フリーランスの赤字と損益通算|純損失の繰越控除・繰戻還付の実務
最終更新日:2026/07/19
フリーランスの赤字は、事業所得なら給与などと損益通算できます。青色申告なら通算後に残った純損失を原則3年間繰り越せます。稼働が止まった年、機材投資が重なった年、副業から独立した年に効くのがこの制度です。事業所得と雑所得の分かれ目、繰越と繰戻還付の使い分け、令和8年分(本記事は公開時点基準)の申告で押さえるべき手続きまで、フリーランスエンジニアの実務に即して整理します。
先に結論
フリーランスの赤字は、事業所得なら給与などと損益通算できます。青色申告なら通算後に残った純損失を原則3年間繰り越せます。
事業所得の赤字は、給与所得や不動産所得など他の所得と相殺できる。これを損益通算という
損益通算しても残った損失(純損失)は、損失年に青色申告書を提出していれば、翌年以降3年間繰り越して黒字と差し引ける
前年・本年ともに青色申告書を提出している場合は、純損失を前年分に戻して所得税の還付を受ける「繰戻還付」も選べる
白色申告では原則、純損失の繰越はできない。使えるのは変動所得と被災事業用資産の損失のみ
事業所得と認められるかは、営利性・継続性・帳簿保存・事業規模などを含めて総合判断される。単発の副業収入では雑所得扱いになりやすく通算できない
この記事でわかること
事業所得と雑所得の分かれ目と、赤字が通算できる条件
損益通算の対象所得・順序・使えない例外
純損失の繰越控除(3年繰越)と繰戻還付の使い分け
独立初年度/副業からの独立/継続開業別の赤字対応
令和8年分の申告で使う書類と実務チェックリスト
目次
事業所得と雑所得のどちらか|赤字通算の入口
損益通算の基本ルール|対象所得と通算の順序
純損失の繰越控除|青色申告なら翌年から3年繰越
純損失の繰戻還付|前年に納めた所得税を取り戻す
フリーランスエンジニアの赤字パターン別|通算と繰越の実務
損益通算のシミュレーション|数字で見る税負担の変化
赤字を出すときに気をつけたい実務ポイント
令和8年分の申告で使う書類チェックリスト
まとめ
よくある質問
事業所得と雑所得のどちらか|赤字通算の入口
赤字を他の所得と通算できるかは、収入が「事業所得」か「雑所得」かで決まります。 フリーランスエンジニアの業務委託収入は、営利性・継続性・帳簿保存・事業規模などの実態から事業所得と認められることがあります。副業規模で継続性が薄い場合や実態が伴わない場合は雑所得扱いになり、赤字が出ても給与所得と通算できません。ここが赤字対応のスタート地点です。
事業所得なら他の所得と通算できる
事業所得として認められた場合、機材購入・研修費・外注費などで経費が売上を上回れば事業所得の赤字が発生します。この赤字は同じ年の他の所得(給与所得、不動産所得など)から差し引けます(損益通算)。損益通算後になお残る損失が「純損失」として、翌年以降の繰越控除や繰戻還付の対象になります。副業から独立した年に会社員時代の給与所得と通算するケースが典型例です。
雑所得は赤字が出ても通算できない
雑所得の損失は、他の所得と損益通算できません。 業務委託の副収入を雑所得で申告している場合、経費超過で計算上赤字になっても、給与所得と相殺して所得税を減らすことはできない仕組みです。国税庁のNo.2250 損益通算にも、雑所得の損失は通算対象外と明記されています。
事業所得と認められる目安(令和4年通達の影響)
令和4年10月に国税庁が示した通達では、副業収入について「継続的に帳簿書類の記録・保存を行っている」ことが事業所得と判定するうえで重要な要素として位置づけられました。年収300万円以下でも帳簿保存があれば事業所得として認められる余地がありますが、帳簿保存のみで一律に決まるものではなく、営利性・継続性・事業規模など個別事情による総合判断です。詳しくは国税庁の所得税基本通達35-2を参照してください。
逆に、帳簿保存がない・稼働時間が極端に短い・営業実態が確認できないといった状態が続くと、税務調査で雑所得と認定されるリスクがあります。
ミニFAQ
Q. 独立1年目で売上が数十万円しかありませんが、事業所得で申告できますか?
売上額だけで判定されるわけではなく、開業届の提出、帳簿の記帳、営業活動の実態、継続性の有無を総合的に判断します。エンジニアとして継続受注する意思があり、帳簿を整えているなら事業所得で申告する余地があります。
Q. 会社員の副業でエンジニア案件を受けています。事業所得と雑所得のどちらですか?
帳簿保存は重要な判断要素ですが、それだけで決まるわけではなく、営利性・継続性・事業規模なども含めて総合判断されます。副業規模が小さい段階では雑所得と扱われるケースも多いため、判断が難しい場合は税理士か所轄の税務署に確認してください。
損益通算の基本ルール|対象所得と通算の順序
損益通算の対象は4つの所得だけです。 事業所得・不動産所得・山林所得・譲渡所得の損失に限られ、雑所得や配当所得の損失は他の所得と相殺できません。フリーランスエンジニアが使うのは主に事業所得です。
通算できる4種類の所得
所得区分 | 損益通算の可否 | フリーランスエンジニアの主な該当例 |
|---|---|---|
事業所得 | できる | 業務委託の開発・保守・受託収入(事業性あり) |
不動産所得 | できる | アパート経営・区分マンション貸付 |
山林所得 | できる | 該当するケースはまれ |
譲渡所得 | できる(一部制限あり) | 事業用資産の売却など |
雑所得 | できない | 副業規模の受託収入、原稿料、暗号資産取引 |
配当・一時所得 | できない | 株の配当、保険の解約返戻金 |
株式の譲渡損失や先物取引の損失など、租税特別措置法で他の所得と通算できないと定められているものは、上記4種類の枠内でも対象外です。
通算の順序(第一次〜第三次通算)
損失をどの所得から差し引くかには順序が決まっています。所得税法施行令に基づく順序をエンジニアが押さえる範囲でまとめると次のようになります。
第一次通算:経常所得グループ(利子・配当・不動産・事業・給与・雑)内で相殺。譲渡・一時所得グループ内でも相殺
第二次通算:第一次で残った損失を、他方のグループの黒字と相殺
第三次通算:それでも残る損失を、山林所得・退職所得と相殺
事業所得の損失は、その年の他の所得と法定の順序で通算されます。副業から独立した年に給与所得が残っている場合、事業所得の赤字が経常所得グループ内で相殺され、給与所得の税負担軽減につながることがあります。
通算できないケース
「生活に通常必要でない資産」の損失は、事業所得や譲渡所得に区分されても損益通算の対象外です。別荘、ゴルフ会員権、書画骨董などが該当します。エンジニアの実務では該当することは少ないものの、副業で不動産を保有している場合は要確認です。土地取得に係る借入金の利子部分も、不動産所得の損失としては通算対象外に位置づけられます。
ミニFAQ
Q. 事業所得の赤字を給与所得と通算すると、住民税も下がりますか?
住民税は前年の所得を基に計算されるため、確定申告で損益通算を反映させれば翌年の住民税の負担が軽減されます。国民健康保険料も所得連動部分は下がる方向に働きますが、均等割・平等割など所得と連動しない部分は残り、算定方法は自治体によって異なります。
純損失の繰越控除|青色申告なら翌年から3年繰越
損益通算しても残った損失は「純損失」として、青色申告なら翌年以後3年間繰り越せます。 単年で消し切れなかった赤字を、翌年以降の黒字と相殺して所得税・住民税を減らせる制度です。国税庁のNo.2070 青色申告制度に位置づけがあります。
青色申告なら3年繰越
青色申告承認申請書を提出し、承認を受けたフリーランスの場合、損失が生じた年に青色申告書を提出していれば、純損失を翌年から3年間繰り越して各年の所得から控除できます。繰越期間中は毎年、確定申告書に「純損失の金額の計算に関する明細書(第四表)」を添付します。1年でも申告を落とすと、その先の繰越が止まるので忘れずに続けます。
白色申告は原則使えない(例外あり)
白色申告の場合、純損失の繰越は原則できません。 使えるのは以下の2つに該当する損失だけです。
変動所得の損失(漁獲・原稿料・作曲料など。所得の変動が大きい業種)
被災事業用資産の損失(震災・風水害等で事業用資産が損壊)
フリーランスエンジニアの通常業務ではほぼ該当しないため、赤字対応を織り込むなら青色申告への切替が実質必須です。青色申告と白色申告の違いで選び方の判断基準を整理しています。
特定非常災害は5年繰越
特定非常災害の被災事業用資産による損失については、繰越期間が3年から5年に延長される規定があります。適用は災害指定の有無で決まり、通常のケースでは3年繰越が基本です。
途中の年に黒字が出たときの充当順序
繰越純損失は古い年分の損失から順に、その年の総所得金額等から差し引きます。翌年に黒字が出れば1年目の損失から消し込み、2年目・3年目に持ち越すのは1年目で消えなかった分と2年目以降の新規損失です。
ミニFAQ
Q. 青色申告承認申請書を出していない年に赤字が出たら、翌年から青色に切り替えて繰越できますか?
できません。純損失の繰越は「その損失が生じた年に青色申告書を提出している」ことが要件です。切替の効果は申請翌年以降にしか及ばないため、独立初年度から赤字が出そうな場合は開業届と同時に青色申告承認申請書を出すのが安全です。
Q. 3年間ずっと赤字が続いた場合、最初の年の損失はどうなりますか?
繰越期限を過ぎた分は消滅します。ただし、赤字が続く状態は「事業性」の観点で税務署から確認が入る可能性もあるため、事業の見直しや収益化計画の整理も並行して進めます。
純損失の繰戻還付|前年に納めた所得税を取り戻す
青色申告者は、純損失を翌年に繰り越す代わりに前年分に繰り戻して、前年に納付した所得税の還付を受けられます。 繰越は将来の税を減らす制度、繰戻は過去の税を取り戻す制度で、キャッシュフローが厳しい年に選ばれます。
制度の概要と要件
要件は次のとおりです。
損失が生じた年(本年)に青色申告書を提出していること
前年も青色申告書を提出していること
損失年の確定申告書に「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書」を添付すること
申告期限内に提出すること
前年の所得税額を上限に、当年の純損失に対応する分の還付を受けられます。前年の所得税が0円だった年に赤字が出ても、繰戻還付では取り戻せません。
手続きと必要書類
繰戻還付を選ぶときの提出物は次の組み合わせです。
本年の確定申告書(第一表・第二表・第四表)
純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書
青色申告決算書
書類は所轄の税務署に提出します。e-Taxでも対応しており、e-Taxで確定申告するやり方で操作手順を確認できます。
繰越と繰戻のどちらを選ぶか
判断軸は「前年の税負担」と「翌年以降の黒字見込み」です。前年に十分な所得税を納めていて、翌年以降しばらく大きな黒字が期待しづらいなら繰戻還付が有利です。逆に、翌年以降しっかり黒字化が見込めるなら繰越控除で3年かけて消し込む方が有利になる場合があります。
比較軸 | 繰越控除(翌年〜3年) | 繰戻還付(前年に戻す) |
|---|---|---|
資金化のタイミング | 翌年以降の申告時 | 損失年の申告後、還付金が入金される |
前年青色申告要件 | 損失年の青色申告のみで可 | 前年も青色申告が要件 |
資金額の上限 | 3年間の黒字次第 | 前年の所得税額まで |
向いているケース | 翌年以降黒字が続く見込み | 前年に納税額があり、今年キャッシュが必要 |
フリーランスエンジニアの赤字パターン別|通算と繰越の実務
同じ純損失でも、独立の時期や副業状況によって使える制度と手続きが変わります。 ここでは実務で頻出する4パターンを取り上げます。
パターン1:稼働が減った年に経費だけが残る
主要案件が終了し、次の案件を探している間に事務所家賃・通信費・機材リース料などの固定費だけが積み上がるケースです。売上が経費を下回れば事業所得が赤字になります。他に所得がなければその年の課税所得は0円になり、青色申告なら純損失を翌年以降に繰り越します。
自分の想定単価と稼働率の見立ては次のステップに直結します。市場の目安を知っておきたい場合は、無料のフリーランスエンジニア単価診断で現在の市場単価の目安を把握しておくと、次案件の交渉や事業計画の見直しに役立ちます。
パターン2:高額機材・研修投資で赤字
サーバ機材、GPU搭載マシン、有料の技術研修・カンファレンス参加費などで一時的に経費が膨らむ年です。10万円以上の減価償却資産は原則、耐用年数に応じて按分計上しますが、青色申告なら「少額減価償却資産の特例」で30万円未満(年間合計300万円まで)を一括で経費計上できます。特例を使うと赤字幅が広がり、翌年以降の税負担を圧縮しやすくなります。
パターン3:独立初年度で開業費が大きい
会社員から独立した最初の年は、名刺作成費・ドメイン取得費・独立準備の書籍代・出張旅費など「開業費」が積み上がりやすい時期です。開業費は繰延資産として計上し、任意の年に任意の金額を経費化できます。初年度から全額落として赤字を大きくするか、黒字化した後年に落として税負担を平準化するかを選べます。
初年度に赤字を出して純損失を繰り越すか、開業費を後年に繰延べて黒字を確保するかは、その後3年の売上見通しで判断が変わります。開業1年目の確定申告|売上規模別の判断と提出書類も判断材料になります。
パターン4:副業から独立した年(給与所得との通算)
年の途中で会社を退職し、フリーランスになった年です。1〜○月分の給与所得と、独立後の事業所得(初期投資で赤字)を1つの確定申告書で通算できます。給与所得400万円・事業所得△200万円なら、合計所得200万円で計算し、既に源泉徴収されていた所得税の一部が還付される流れです。
前職の源泉徴収票が必要になるため、退職時に必ず受け取っておきます。フリーランスエンジニアの確定申告|やり方・必要書類・期限にスケジュールがまとまっています。
ミニFAQ
Q. 独立1年目で青色申告承認申請書を出していなかった場合、初年度赤字は繰り越せませんか?
繰り越せません。開業から2か月以内、または独立年の3月15日までのいずれか早い期日までに青色申告承認申請書を提出しないと、初年度は白色扱いになります。初年度赤字が読める場合は開業届と同時に必ず提出します。
損益通算のシミュレーション|数字で見る税負担の変化
具体的な数字で見ると効果を実感しやすくなります。 以下は独身・扶養なし・基礎控除と社会保険料控除のみを想定した概算例です。実際の税額は所得控除・自治体・年齢・加入制度で変わるため、詳細は税理士や税務署に確認してください。
ケース1:会社員時代の給与と独立後の事業所得を通算
以下はあくまで概算例です(独身・扶養なし、給与所得控除・社会保険料等を簡略化した試算。実際は各種控除・自治体・年齢で変わります)。
給与所得(1〜6月・給与所得控除後):400万円
事業所得(7〜12月):△200万円
合計所得:200万円
基礎控除・社会保険料控除等:約100万円
課税所得:約100万円
給与時点で源泉徴収されていた所得税と比較して、差額が還付されることがあります。事業所得の赤字を通算しない場合と比べ、税負担が下がる方向に働きます。
ケース2:純損失の繰戻還付で前年に戻す
前年:黒字で所得税50万円を納付(青色申告)
本年:事業所得△300万円(青色申告)
繰戻還付:本年の損失に対応する分の所得税が還付される
前年に納付した所得税額を上限に還付されるため、前年黒字が大きいほど資金化できる幅が広がります。詳細な計算は「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書」に定型の計算式があり、青色申告決算書の書き方と合わせて整理しておくとスムーズです。
ケース3:3年繰越で翌年以降の黒字と相殺
1年目:事業所得△500万円(純損失500万円を繰越)
2年目:事業所得300万円 → 繰越純損失300万円を充当し課税所得0円
3年目:事業所得400万円 → 残った繰越純損失200万円を充当し課税所得200万円
4年目:繰越残なし
3年間で500万円分の課税所得を圧縮できる計算です。年収の変動が大きいフリーランスにとって、繰越控除は税負担の平準化にも寄与します。
赤字を出すときに気をつけたい実務ポイント
赤字通算・繰越を確実に使うには、事業所得と認められる実態と帳簿保存が要件になります。 赤字が続く年ほど税務署から見られやすくなるため、実務では次のポイントを押さえておきます。
帳簿保存と事業性の実態を整える
令和4年通達により、副業収入でも帳簿を保存していれば原則として事業所得として扱う運用に変わりました。逆に言えば、帳簿が整っていなければ雑所得認定のリスクが高まります。会計ソフトで日次記帳を続け、請求書・領収書・契約書・入出金記録を保存する体制を続けます。
会計ソフト選びに迷う場合は、簿記の学習コストを抑えたいならfreee、既存の銀行連携やスプレッドシート連携を重視するならマネーフォワード、定番志向なら弥生といった選択肢があります。青色申告の帳簿要件(複式簿記)に対応できる製品を選ぶのが前提です。
継続赤字は「事業性」の見直しも並行する
赤字が長期間続くと、税務署から事業所得としての事業性について確認が入る可能性があります。単に赤字を出せばよいのではなく、営業活動の記録・受注実績・稼働時間・事業改善の取り組みなど「事業として継続する意思と実態」の記録を残します。
開業初年度の按分・開業費の扱い
自宅兼事務所の家賃・光熱費は事業使用割合で按分します。詳細は家事按分の計算式と按分例を参照してください。開業費は繰延資産として計上し、任意の年に任意の金額を経費化する運用が使えます。
経費計上の判断基準
赤字を意図的に作るために事業に関係ない支出まで経費に入れると、税務調査で否認されるリスクがあります。判断基準は「事業のために直接必要な支出か」で、経費にできるもの一覧に判定の目安をまとめています。
令和8年分の申告で使う書類チェックリスト
赤字を伴う申告では通常の書類にプラスして、純損失関連の様式が必要になります。 本記事は公開時点の令和8年分ベースで記載しています(提出は原則として令和9年2月16日〜3月15日、期限が土日祝に当たる年は翌営業日にずれる)。申告時は最新の国税庁様式・期限を必ず確認してください。
確定申告書 第一表・第二表:所得金額、所得控除、税額計算
確定申告書 第四表(損失申告用):損益通算・純損失の計算に必須
青色申告決算書:損益計算書と貸借対照表
純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書:繰戻還付を選ぶ場合
源泉徴収票(副業から独立した年):給与情報の入力・確認用(提出要否は申告方法による)
社会保険料控除証明書・国民年金保険料控除証明書
iDeCo・小規模企業共済の掛金払込証明書(加入している場合)
必要書類の全体像は確定申告の必要書類一覧、初めての人向けの手順はフリーランス確定申告が初めての人向け完全ガイドにまとめています。
まとめ
フリーランスの赤字対応は、事業所得として申告できていること・青色申告承認を受けていること・第四表と還付請求書を正しく添付することの3点で決まります。 単発の副業赤字は雑所得扱いで通算できず、白色申告では原則繰越もできません。独立初年度や機材投資が重なる年、副業から独立した年こそ、赤字を制度で受け止める設計が効きます。
要点を整理すると次の5点です。
事業所得の赤字は、給与所得など他の所得と損益通算できる。雑所得の損失は通算不可
損益通算しても残った純損失は、青色申告なら翌年以降3年間繰り越し可能
前年も青色申告なら、純損失を前年に戻して所得税の還付を受ける「繰戻還付」が選べる
帳簿保存と事業性の実態が、事業所得と認められる前提。継続赤字は雑所得認定リスクに注意
令和8年分の申告では、第一表・第二表・第四表・青色申告決算書・(繰戻還付なら)還付請求書を揃える
税務判断が絡む部分は税理士や所轄の税務署への相談も併用してください。関連記事として青色申告と白色申告の違い、フリーランスエンジニアの節税対策、還付申告とは|5年遡及・必要書類・確定申告との違いも参照してください。
【参考】
よくある質問
Q1. 赤字なら確定申告は不要ですか?
事業所得の赤字を損益通算や繰越控除に使うなら、確定申告は必要です。純損失の繰越や繰戻還付は、確定申告書の提出(青色申告書)を前提とする制度のため、赤字だからと申告しないと制度を使えません。
Q2. 繰越純損失があるのに、翌年の申告を忘れたらどうなりますか?
繰越純損失は毎年、確定申告書に第四表を添付して申告し続ける必要があります。1年でも申告を落とすと、それ以降の繰越控除が受けられなくなる場合があります。繰越がある年は必ず申告してください。
Q3. 事業を廃業した年の赤字も繰り越せますか?
廃業した年の赤字も、青色申告書を提出していれば純損失として繰り越せます。ただし、廃業後は事業所得の黒字が発生しないため、繰り越した損失を消し込む対象がなくなる点に注意してください。翌年以降に不動産所得や譲渡所得などの黒字が出れば充当できます。
Q4. 青色申告特別控除(65万円)を使う前と使った後、どちらの数字を通算に使いますか?
青色申告特別控除を差し引いた後の事業所得金額を、他の所得と通算します。特別控除で所得がマイナスになった場合、そのマイナス分が損益通算・繰越の対象です。
Q5. 会社員時代の給与所得と通算した結果、住民税が0円になった場合、翌年の国民健康保険料は下がりますか?
下がります。国民健康保険料は前年の所得を基に計算されるため、損益通算で前年所得を圧縮した効果は翌年度の保険料に反映されます。ただし、均等割・平等割など所得と連動しない部分は残ります。
Q6. 純損失の繰戻還付を選んだ場合、繰越控除は使えなくなりますか?
繰り戻した金額と同じ損失を重ねて繰り越すことはできません。純損失が繰戻還付で全額処理できなかった場合、残額の扱いは申告内容や前年の所得税額によって変わります。実際に選ぶ際は税理士や税務署に確認してください。
Q7. 副業で雑所得として申告してきましたが、赤字が出た年から事業所得に変えられますか?
年ごとに区分を選ぶことは制度上できますが、実態が伴わないと税務調査で否認される可能性があります。事業所得として申告するには、帳簿保存・営業実態・継続性が伴う必要があります。年をまたぐタイミングで区分を変える場合は、税理士へ相談することを勧めます。
Q8. 損益通算した後の課税所得がマイナスになった年でも、iDeCoや小規模企業共済の掛金は所得控除として使えますか?
掛金は所得控除として計算に組み込みますが、課税所得がマイナスの年は控除しきれない金額が発生します。iDeCoや小規模企業共済の掛金控除は繰越できないため、その年で控除しきれなかった分は次年度に持ち越しできません。この点は繰越純損失とは扱いが異なります。
Q9. 赤字なのに個人事業税は課税されますか?
個人事業税は事業所得を基に計算されるため、赤字なら個人事業税は発生しません。判定の詳細は個人事業税はかかる?フリーランスエンジニアの業種判定を参照してください。
Q10. 損益通算しても足りない場合、消費税の還付は受けられますか?
所得税の損益通算と消費税は別制度です。消費税の課税事業者(インボイス発行事業者を含む)で、課税売上より課税仕入が多い場合は、消費税の還付を受けられる可能性があります。原則課税を選択している場合の話で、簡易課税では還付は発生しません。
