきます。なお、エンジニアの業務委託報酬は原則として源泉徴収の対象外で、原稿料・デザイン料などに該当する部分があると対象になります。
開業費は何年分まで遡れる?
明確な年数の上限が一律に定まっているわけではありません。開業準備のための支出であることを説明できるかが重要です。判断に迷う支出は税理士や税務署に確認してください。
申告書を間違えて提出してしまった。どうする?
申告期限内なら、正しい内容で申告書を再提出すれば訂正できます。期限後に気づいた場合は、税額が増える方向なら「修正申告」、減る方向なら「更正の請求」です。更正の請求は原則として法定申告期限から5年以内です。手順は修正申告・更正の請求のやり方で解説しています。
還付金はいつ振り込まれる?
e-Taxで提出した方が書面より早い傾向がありますが、提出時期や混雑状況で変わります。具体的な処理期間は国税庁の公表情報を確認してください。還付申告の対象や遡れる期間は還付申告の解説にまとめています。
確定申告で住民税の徴収方法を選べる?
給与所得がある場合は、給与以外の所得にかかる住民税を自分で納付するか給与天引きにするかを申告書で選ぶ欄があります。事業所得分は通常、自分で納付(普通徴収)する形です。自治体の運用や所得区分によっては希望どおりにならないこともあるため、不安があれば自治体に確認してください。
売上1,000万円を超えそう。何をすればいい?
原則として、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えると、その2年後に消費税の課税事業者になります。特定期間の判定やインボイス登録の有無で扱いが変わるため、消費税・インボイスの解説を確認のうえ、税理士に相談するのが安全です。
確定申告のために残しておく書類は何年分?
青色申告では、帳簿と決算関係書類は原則7年間、請求書・領収書・契約書などは5年間または7年間の保存が必要です。電子取引で受け取った請求書は電子帳簿保存法に基づき電子データのまま保存します。詳細は電子帳簿保存法の記事を参照してください。
確定申告書類はどこで入手できる?
紙の様式は税務署や確定申告会場で配布されているほか、国税庁の確定申告書等作成コーナーで作成して印刷できます。e-Taxで提出するなら紙の様式は不要です。
