インボイス経過措置は2026年10月に70%へ|免税フリーランスの単価交渉
最終更新日:2026/09/28
インボイスの経過措置とは、免税事業者へ支払った消費税の一定割合を発注側が控除できる時限措置で、2026年10月1日の課税仕入れから80%が70%に下がります。免税のまま働くエンジニアには、取引先のコスト増が単価交渉として跳ね返ります。増える額を数字で押さえ、交渉の落としどころを決められる状態にします。
先に結論
2026年10月1日以後の課税仕入れから、発注側が控除できる割合は80%→70%に下がります
判定は請求書の発行日ではなく課税仕入れを行った日。準委任などの役務提供は、原則として役務の完了日ベースで80%か70%かが分かれます
標準税率10%の取引では、発注側の実質負担は本体価格の2%から3%へ、差し引き1%分だけ増えます
本体月100万円の契約なら、発注側の負担増は月1万円・年12万円です
「消費税分の10%を下げてほしい」という要請は、今回の経過措置変更だけを根拠にするなら増加分の10倍を求める過大な要請です
免税事業者であることを理由にした一方的な減額通告は、取引関係や発注者の地位、協議の有無などによっては取適法・フリーランス法・独占禁止法上の問題になり得ます
登録する場合、2割特例は令和8年分で終わり、令和9年分・令和10年分は3割特例に切り替わります(個人事業者のみ)
この記事でわかること
2026年10月に何がどう変わり、9月納品分と10月納品分でどちらの割合が適用されるか
発注側のコスト増を本体価格ベースで計算した早見表(月額単価別)
値引き要請を受けたときに、過大要求かどうかを判断する基準
客先常駐・受託・エージェント経由それぞれで影響の出方がどう違うか
登録する/しないを分ける判断材料と、登録後の納税額の見込み
対象は、インボイス未登録のまま活動している個人事業主のエンジニアです。すでに登録済みの方は、後半の「登録済みの人に効いてくる変更」から読むと早いでしょう。
目次
2026年10月に変わるのは「取引先が引ける割合」
発注側の負担はいくら増えるのか
単価交渉でこの数字がどう使われるか
一方的な減額通告は違法になり得る
登録する/しないをどう判断するか
ケース別に見る影響の出方
よくある失敗と対策
10月をまたぐ前後にやることチェックリスト
まとめ
よくある質問
2026年10月に変わるのは「取引先が引ける割合」
結論から言えば、変わるのはあなたの納税額ではありません。あなたに発注している側が、支払った消費税のうちどれだけを控除できるかです。免税事業者のままなら、消費税の申告義務は今までどおり発生しません。
制度そのものの成り立ちや、適格請求書の記載事項については「【インボイスとは?】フリーランスエンジニアが知るべきポイントと対策」で解説しています。ここでは2026年10月の変更点と、それが取引条件に与える影響だけを扱います。
控除割合は7割・5割・3割へと段階的に下がる
令和8年度税制改正で、経過措置は適用期限が2年延長されたうえ、控除できる割合が見直されました。国税庁の令和8年度税制改正特集に掲載されているスケジュールは次のとおりです。
課税仕入れの時期 | 控除できる割合 | 改正前の予定 |
|---|---|---|
〜令和8年(2026年)9月30日 | 80% | 80% |
令和8年10月1日〜令和10年9月30日 | 70% | 50% |
令和10年(2028年)10月1日〜令和12年9月30日 | 50% | 0%(終了) |
令和12年(2030年)10月1日〜令和13年9月30日 | 30% | - |
令和13年(2031年)10月1日以後 | 0%(終了) | - |
改正前は2026年10月にいきなり50%へ落ち、2029年10月で打ち切りという予定でした。改正後は下げ幅が緩やかになり、終了時期も2031年9月末まで延びています。免税事業者にとっては、猶予が2年伸びた形です。
ただ、猶予が伸びたことと、目先の値引き圧力が消えることは別の話です。発注側から見れば、10月をまたいだ瞬間にコストが上がる事実は変わりません。
9月納品分と10月納品分で割合が分かれる
判定の基準は、課税仕入れを行った日です。役務の提供を受けた場合、課税仕入れの時期は原則としてその役務の全部が完了した日になります。
月末締めの準委任契約なら、9月中に役務提供が完了した分は80%、10月中に完了した分は70%です。請求書を10月に発行しても、9月中に完了した分であれば80%のまま扱われるのが原則になります。
請負で成果物を納品する契約だと、検収日や引渡日の設定によって判定が動くことがあります。10月をまたぐ案件を持っているなら、取引先の経理担当がどの日付で処理するかを一度確認しておくと、後から金額がずれる事故を避けられます。
なお、同時に「控除限度額の見直し」も入りました。一の免税事業者等からの課税仕入れが年間1億円を超えると、超えた部分は経過措置の対象外になります(改正前は10億円)。個人で受託するエンジニアの規模では、まず関係しません。
ミニFAQ:9月に締めた分の請求書を10月に出したら、割合は70%になりますか。
原則として、9月に役務提供が完了しているなら80%です。請求書の発行日ではなく、課税仕入れの時期で判定します。ただし契約形態によって完了日の考え方が変わるため、取引先の処理方法を確認してください。
発注側の負担はいくら増えるのか
ここが交渉の土台になります。値引きを打診されたとき、相手のコスト増が本当はいくらなのかを知らないまま話すと、根拠のない数字を飲まされかねません。
消費税率10%の取引で計算します。本体価格10万円、消費税1万円、税込11万円という契約を例にします。
時期 | 控除できる額 | 控除できない額 | 本体価格に対する実質負担 |
|---|---|---|---|
〜2026年9月(80%) | 8,000円 | 2,000円 | 2% |
2026年10月〜(70%) | 7,000円 | 3,000円 | 3% |
2028年10月〜(50%) | 5,000円 | 5,000円 | 5% |
2030年10月〜(30%) | 3,000円 | 7,000円 | 7% |
2031年10月〜(0%) | 0円 | 10,000円 | 10% |
覚えるべき数字はひとつです。今回の変更による負担増は、本体価格の1%。それ以上でもそれ以下でもありません。
月額単価別の負担増早見表
準委任の月額契約に置き換えると、次のようになります。本体価格(税抜)ベースです。
本体月額 | 9月までの負担 | 10月からの負担 | 月あたりの増加 | 年間の増加 |
|---|---|---|---|---|
60万円 | 1.2万円 | 1.8万円 | +6,000円 | +7.2万円 |
80万円 | 1.6万円 | 2.4万円 | +8,000円 | +9.6万円 |
100万円 | 2.0万円 | 3.0万円 | +1.0万円 | +12.0万円 |
120万円 | 2.4万円 | 3.6万円 | +1.2万円 | +14.4万円 |
月100万円の契約で、増えるのは月1万円です。年間でも12万円。発注側にとって無視できる額ではありませんが、単価そのものを大きく動かすほどの規模でもありません。
この非対称性が交渉のポイントになります。発注側は「消費税の扱いが変わるので」と切り出しますが、実際に増えるのは1%分だけです。
ミニFAQ:消費税率8%の取引だと計算は変わりますか。
変わります。軽減税率8%の取引なら、増加分は本体価格の0.8%です。ただしエンジニアの受託業務は基本的に標準税率10%の対象なので、実務上は10%で考えて差し支えありません。
単価交渉でこの数字がどう使われるか
結論として、要請された値引き幅が本体価格の1%を大きく超えるなら、経過措置の変更以外の理由が混ざっています。そこを切り分けて話すのが交渉の第一歩です。
「消費税分を下げてほしい」は過大要求
よくある切り出し方を、実際の負担増と並べてみます。
打診の内容 | 本体100万円での要求額 | 実際の負担増 | 評価 |
|---|---|---|---|
「消費税分の10%を」 | 10万円 | 1万円 | 増加分の10倍。今回の変更だけを根拠にするなら過大 |
「3%下げてほしい」 | 3万円 | 1万円 | 経過措置全体の負担分。要協議 |
「1%だけ調整させて」 | 1万円 | 1万円 | 増加分と一致 |
3%の要請は、2026年10月時点で発注側が負担する分の全額です。つまり今回増えた1%だけでなく、制度開始時から負担していた2%も合わせて回収しようという話になります。理屈が通らないわけではありませんが、「今回の変更で増えたのは1%です」と数字で返せるかどうかで着地点は変わります。
実務で見られる落としどころは、増加分の折半(本体の0.5%)、次回更新までの据え置き、稼働日数や作業範囲の調整で吸収といったあたりです。単価そのものを動かさずに、月1日分の稼働を減らして帳尻を合わせる形もあります。
交渉の進め方そのものは「フリーランスエンジニアの単価交渉のコツ|タイミング・伝え方・根拠の作り方」で整理しています。根拠の作り方は今回のケースでもそのまま使えます。
エージェント経由と直取引で効き方が違う
影響の出方は、契約の経路によって変わります。
エージェント経由の場合、あなたに支払っているのはエージェント(法人・課税事業者)です。控除できない分を負担するのもエージェント側になります。エンド企業への請求額は変わらないため、コスト増はエージェントのマージン内で吸収されるか、あなたへの支払額に転嫁されるかの二択です。担当者から「精算方法の変更」という形で連絡が来ることがあります。
エンド直取引の場合、負担するのは発注企業そのものです。経理部門がまとめて取引先を洗い出し、免税事業者に一斉に案内を出すケースが見られます。担当者個人の判断ではなく会社の方針として来るため、個別交渉の余地は相対的に小さくなりがちです。
取引先が簡易課税や2割特例を使っている場合、そもそも実額での仕入税額控除を行っていないため、あなたが免税かどうかで納税額は変わりません。この場合、少なくともその時点の消費税納税額の増加を根拠にした値引き要請は弱くなります。小規模な事業者や個人からの受注が中心なら、まず相手の申告方法を確認する価値があります。ただし申告方法は相手の内部情報なので、開示されないことも珍しくありません。答えが得られない場合は、相手が主張する増加額の根拠提示を求めるだけでも交渉材料になります。
ミニFAQ:エージェントから「10月以降は支払額を1%下げる」と連絡が来ました。応じるべきですか。
増加分と一致する提示なので、金額の根拠自体は筋が通っています。判断材料は他にあります。契約書に単価変更の手続きが定められているか、協議の機会が設けられたか、次回更新での回復余地があるか。数字の妥当性と手続きの妥当性は別に見てください。
一方的な減額通告は違法になり得る
制度上の負担増が実在することと、それを一方的に押し付けてよいことは別です。ここは公表されているQ&Aに沿って整理できる部分です。
公正取引委員会などが公表している「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」では、課税事業者にならなければ取引価格を引き下げる、応じなければ取引を打ち切るなどと一方的に通告することは、独占禁止法上または下請法上問題となるおそれがあると示されています。問題になる前提として、発注側の地位が優越しており、受注側が取引への影響を懸念して受け入れざるを得ない状況にあることが挙げられています。
加えて2026年1月1日から、下請法は「中小受託取引適正化法(取適法)」に改称されたうえで内容が改正されました。買いたたきの禁止や、協議に応じない一方的な代金決定への規制が含まれます。改正内容は「【2026年1月最新】下請法から「取引適正化法(取適法)」へ改正。フリーランスに影響する変更点まとめ」でまとめています。
フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)にも、報酬の減額禁止や取引条件の明示義務があります。なお、どの法律が問題になるかは、発注者の資本金区分・取引類型・優越的地位の有無などで変わります。同じ通告でも、相手の属性によって使える根拠が違うということです。具体的な対応手順は「単価引き下げ・契約変更を一方的通告された時の対応|フリーランス新法・取適法の守られるライン」が詳しいので、通告を受けた段階で目を通しておくと動きやすくなります。
協議の記録を残しておく
問題になりやすいのは「協議がなかった」ケースです。金額の妥当性より、手続きが争点になります。
打診を受けたら、口頭のやり取りだけで終わらせず、メールやチャットに残る形で経緯を確認しておくのが現実的です。「10月以降の単価について、先日お話しした内容を確認させてください」と一往復するだけでも、記録としての意味は変わります。合意した場合は、変更後の単価と適用開始月を書面に落としておきましょう。
ミニFAQ:値引きに応じないと言ったら契約を切られそうです。
取引の打ち切りをちらつかせて要請を通す行為は、問題となるおそれがあると公正取引委員会が示しています。ただ、実務としては「違法だから応じない」と正面から返すより、増加分の数字を示したうえで折半や期限付きの調整を提案するほうが、関係を保ったまま着地しやすい場面が多いはずです。公正取引委員会はインボイス制度関連の相談窓口を設けているので、悪質な場合はそちらも使えます。
登録する/しないをどう判断するか
2026年10月は、登録を見直すきっかけになるタイミングです。判断の軸は、取引先の顔ぶれと、登録した場合の納税負担の2つに絞れます。
取引先の構成で答えが変わる
主な取引先 | 経過措置縮小の影響 | 登録の必要性 |
|---|---|---|
一般課税の事業会社・エージェント | 相手のコスト増。値引き要請が来やすい | 検討する価値が大きい |
簡易課税・2割特例の小規模事業者 | 相手の納税額は変わらない | 低い |
消費者向けサービス(BtoC) | 影響なし | 低い |
免税事業者 | 影響なし | 低い |
エンジニアの受託は、エンド企業やエージェントとの取引が中心になるケースが多いでしょう。その場合、相手は一般課税である可能性が高く、影響を受ける側に立つことになります。
課税事業者になるかどうかの判定や、簡易課税の仕組みは「フリーランスエンジニアの消費税|インボイス・課税事業者判定・簡易課税まで解説」に整理があります。
登録した場合、納税額はいくらになるか
登録すると課税事業者になり、消費税の申告が発生します。ここで押さえておきたいのが、負担軽減措置の切り替わりです。
現行の2割特例は、令和8年9月30日までの日が属する課税期間で終了します。個人事業者なら令和8年分(2026年分)の申告が最後です。制度の内容は「インボイス2割特例とは|対象・計算方法・いつまで使えるかを解説」で確認できます。
その後継として、令和9年分・令和10年分に3割特例が創設されました。売上にかかる消費税額の3割を納税額とする仕組みで、個人事業者だけが対象です。法人には適用されません。基準期間の課税売上高が1,000万円を超える課税期間などは対象外になります。事前の届出は不要で、確定申告書にその旨を付記する形です。
エンジニアにとって重要なのは、簡易課税との比較です。簡易課税のみなし仕入率は事業区分ごとに決まっており、役務提供が中心の受託は第5種事業(サービス業)に該当することが多い一方、業務内容によっては別区分の検討が必要になります。第5種のみなし仕入率は50%です。
申告方法 | 納税額の目安(売上税額に対する割合) | 対象年分 |
|---|---|---|
2割特例 | 20% | 令和8年分まで |
3割特例 | 30% | 令和9年分・令和10年分(個人事業者) |
簡易課税(第5種) | 50% | 制限なし(要届出) |
税抜売上1,000万円・売上税額100万円の個人事業者なら、2割特例で20万円、3割特例で30万円、簡易課税の第5種で50万円という並びになります。令和9年分・令和10年分については、簡易課税の第5種と比べる限り、3割特例のほうが納税額を抑えやすい計算です。ただし事業区分は実際の業務内容で判定されるため、請負の内容によっては別区分になることもあります。判断に迷う場合は税務署か税理士に確認してください。
令和11年分からは3割特例が使えなくなります。その際は簡易課税への切り替えを検討することになりますが、届出期限に特例が設けられました。2割特例や3割特例を適用した事業者は、翌課税期間に係る確定申告期限までに簡易課税制度選択届出書を提出すれば、その翌課税期間から簡易課税を適用できます。個人事業者なら、令和11年分の消費税の確定申告期限までに出せば間に合う形です。詳細は国税庁のインボイス制度に関するQ&Aに問答が掲載されています。
すでに登録していて、やはり免税に戻したいという場合の手続きと2年縛りの注意点は「インボイス登録の取りやめ|判断基準と手続き・取引への影響」にまとめてあります。
自分の単価水準がそもそも市場と合っているかを確かめたい方は、無料のフリーランスエンジニア単価診断で目安を確認できます。値引き交渉に入る前に、現在の単価が相場に対してどの位置にあるかを知っておくと、判断がぶれにくくなります。
ミニFAQ:10月1日に間に合うように登録すべきですか。
急ぐ必要は薄いはずです。登録すれば納税義務が発生し、税負担は増えます。ただし取引の維持や単価条件次第で総合的な損得は変わるため、そこは個別に比べる話です。経過措置自体は2031年9月末まで続くので、値引き要請の具体的な金額を見てから決めても選択肢は残ります。
ケース別に見る影響の出方
客先常駐・準委任で稼働している場合
月額固定の契約が中心になるため、負担増の計算はシンプルです。本体月額の1%が、取引先の追加コストになります。契約更新のタイミングと10月がずれていると、期中の単価変更を求められることがあります。契約書に単価変更の手続きが定められているかを先に確認してください。
受託開発・請負の場合
案件単位の契約なので、10月をまたぐプロジェクトで判定が問題になります。検収日や引渡日をどう設定しているかで、80%と70%のどちらが適用されるかが分かれます。見積もりを出す段階で、納品予定が10月以降なら70%前提で話が進むと考えておくとよいでしょう。
副業で受けている場合
売上規模が小さければ、取引先が個人や小規模事業者であることも多く、相手が簡易課税や2割特例を使っていれば影響は出ません。まず相手の申告方法を確認するのが先です。副業全般の税務は「副業エンジニアの確定申告|20万円ルール・経費・住民税の落とし穴を徹底解説」を参照してください。
すでに登録済みの場合
経過措置は免税事業者からの仕入れに関する制度なので、あなたが受け取る報酬には影響しません。ただし、あなた自身が免税事業者に外注しているなら、控除できる額が減ります。外注費の扱いと、2割特例から3割特例への切り替えの2点を押さえておけば十分です。
よくある失敗と対策
増加分を確認せずに値引きを飲む
最も多いパターンです。「制度が変わるので」と言われると、金額の妥当性を検証しないまま応じてしまいがちになります。本体価格の1%という基準を手元に持っておけば、その場で判断できます。
口頭合意のまま請求額だけ変わる
書面を残さずに合意すると、後から「いつから」「いくら」が食い違います。適用開始月を明記した確認メールを一本送るだけで防げます。請求書の記載項目は「フリーランスエンジニアの請求書の書き方|インボイス対応・記載項目・テンプレートを徹底解説」にまとめています。
登録すれば値引きを回避できると思い込む
登録すれば取引先のコスト増はなくなります。ただし今度は自分が納税します。売上税額の2割から3割(特例適用時)が出ていくため、手取りベースでは値引きに応じたほうが有利なケースもあります。両方を数字にして比べてから決めてください。
2割特例が続く前提で資金計画を立てる
令和8年分で終了します。令和9年分からは3割特例、令和11年分以降は簡易課税か一般課税です。納税額が段階的に上がるため、資金繰りの見通しは年単位で引き直しておく必要があります。確定申告全体の流れは「フリーランスエンジニアの確定申告|やり方・必要書類・期限をわかりやすく解説」で確認できます。
10月をまたぐ前後にやることチェックリスト
取引先ごとに、一般課税か簡易課税・2割特例かを確認する
10月をまたぐ案件について、役務完了日・検収日の扱いを経理担当に確認する
契約書で単価変更の手続きがどう定められているかを読み直す
本体月額の1%を計算し、増加分の実額を把握しておく
値引き打診を受けたら、金額の根拠と適用開始月を書面で確認する
登録を検討する場合、3割特例と簡易課税で納税額を試算して比較する
合意内容は変更後の単価と適用開始月をセットで記録に残す
単価を構造的に引き上げる考え方は「フリーランスエンジニアの単価相場と単価の上げ方」で体系的に整理しています。値引き圧力への最終的な対策は、代替の効かない立ち位置を作ることです。
まとめ
2026年10月の変更で発注側に増えるコストは、本体価格の1%です。この数字を持って交渉に臨めば、過大な値引き要請かどうかはその場で判断できます。
控除割合は80%から70%へ。以後、2028年10月に50%、2030年10月に30%、2031年10月に終了します
判定は課税仕入れを行った日。9月完了分は80%、10月完了分は70%が原則です
本体月100万円なら、発注側の負担増は月1万円・年12万円です
「消費税分の10%を」という要請は、今回の変更による増加分の10倍にあたります
一方的な減額通告は、発注者の地位や協議の有無などによっては取適法・フリーランス法・独占禁止法上の問題になり得ます
取引先が簡易課税や2割特例なら、そもそも影響がありません
登録する場合、令和8年分で2割特例が終わり、令和9年分から3割特例(個人事業者のみ)に切り替わります
次にやることは2つです。取引先ごとの申告方法を確認すること。そして本体月額の1%を計算して、手元に置いておくこと。打診が来てから調べ始めると、相手のペースで話が進みます。
消費税の申告方法や個別の事業区分の判定は、事業の実態によって結論が変わります。金額の影響が大きい場合は、税理士への確認をおすすめします。
参照した一次情報は次のとおりです。
国税庁「令和8年度税制改正特集(インボイス制度)」
国税庁「インボイス制度に関するQ&A目次一覧」
国税庁「2割特例 特設ページ」
公正取引委員会ほか「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」
公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)関係」
よくある質問
免税事業者のままだと、2026年10月から自分の納税額は増えますか
増えません。経過措置は発注側の仕入税額控除に関する制度です。免税事業者である限り、消費税の申告義務も納税義務も発生しません。増えるのはあなたに支払う側のコストです。
取引先から「10月から消費税分は支払わない」と言われました
消費税相当額を一方的に支払わないとする扱いは、実質的な報酬の減額にあたります。免税事業者であっても、取引価格に消費税相当額を含めて請求すること自体は妨げられません。公正取引委員会のQ&Aでも、一方的な通告は問題となるおそれがあるとされています。まず協議を求めてください。
9月中に急いで納品すれば80%が適用されますか
役務提供が9月30日までに完了していれば、原則として80%です。ただし契約上の完了日や検収日の定め方によって判定が変わります。取引先と認識を合わせないまま前倒しすると、かえって揉める原因になります。
3割特例は法人でも使えますか
使えません。個人事業者のみが対象です。マイクロ法人を設立している場合、令和9年以降は2割特例も3割特例も適用できず、簡易課税か一般課税での申告になります。
3割特例を使うのに届出は必要ですか
事前の届出は不要です。確定申告書に3割特例の適用を受ける旨を付記します。ただし基準期間の課税売上高が1,000万円を超える課税期間や、課税期間を短縮している場合などは適用できません。
簡易課税と3割特例はどちらが有利ですか
売上税額に対する納税割合で比べます。3割特例は30%、簡易課税の第5種(サービス業)は50%です。システム開発が第5種に区分されるなら、令和9年分・令和10年分は3割特例が有利になります。ただし多額の設備投資があって還付が見込まれる年は、一般課税のほうが有利になることもあります。
エージェント経由なら影響はありませんか
影響はあります。控除できない分を負担するのがエージェントになるだけで、負担そのものは発生します。支払額の見直しという形で転嫁される可能性があるため、契約更新時の条件は確認しておいてください。
値引きに応じた場合、あとで戻せますか
契約更新のタイミングで再交渉は可能です。合意の際に「次回更新時に見直す」と条件を付けておくと、話を戻しやすくなります。期限を切らずに単価を下げると、その水準が既定路線になりがちです。
経過措置が終わる2031年までに何を準備すべきですか
控除できない額は最終的に本体価格の10%に達します。免税のまま続けるなら、その差を吸収できるだけの発注理由が必要です。登録して課税事業者になる、単価水準を上げる、消費者向けや免税事業者向けの取引比率を高めるといった選択肢があります。
控除限度額の1億円ルールは自分に関係しますか
まず関係しません。一の免税事業者等からの課税仕入れが年間1億円を超える場合の制限なので、個人で受託する規模では該当しないはずです。この見直しは令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。
取引先が簡易課税かどうかは聞いてもよいのですか
聞いて差し支えありません。値引き要請の根拠を確認する文脈なら、不自然な質問にはならないでしょう。「仕入税額控除の方法によって影響が変わると理解しているので、確認させてください」という聞き方であれば角も立ちにくいはずです。
登録の取りやめを考えていますが、いま動くべきですか
2年縛りなどの制限があるため、タイミングは慎重に判断する必要があります。登録の取消しには課税期間との関係で期限があり、意図した時期に戻れないことがあります。手続きと判断基準は登録取りやめの記事を確認してください。
